互いに仕事を終え店に集えばカウンター席に隣り合わせ、あれが食べたい、これが食べたいと、次々料理を決めていく。もちろん互いの好みは把握している。十何年も共に過ごし、その年月の中で幾度となく一緒に食事をしたのだから。
サニーはノンアルコールを、浮奇はカクテルをオーダーし、ぽつぽつと近況報告を重ねていく中、浮奇の端末が共通の友人からの年末の集まりの誘いを受信した。それに目を通しサニーにも内容を確認させようとそちらへ身体を傾けた瞬間、店内の照明が落ち暗闇に包まれ、突然の事に身動ぎひとつ出来ず固まる浮奇の唇に、そっと何かが触れた。
少しざらりとした、乾いた柔らかな熱。目の下を擽る毛先。僅かに掠めた、鼻先。
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