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    そらの

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    そらの

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    そこそこあぶ空1210展示
    マヴェフェニ
    どうか生き急がないで

    #TGM
    #マヴェフェニ
    mavefeni

    速さとは反比例に風が鋭く体を打つ。言葉のまままるで風を切るようにマーヴェリックはバイクを駆る。そのバックシートでマーヴェリックの背にしがみついているのはフェニックスだ。彼とタンデムする時はいつも必死だ。速度超過なんて言葉ですまないくらいのスピードで彼は行く。さすがに目的地に着く頃になるとそれは収まるがそれでも早い。到着するといつも、少し疲れている。ぷは、と息を吐きながらヘルメットをとるなりフェニックスは言った。

    「貴方何に乗ってもスピードを出しますよね」

    「そうかな?」

    「そうですよ。戦闘機に乗ってもバイクに乗っても」

    それと最新鋭機でも。彼がマッハ10に挑んで成功したことを、秘密だと言いながらもルースターが教えてくれた。そしてその後機体が空中分解したことも。それにはさすがにフェニックスも驚いた。よく生還できたものだと。生還していなければ今という時間もなかったことを思えば心底良かったと思った。

    そうしてフェニックスはいつも思ってしまうのだ。彼が生き急いでいるのではないか、と。速さを求めて命をかける、その事に。そうしていつかは、

    「……まるで生き急いでるみたいです」

    「まさかそんな」

    マーヴェリックは笑顔で否定するが、その影に闇がありそうに見えてならなかった。自分ではそのスピードについていけない。置いていかれるのではとフェニックスは常々思っていた。

    「……私ではあなたに追いつけない」

    「……大丈夫。そんなことないさ」

    だって隣にいるんだもの。その言葉にフェニックスはぱちり、と瞬きをした。

    「私は、あなたの隣にいますか?」

    「もちろん。いつでも隣だよ」

    「……それならいい、ですけど」

    フェニックスはなんだか恥ずかしくなってマーヴェリックに抱きついた。マーヴェリックは何も言わずその体を抱きしめてやる。どれだけ早く駆けても隣には必ずフェニックスがいると、思っている。だからそんな心配は無用だとその耳元で囁いた。
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    そらの

    DONEいきなりあぶ空2023展示
    立ち上る紫煙の元を探ってふと、時折匂う、苦味のある香り。それはすれ違った時だったり、隣にいる時だったり、抱き合ったりした時に密かに感じられるものだった。それが何か、解らぬほどボブは子供ではなかった。
    自分にだって覚えはある。一丁前に大人になったと浮き足立った時、つい手を出したものだった。自分には合わずただただ苦しんだだけだったけれど。
    一時だったけれど覚えのあるそれが、時折、ブラッドリーから香るのだ。独特の苦味のある香り───煙草のそれ───が。本人がそれに気づいているのか、それは知らない。言わずにいるだけなのか、言わないつもりでいるのかも、知らない。
    ボブはそれを不思議に思っていた。もう長いと言えるほど生活を共にしているのに、けれどその姿を見た事は一度もない。どこでもだ。ただ感じるのはその匂いだけで、でもその確たる証拠はどこにもなかった。もしかしたら匂い移りしただけかもしれないとも思うが触れるその手からも香るそれがそうとは言わせてくれない。不思議に思うだけで不快に思うことは無いのだから言ってくれればいいのに、とボブは思う。我慢させていたとしたらなんだか申し訳ない。ブラッドリーがボブを自由にさせるように、ボブもブラッドリーの行動を制限したくないのだ。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/お題「いい子」「悪い子」
    たまらんくらい最高のお題だったのでどちらも使いました
    帰り支度 思えばブラッドリーは、僕の知る限りずっといい子だった。
     大人の助けが必要なほど幼い頃から、ブラッドリーは他者を助けることに躊躇いがなかった。家の中では着替えを手伝ってもらっていた子が、外では道端でひっくり返った虫を草木がある場所まで戻してやり、公園では転んだ子に駆け寄り、大丈夫かと声をかけた。小さい頃は家族や僕以外には少し内気だった坊やは、転んで落ち込んだその子を控えめな態度で誘い、一緒に遊んで回った。そのうちその子は坊やの友達になり、名前と住所を教え合った。
     学校に通い始めてからも、ブラッドリーは何も変わらなかった。忙しいキャロルに代わって保護者面談に出席すると、先生からは驚くほどよく坊やを褒められた。「クラスメイト同士の喧嘩を止めて、仲直りまでさせたんですよ」また、意地悪されている子がいれば常に一緒に行動し、いじめっ子にも怯むことはなかったという。優しくて強い心を持ち、それを家族や僕以外にも分け与えられる子。先生の話を聞きながら、僕は誇らしさで胸がいっぱいだった。僕が坊やを育てたわけでもないのに、すぐにでも彼をハグしたくてたまらなかった。帰宅してキャロルに報告する間、僕の隣で話を聞いていたブラッドリーは嬉しそうに小さな鼻を膨らませていた。褒められるためにしているわけではなかっただろうが、それでも大人2人に口々に讃えられることは、彼にとっても大きな喜びだったろうと思う。
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