猫の九つ むかしむかしの遠いある日、とある御山のとある祠に一匹の狐が住みつきました。
狐は陽の光を織ったような金色の毛並みをした珍しい一匹でしたが、不思議と狩りをする里の衆の目に留まりません。それもそのはず、狐はただの狐ではなく百を生きた妖の狐だったのです。
しかしその長い獣の生の中、何度も何度も狙われてきた彼は人間を恐ろしいものだと認識しており、妖として生まれ直してからも人里には立ち入ろうとしませんでした。
狩りをする人間にさえその身を見せなければ、長くを生きた彼の知恵には大きな熊や狼、鷹さえも簡単には近づけません。
そうしているうちに狐は更に歳を重ね、いつからか御山の主のような立場になっておりました。
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