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    mya_kon

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    美容師夏ちゃんにシャンプーしてもらって、なんかメロメロ?になっている尾です。夏尾になるはず……!

    #夏尾
    natsuo

    な〜んか、いいんだろうな 尾形百之助がその美容院に通う理由はいくつかある。
     駅前にある。そこそこ大きいチェーン店なので店内が広い。急に行きたいと思ったときに明日明後日の予約が取れる。初回担当してくれた人があまり話しかけてこないタイプだった。その人がそのまま担当になったので、カットをしてもらう際に毎回細かい指定をしなくてもいい。
     何度目かの来店で初めて担当が変わったときに「今日はすみません」と申し訳なさそうに言われて、あの人が俺の担当ということになっていたのか、と気づいた。
     接客業だからと気を使われて話しかけられることほど面倒なことはない。尾形は最初からそっけない態度を取っているので、そのつもりで放っておかれる方がよっぽどいい。
     なので今回も
    「初めまして! 本日シャンプーを担当させていただきます奥山です! よろしくお願いします!」
     とハキハキとした挨拶をしてくる新人美容師にも「はあ」と短く返事をしただけで終わらせた。これで察するやつだといいが、と思いながら尾形は通されたシャンプー台のイスに座る。かけていたメガネを回収されると、一気に世界がぼやけた。
    「イス倒しまーす」
     ぐぐーっと倒れる背もたれに体を預ける。シャンプー台のくぼみに首がはまり「苦しくないですか?」とお決まりの声をかけられる。先ほどと同じように「はあ」と答えた。
     普通に考えれば質問に対する答えになっていない。だが誰も気にしない。苦しければ苦しいと訴えるなり、体の位置を調整するなり何なりするだろう。だから「あなたの質問は聞こえていますし、特に問題はありませんよ」の意思表示として何かしらの返事をすればいいと思っている。尾形はそう思って「はあ」とだけ返事をする。
     顔の上に半分に畳まれたティッシュを乗せられれば、口を開くのだって億劫になるのだ。ここから先の返事は相手に聞こえているのかいないのかよく分からないものになる。
     それでも今まで困ったことはなかったし、美容師が自分の意に反することをしてきたこともない。返事はあってもなくてもいいのだろう。
    「髪の毛濡らしていきますね」
     挨拶と変わらないトーンで声をかけながら奥山がシャワーのお湯を出した。風呂よりもぬるめのお湯が頭にかかり、この後に続く質問だって知っている。
    「お湯加減いかがですか?」
    「ん」
    「じゃあこのままやっていきまーす」
     満遍なくお湯をかけながら、奥山の指が尾形の髪をかきあげる。その力加減に尾形は思わず拳を握った。爪を立てないように、指の腹が何度も頭を往復するのが気持ちいい。
     今までの美容師と何が違うのか考える。散々洗髪されてきたが、誰一人爪を立てた者はいなかったし、洗い残しやすすぎ残しがあったわけではない。なのにこの美容師は何かが違う。
     何が違うのか聞かれると、絶妙な力加減としか答えようがないのだが、それに加えてずっと人懐っこい声で話しかけてきているのもあるかもしれない。何もかもが心地いい。
    「俺、今年の四月に就職のために上京してきたんですけど、東京の桜って三月に咲いちゃうんですね! 花見したいな〜って思ってたんですけど、俺来たときにはまあまあ散ってて。地元札幌なんですけど、あっちだったらまだ咲いてないのにー! って思いながら、半分ぐらい散ってる桜の下でビール飲みました。尾形さんは? お花見しました? 地元もこの辺なんですか?」
     あまりの気持ち良さに返事をするのも忘れていると、特に気にした様子もなく「頭上げますね」と首の付け根に手を添えられて頭を持ち上げられる。首を支える奥山の手に興奮する自分を見つけて、ほんの少しだけ動揺した。
     意味が分からない。今までの美容師との違いが分からない。なのに、どうも俺はコイツに触れられるとたまらない気持ちになるようだ。
    「一人暮らし始めたんで料理も頑張ろうって思ったんですけど、いや〜なかなか、難しいですねぇ。帰るの遅くなると作る気力ないですし。休みの日ぐらいはーって思うんですけどねぇ。尾形さんって休みの日って何してます? 俺はせっかくなんで東京観光してます! おすすめの場所とかあったら教えてください! あ、シャンプー流しまーす。かゆいところあったら教えてくださいね」
    「ああ……」
     どうにかこうにか返事はしたが、何に対する返事か分からなかった。
    「この前ベタなんですけど東京タワー行ったんです。あそこのガラスの床見たことあります? やっぱ高いですよねぇ。地上の人が見えて余計にドキドキしました。今度はスカイツリー行こうかなって。あっちにもガラスの床あるんですよね? しかも東京タワーよりスカイツリーの方が高いんで、大丈夫かなぁ。まーでもせっかくですからね! タワー系は制覇した方がいいかなって」
    「あー、御苑」
    「ん? ぎょえん?」
     ティッシュが邪魔でぼそぼそとした喋り方になったが、奥山には届いたようだ。シャワーが止められて、尾形の言葉を復唱する奥山の声がしっかりと耳に入る。
    「トリートメントつけまーす。え、そのぎょえん? って何ですか?」
    「新宿にある、でかい公園で……」
     トリートメントをつけた奥山の両手で頭を揉まれると体がふわふわしてくる。新宿御苑の説明をしようと思っても、頭の中までふわふわしてきて何も考えられない。尾形の言葉の続きを待っている間に奥山はトリートメントを流した。
