バレンタインにチョコを強請りに来た五条悟の災難?「つぁっ!」
東北と関西で立て続けに一級事案が起き、珍しく連勤が続いていた日だった。
大阪市内のホテル、東京都立呪術高等専門学校が手配したビジネスホテルの三十二階で眠っていた七海建人は深夜に悲鳴をあげて飛び起きてしまった。気持ちよく眠っていた最中で脚に突然に重みが掛かったためで、反射的に伸ばした手を素早く引っ掴まれる。
「七海ィ、七日振り!」
「……は?」
深夜、どこか冷え冷えとした一室で陽気な声を張り上げたのは間違いなくパートナーの五条悟だった。二度、三度と瞬きを繰り返し、必死に眠気を追い払った七海はにこやかに笑う年上の男を険悪な顔で見据え、苛立ちが籠もった声をこぼす。
咄嗟に視線を流した時計は二時三十二分だった。
ぐっと眉間にしわが寄る。
「なぜここに居るんですか、アナタ」
「え? 明日、京都で合流予定だっただろ。ちょっと早く来たんだけど」
「ここは大阪です」
「知ってるよ、さっき外でたこ焼き食べてきたし。七海ィ、覚えてる? 昔、サービスエリアにたまにたこ焼きの自販機あっただろ。あれと同じものが駅前にあってさ、つい買っちゃったんだよね。そしたらめちゃくちゃ美味しくて」
「そんな報告、求めてませんが」
あと重い、と文句を言うも、膝の上に遠慮なく全体重を掛けて座っている男は気にした風もなくにこっと笑う。
「ところでさ、今日って何日か、覚えてる?」
「……二月十六日ですが?」
「そうそう、二月なんだよ。だからちょうだい」
「はい?」
「オマエのことだから用意してあるだろ、バレンタインのチョコ」
「――……」
まだそれなりに寝ぼけていたとしても、自分でも顔が険しく歪むのを感じて、七海建人は呑気な眼差しで目前のパートナーを眺めやる。腹の底に居座った苛立ちは早々に消えてくれそうもなく、噛み締めた歯がキリキリと音を立てた。
「……バレンタインのチョコ?」
「それを早くもらいたくてさ、ちょっとフライングして来ちゃったんだよね。持ってきてるだろ?」
「ありませんよ」
マジで と五条は素っ頓狂な声をあげる。
七海はじわりと痛んだような気がするこめかみを押し揉んだ。
「……アナタ、私の連勤が続いていたことを知っていて、ここに乗り込んできたんですよね」
「まぁ、そうね。僕も何だかんだで連勤続いてたし、どうしてもオマエの顔を見たくてさ」
「……――」
→襲うか襲われるか、仲良く一緒に寝るか。
さてどうしましょう!
アンケートで多く票の入った展開で書けたらと思ってます!(えろ書きたい)