恋は正射必中♡いつも通りの朝だったはずだ。
いつも通りの電車に乗りいつも通りの通学路を歩いていつも通り辻峰高校の校門をくぐった。そこまではいつも通りだったのだ。
(はぁ?‥頭の上なんかついてんだけど)
周りを歩いてる生徒や先生の頭の上には『対象外』と書かれたアイコン的なものがくっついていた。まさか自分の頭にもなんかついてんのかと窓ガラスで確認すると『主人公』と書かれたアイコンがくっついていた。
「なんだよこれ」
手を頭の上でブンブン振り回すがかすりもしない。どうやら物理的に取去ることは出来ない仕様のようだった。周りをもう1度見渡すが異変に気づいてる者はいない。
「‥帰ろ」
このおかしな状況を受け入れる義理もないと早々に諦めて校門を出た。確かに出たはずなのにまたさっきいた所に戻ってきていた。
「はどーなってんだ」
呆然と立ち尽くしてた俺の前に【ちゅーとりある】と書かれた冊子がバサっと落ちて来た。嫌な予感しかしないがこれを読まないと一生進まなそうだと察した俺は嫌嫌それを読んだ。
〜恋は正射必中♡ちゅーとりある〜
ここは辻峰高校♡愛と青春と希望に溢れたこの学園であなたは運命の人と出会い、彼のハートを正射必中♡ラブラブランデブーでhear we go♡
※攻略対象者の好感度を上げてからハートを打ち抜くことで攻略成功及び脱出成功。
※好感度が下がると爆弾が爆発してゲームオーバーでリスタート。
俺はラブラブランデブーに寒気がして冊子を破り捨てた。
「クソゲー過ぎんだろつか乙女ゲーなのか脱出ゲーなのかはっきりしろよ爆弾が爆発とか物騒だろーが」
ツッコミどころの多さに捲し立てたせいで息切れして肩で息をしていたら後ろから声をかけられた。
「二階堂〜朝から何1人で騒いでるの〜」
「おはよう」
樋口先輩と荒垣部長だ。恐る恐る頭の上を確認すると『対象外』の文字。俺は胸を撫で下ろした。いい人達だし数少ない気の置けない先輩ではあるがやっぱり何を考えてるのかよくわからない先輩達を攻略するのは気が重かったので助かった。
「何でもないっす」
「そお〜じゃあまた部活でね〜」
「またな」
先輩達と別れた後、俺は校門の所で攻略対象者を探すことにした。正直見当はついてる。
「おはよう二階堂」
黒ちゃんもやっぱ『対象外』だよな。先輩達が『対象外』だった時点でそうだろうと思ってた。
「おはよ」
「何やってるんだ」
「クソゲー」
「クソゲーまぁいい、先行ってるぞ」
黒ちゃんにひらひら手を振ってから大本命を待つ。
「二階堂、はよ」
(不破)
俺は恐る恐る不破の頭の上を確認した。
そこには攻略対象者の証である好感度バロメーターが表示されていた。
「っしゃやっぱりな」
俺は自分の予想が当たっていたことにガッツポーズを決めた。‥不破が攻略対象者で嬉しいとかじゃなくて不破ならなんとかなりそうって意味でのガッツポーズだからその辺りは勘違いしないで欲しい。
「なにがやっぱり」
「何でもねーよ」
「まぁいいけど。それより‥」
不破はいきなり肩を抱いてきたと思ったら頬にキスをかましてきた。
「今日も二階堂はかわいいな」
「おま、なに‥」
不破の好感度バロメーターを確認するとMAXを飛び越えてゲージを若干突き破っていた。
(こわいこわいこわい俺まだなんもしてねーしゲージ突き破るって何お前の好感度圧力どーなってんの)
「二階堂‥」
俺がテンパってるのをいいことに不破は更に距離を詰め唇にキスしようとしてきた。
「させるか」
「ざんねん」
手で自分の唇をガードした俺に全く残念そうじゃない感じで不破は笑いかけた。するとピコンと選択肢が現れた。
このまま一緒に授業をサボる
▶はい
いいえ
正攻法なら【はい】だろうがこの状態の不破と二人きりになったらナニをされるかわからない‥俺は【いいえ】を選んだ。これで少しは好感度も下がるだろう。
「俺二階堂のそういう真面目なとこ好き」
(なんでまた好感度上がるんだよ‥)
それからも選択肢が出る度に好感度が下がると思われる方を選び続けるも不破の好感度は上がり続けるばかり。これは流石にないと思ったのが
不破のことを殴る
▶殴る
殴らない
もちろん俺は好感度を下げる為に【殴る】を選択して実際殴った。そしたらアイツは「二階堂から俺に触れてくれるのすげー嬉しい」と言って笑ったのだ‥恐怖しかない。
「助けて‥好感度モンスターほんとこわい‥いつもの不破に会いたい‥」
いまだかつてこんなにも不破のことが恋しいと思ったことがあっただろうか。いやない。
「会いてーな‥」
「へぇ誰に会いたいって」
「お前‥いつからいた」
「助けて、の辺りから」
「最初からじゃねーか」
「おかしいなー俺も不破なのに不破に会いたいなんて」
「お前は違う」
「違わねーって。メタ的なこと言うと俺はオリジナルの不破からデータ取って作られたんだぜ?」
「ご苦労なこった。全然似てねーわ」
「それは二階堂が知らないだけで本当はオリジナルの不破も俺と同じこと考えてるんじゃねーの二階堂のことを自分のものにしたいって」
俺は不破(偽)に床へと押し倒されていた。
「離せっ」
「無理。好感度ここまで上げておいて我慢しろなんてさ。割と我慢した方だろ本当はハート打ち抜いてくれるまで待とうと思ったけど二階堂全然してくれないし」
抵抗するもどんどん服は脱がされ、スラックスに手をかけられた時もうダメだヤラれる、と諦めた瞬間世界は暗転した。
「‥階堂二階堂」
目を覚ますと部室だった。
「良かった、えらく魘されてたけど大丈夫か」
「不破‥」
「すげー汗かいてんじゃん。悪い夢でもみてたんだな」
「クソゲーの夢」
「クソゲー」
「なぁ、不破。悪い」
俺は不破のことを脈絡もなく殴った。
「痛っては今なんで俺殴られたわけ」
「怒った」
「そりゃ意味もなく殴られたら怒るって」
「だよな普通は怒るよな」
「え、なにマジで。なんで嬉しそうなの」
「やっぱりこの不破じゃなきゃヤダ」
俺はいつもの不破に会えた嬉しさに思わず抱きついていた。
「なにこの物理的ツンデレ‥」
「あーこの感じだよな不破は」
この不破を求めていたとばかりにぎゅうぎゅうと更に抱きついた。
「〜〜〜〜〜二階堂いい加減にしないとキスするからな」
「ん」
「ん」
「人がせっかくキス待ち顔してやってんのに。しねーの」
「しますしますするに決まってるじゃん」
あのクソゲー作ったヤツに不破(偽)がキャラ崩壊してたことクレームつけてやりたい。レビューの評価は★☆☆☆☆だ。
俺の不破はこんなにもかわいいんだからな。
プログラミングからやり直せ。