    「でかい公園、いいですね」
     イスを起こした奥山が尾形の頭の上にタオルを乗せる。軽くタオルドライをしながら耳の穴の中に指を入れられたときは、腹筋に力を入れて呼吸を止めた。こんなところで変な声を出すわけにはいかない。というか今までこんなことになったことがない。なぜ、今日に限って。コイツだからか? 
     そんな尾形の努力を知らない奥山は「マッサージします〜」と肩を揉み始める。
    「芝生があるから、シート持っていくと一日過ごせる」
    「へー! いいですねぇ。のんびりするのもいいなー。新宿にそういうところあるんですね。知らなかったです」
     首の付け根もぐっぐっと揉まれる。あまりの気持ち良さに変な声が出そうになる。奥歯を噛み締めて耐えていると、奥山がくすくす笑うのが聞こえた。
    「痛いです?」
    「いや……すごい、よくて……」
    「あは、良かったです! すごい力入ってるから痛いのかと思っちゃいました」
     そう言いながら奥山が二の腕を掴む。シャンプーの後のマッサージは美容師によって多少の違いは出る。初めて揉まれる箇所に、尾形はまた腹筋に力を入れた。
    「俺、人にマッサージするの好きなんですよ。だから気持ちいいって言ってもらえるの嬉しいです」
    「そう……気持ちい、い……」
     尾形の言葉に嘘はない。気持ちがいい。
     あまりの気持ち良さに混乱しているぐらいだ。
     しかしこのマッサージはあくまでもおまけでサービスだ。ここは美容院なので当たり前だが、気持ちいい時間は長く続かない。
    「お疲れ様です! 鏡の前に移動しましょうね!」
    「ああ……」
     促されるがまま席を移動する。鏡ごしに見た奥山の顔はぼやけていたが、ニコニコと笑っているのは雰囲気で分かった。
    「じゃあ担当が来るまで少々お待ちください!」
     奥山がいなくなり、この後やってきた担当に次回以降もシャンプーを担当してもらえないかの確認をした。そのとき担当がどんな顔をしていたのかは、メガネを外している尾形には見えなかった。
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    DONEこれは……いつか本になるから……と自分に言い聞かせて書いた夏尾……フォロワーが描いた夏尾見て書いた……わああああああああってなりながら……書いた……いつか本になるから……原稿といっても間違いではない……………
    まぐれ、気まぐれ のし、と頭に重さがかかる。確認しなくても分かる。尾形さんが俺の頭の上に手を置いたのだ。しゃがんだ姿勢のまま、俺は木の陰から一匹の鹿を見る。
     遡ること一時間前。
     俺はもっと土方さんの役に立ちたいと思い、茨戸からずっと持っているピストルの腕を上げようと考えた。せっかくなら誰かに教えてもらいたいな、と思ったのでまず最初に有古さんと都丹さんに声をかけた。普段からピストルを使ってる都丹さんや、従軍経験から有古さんなら! と考えたのだ。ところが二人は用事があったようで断られてしまった。
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    もっといっぱいください!「へー、血液パックの宅配もやってんだ……」
     俺がスマホでぽちぽち見てるのは亀蔵に勧められた「マッチョバー」の公式サイトだ。何でもそこで働いているのは筋肉隆々のマッチョたちで、店ではその人たちの血液を提供しているらしい。
     男の人しかいないかと思ったけど、女の人もいるんだな。前からマッチョの血液は美味しくて栄養満点とは聞いていたけど、何だか手が伸びなかったのは気軽に買える場所に店がなかったのと、なんとなーく飲んだら自分もマッチョになりそうで二の足を踏んでいた。
     マッチョになるのが嫌っていうか、マッチョになって制限がかかるのが嫌というか……。両腕が閉じれないとか、着れる服が限られるとか、注射の針が入りにくいとか聞いていて、えー、じゃあソフトマッチョぐらいがいいなぁ、と思っていたのだ。まあ、今はソフトマッチョを目指している最中だから、多少のマッチョ成分を取り入れたところで問題はないんだけどさ。
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    DONE現パロ勇尾のSSSです。とても短くてとても糖度がたかい。
    なんでも可愛い勇作さん「兄様の瞳に似て、とても可愛いですね」
    「……はぁ」
    勇作の小さな囁きに、百之助は気の抜けた返事を返す。弟の視線の先には、黄色っぽい頭をした小魚が、小石を掘った穴からひょこりと顔を出していた。魚特有の、どこを見ているか分からない、真っ黒な目。
    円柱の水槽は、近づいて見ると案外分厚い。じっと見ていると屈折がきつく、目が疲れる気がして、百之助は少し遠巻きに見ていたのだが、弟がにこにこ笑いながら指さすので、少し覗き込むように近づく。
    「…………」
    とりたてて人気のある水槽ではない。そもそも、百之助はあまり何かを「可愛い」と思うことがなかったので、それが世間一般的に言って可愛いかどうかは判断がつかなかった。だが、そんな百之助でもなんとなくわかる。たぶん、こういうのは可愛いと言っても、「逆に」とか、「一周まわって」とか、そういう枕詞がつくたぐいの可愛さのような。勇作のほうを振り返る。にこにこと笑っている。可愛いというのは、勇作のようなもののことを言うのでは、と真顔で考え、もう一度魚を見やる。勇作のきらきら輝く瞳、かたや魚の真っ黒な目。
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