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    そらの

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    そらの

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    そこそこあぶ空1210展示
    マヴェフェニ
    離れても、暖かい

    #TGM
    #マヴェフェニ
    mavefeni

    暖かい冬冬が来た。寒くて静かな、冬が。フェニックスは別段冬が嫌いでも、けれど好きでもなかった。ただ寒い日が続く。それだけだった。自分のバックシーターは寒がりなようで、早々に厚着をし、マフラーも手袋もつけているのをよく見かけた。何もそこまで、とは思ったが得手不得手には個人差があるので何も言わない。マーヴェリックはどうだろうか。一人ずつが二人になって初めての冬だった。今度彼の元へ赴く時に、聞いてみようとフェニックスは思った。

    どんよりとした薄曇り、寒さはいっそう強まっていた。フェニックスはマーヴェリックの元を訪れた。なんだかんだと身体があかず、最後に会ったのは秋の終わりだった。そろそろ寒くなってくるね、と話していたのを覚えている。夏は得意だ、と言っていたマーヴェリックの冬は、どんなものなのだろう。

    「こんにちは、ピート」

    「やぁ、よく来たね」

    フェニックスはマーヴェリックを見て一目で寒そうだ、と思った。今まで見た格好とほぼ同じ格好をしていたのだから。よくそんな服装でこんな日を耐えられるものだと感心した。かく言うフェニックスも通常の格好にショートコートだけだったのでボブあたりと出逢えば寒そうだ、と言われただろう。

    「……寒くないんですか?」

    「動き回るからちょうどいいんだよ」

    確かにマーヴェリックは一箇所に留まらずちょこちょこと何かしら作業をしている。それであれば大丈夫、なのだろうか。フェニックスには腑に落ちない。見てるこちらが寒いと感じるくらいにはマーヴェリックは薄着だと思った。思わず自分の手を擦り合わせた。

    「君は寒いのかい?」

    「まぁ、少しは」

    フェニックスがそう答えるとマーヴェリックは徐にその手を取って握り込む。突然なんだろうと思ったが、何より握られた手が暖かかったからなんだかほっとした。マーヴェリックの体温がフェニックスにもじんわりと伝わる。こういう暖の取り方もあるのか、と思えばそういえば身近にそういう暖の取り方をする人物がいたな、と思い出し少し笑った。

    「君の手、冷たいね」

    「貴方の手は暖かいですね」

    じんわりと伝わってきた体温が二人同じになるとマーヴェリックは手を離した。それがなんだか少しもったいなかったが、我儘は言えない。言いたくない。マーヴェリックに少しでも近づけるようにと背伸びしているフェニックスにはそんなことをする勇気がなかった。歳も歳だし、そんな子供っぽいことを言えるはずもなかった。

    「体の方は大丈夫かい?」

    「えぇ、なんとか」

    「ここは君には冷えるだろう?女の子が体を冷やすといけない」

    マーヴェリックはフェニックスを包むようにして抱きしめた。今度は体温全てを分け与えるように。伝わる体温が先程よりも暖かく感じるのはきっと恥ずかしくて体温が少し、上がったからだとフェニックスは思った。今でも慣れない彼の抱擁は嬉しくて、少し恥ずかしい。誰も見てやしない。なのにどうしてか恥ずかしいと感じるのだった。

    「……貴方もですよ。風邪をひかれたらこまります。すぐには、会いに来られないんですから」

    「わかったよ。これからは気をつける」

    体を離して目を合わせてマーヴェリックは言った。こういう時のマーヴェリックは嘘をつかない。フェニックスは、ほっと胸をなでおろした。風邪だってバカに出来ない。罹りたいバカもいない。体調管理に気を配るマーヴェリックだから大丈夫、だとは言い切れない。ましてやほぼ一人の身だ。何かがあってからでは遅い。フェニックスにはそれが気がかりだったのだ。

    「じゃあ暖かいコーヒーでも飲もうか」

    「いただきます」

    離れた二人の体温は、それでも冷めずに互いの心も温まらせた。
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    そらの

    DONEいきなりあぶ空2023展示
    立ち上る紫煙の元を探ってふと、時折匂う、苦味のある香り。それはすれ違った時だったり、隣にいる時だったり、抱き合ったりした時に密かに感じられるものだった。それが何か、解らぬほどボブは子供ではなかった。
    自分にだって覚えはある。一丁前に大人になったと浮き足立った時、つい手を出したものだった。自分には合わずただただ苦しんだだけだったけれど。
    一時だったけれど覚えのあるそれが、時折、ブラッドリーから香るのだ。独特の苦味のある香り───煙草のそれ───が。本人がそれに気づいているのか、それは知らない。言わずにいるだけなのか、言わないつもりでいるのかも、知らない。
    ボブはそれを不思議に思っていた。もう長いと言えるほど生活を共にしているのに、けれどその姿を見た事は一度もない。どこでもだ。ただ感じるのはその匂いだけで、でもその確たる証拠はどこにもなかった。もしかしたら匂い移りしただけかもしれないとも思うが触れるその手からも香るそれがそうとは言わせてくれない。不思議に思うだけで不快に思うことは無いのだから言ってくれればいいのに、とボブは思う。我慢させていたとしたらなんだか申し訳ない。ブラッドリーがボブを自由にさせるように、ボブもブラッドリーの行動を制限したくないのだ。
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    related works

    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/お題「いい子」「悪い子」
    たまらんくらい最高のお題だったのでどちらも使いました
    帰り支度 思えばブラッドリーは、僕の知る限りずっといい子だった。
     大人の助けが必要なほど幼い頃から、ブラッドリーは他者を助けることに躊躇いがなかった。家の中では着替えを手伝ってもらっていた子が、外では道端でひっくり返った虫を草木がある場所まで戻してやり、公園では転んだ子に駆け寄り、大丈夫かと声をかけた。小さい頃は家族や僕以外には少し内気だった坊やは、転んで落ち込んだその子を控えめな態度で誘い、一緒に遊んで回った。そのうちその子は坊やの友達になり、名前と住所を教え合った。
     学校に通い始めてからも、ブラッドリーは何も変わらなかった。忙しいキャロルに代わって保護者面談に出席すると、先生からは驚くほどよく坊やを褒められた。「クラスメイト同士の喧嘩を止めて、仲直りまでさせたんですよ」また、意地悪されている子がいれば常に一緒に行動し、いじめっ子にも怯むことはなかったという。優しくて強い心を持ち、それを家族や僕以外にも分け与えられる子。先生の話を聞きながら、僕は誇らしさで胸がいっぱいだった。僕が坊やを育てたわけでもないのに、すぐにでも彼をハグしたくてたまらなかった。帰宅してキャロルに報告する間、僕の隣で話を聞いていたブラッドリーは嬉しそうに小さな鼻を膨らませていた。褒められるためにしているわけではなかっただろうが、それでも大人2人に口々に讃えられることは、彼にとっても大きな喜びだったろうと思う。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
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     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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