無題リップは常日頃から「知らない人に声をかけられても、無視をしなさい」と教えられていた。
兄弟たちは真剣な目をして口々に言う。
誘拐される。
暗がりに連れ込まれ、二度と帰れなくなる。
狭くて暗い場所にしまわれる。
だからリップは、知らない人について行ってはいけない。
リップは素直で良い子なので、その言いつけを立派に守っていた。
もっとも、ロアルモンドの者には従者がいるので、外に出て危険な目にあう事はそうない。
とは言え、アラディア院ではどうだろう。
広大な学園の中だ、知らない生徒はたくさんいるし、知らない先生だっている。
そして、リップの目の前に現れたのは。
「あノ時助けていただいた孔雀です」
全く知らない、孔雀を自称する青年だった。
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