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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    キスの日小説加筆修正版!!
    キスする場所に意味があるというものを見つけて書いたものです!

    #フェンヴァル
    fenval
    #執事閣下
    deacon

    口付ける場所の、その意味は5月23日。
    仕事で共に来たフェンリッヒとエミーゼルは、目の前で色めき立っていた者たちが目に入る。

    「今日ってキスの日よね!!」
    「まぁ、そうなんですの?初めて聞きましたわ」
    「おねえさまは乙女のイベントには詳しいデスね!」

    きゃあきゃあと響く三人娘の会話を、たまたま耳に挟んでしまう。
    エミーゼルは少し眉間に皺を寄せて、軽くため息混じりに口を開く。

    「またなんか言ってる…どこから来るんだ、その情報」
    「知らん。どうでもいい」
    「あ、フェンリっちとエミーゼルじゃん!ふたりが一緒って珍しいね」

    ふたりに気付いたフーカが手を振る。
    面倒臭いのに絡まれた、とフェンリッヒは苛立ちを隠すことなく舌打ちをした。
    当然、そんなのに臆するフーカではない。

    「お前って、そういう情報は知ってるんだよなぁ」
    「なに?ああ、キスの日のこと?アンタ、興味あるんだ〜?」
    「ババ、バカ!!」

    完全に反応が思春期のそれである。
    フーカは「ふ〜ん?」とニヤニヤとした笑みを浮かべて言いながら、フェンリッヒを見た。

    「フェンリっちは、そういう相手引く手数多っぽいわよねえ」
    「…勝手な妄想で物を言うな。というか、もしそうだったとしてもキサマには何の関係もない」

    傭兵時代は依頼だったり情報のためだったりで、女性と関係を持ったことはあっても、フェンリッヒ自身恋人というものに興味がなかったので、そういう人間の恋人同士が騒ぎそうなことは当然知る訳もない。

    「なんか、歩いててもたまにフェンリっちのことクールで好き〜って言ってるコいるけど、これの場合はクールじゃなくて辛辣って言うのよね」
    「せめてそういうことは本人がいない所で言ってろ。それに、優しくする必要がどこにある?くだらん」
    「え〜、じゃあフェンリっちはキスされそうになったらどうするわけ?」
    「この女は……そうだな、誰が相手でも、その喉に喰らいついて掻っ捌いてやる」
    「か、かっさば…」

    フーカたちどころか、悪魔のエミーゼルでさえ引くような声と言葉に、フェンリッヒは不満気に鼻を鳴らした。
    そこに近付くひとつの足音。黒いマントがパサリと揺れる。

    「フェンリッヒ。ここに居たか」
    「…閣下!申し訳ありません、遅れました」
    「構わぬ。それが報告書か」
    「はい」
    「ではこちらへ来い。小僧、ご苦労だったな」
    「あ、ああ。じゃあボクは帰るよ」

    主従がいなくなり、エミーゼルは帰ろう─としたのだが、服を掴まれる。

    「仕事終わったんでしょ?なら話しましょ」
    「は!?何をだよ!」
    「あの動揺は、そういう方がいらっしゃるということですわよね?」
    「ぜひお話聞かせて欲しいのデス!」
    「違うっての!放せ〜っ!!」

    ラヴ話大好き3人組に引っ張られていくエミーゼルであった。


    執務室にふたりだけになる。
    フェンリッヒは背筋を正して報告をした。

    「…ひとまず、こちらが報告書でございます。問題視しておられた、地獄ヶ原の方面の汚染は、大統領府の協力もあり、大分緩和されるはずです」
    「うむ。………問題ない。さすがは小僧と我がシモベだ」
    「お褒めに預かり光栄でございます」
    「それと…こっちに寄れ、フェンリッヒ」
    「?はい」

    疑問を持ちつつ寄っていくと、机を隔てて、ヴァルバトーゼがフェンリッヒのジャケットを持って引き寄せる。
    唇が重なり、状況が掴めないフェンリッヒは目を丸くした。
    顔が離れると、ヴァルバトーゼは意地の悪い笑みを浮かべる。

    「クックッ、なんだその顔は?…それで?喉に噛み付いて掻っ捌くのか?」
    「…!!閣下、聞いていらして…!!」
    「まぁ、喉に噛み付かれることはあるがな」
    「うぐ…っ」
    「俺があまり肌を出さぬ服を着ているとはいえ、さすがに噛みすぎだ」
    「…申し訳ありません。気持ちが昂るとどうしても……」

    申し訳なさそうにするフェンリッヒに、ヴァルバトーゼはフフ、と笑った。

    「別に怒ってはおらん。飼い犬に噛まれるのも、たまには悪くない」
    「…わたくしを犬扱いするのは、地獄広しと言えども閣下だけでしょうね」
    「当たり前だ。お前を犬扱いする輩がいたら俺が噛み付いてやる」

    得意げに言う主に、フェンリッヒはため息をつく。だが、その表情は嬉しそうだ。

    「そもそも、キスの日とやらは人間が勝手に決めたことでしょう。閣下が乗っかることはないのでは?」
    「まあ、そう言うな。こういう日に“恋人”としてそういうイベントを踏むというのも悪くはないであろう」
    「はあ…」

    “恋人”という契りを交わしたのはつい最近の話。
    この主の、人間の真似事に興味を持つことと、持たないことの境目がわからない。

    「それに、恋人というのもあるが…」
    「はい?」
    「…その、お前となら、そういうのも楽しいかと…思ってな」

    急に素直になったと思えば、急に顔を赤らめて目線を外す。それを素でやってのけるヴァルバトーゼに、フェンリッヒは頭を抱えた。

    「…そうですか。なら、わたくしも乗っかってみましょうかね」
    「は?」

    フェンリッヒは素早く距離を詰め、ヴァルバトーゼのチョーカーの留め具を外し、その首に噛み付いた。

    「っあ…っ!」

    噛み付いた後に舐めて吸い付く。
    それだけで、赤い華がそこに咲いた。

    「急に何を…!」
    「申し訳ございません。我慢が出来ませんでした。…しばらく、チョーカーの位置にはお気をつけくださいませ」

    チョーカーを付け直した後、トントンと首を指で叩く。
    意味がわかったヴァルバトーゼが睨みつけるが、潤んだ瞳などに凄みがある訳はなく。

    「…ヴァル様、あまり煽らないでくださいね。まだ仕事中ですので」
    「あ、煽ってなどおらんっ!!」
    「…これが天然だから困る」

    フェンリッヒは散らばった報告書を集め、机の上に丁寧に纏めて置いた。

    「ちなみにヴァル様。キスというものはする場所によって意味がある、というのはご存知ですか」
    「む、そうなのか?」
    「ええ。唇は愛情。首は……─ふふ。秘密にしておきますか」
    「…なんなのだ、お前は」
    「少しの意地悪ですよ。それでは、わたくしは一度出ますので」
    「あ、ああ…」

    ─首へのキスは、執着。

    愛情や恋情などといった、かわいいものではなく、もっともっと深い感情。
    主がどんな感情を持っているのかは知らないが、自分はそんなことで満足出来る欲ではない。

    知識欲のある主はきっと、意味を調べることだろう。その時に、己の感情を知ってくれれば、と執事はひとり黒く微笑んだ。

    (…流石にそこまで叶うとは思っていませんが─あなたのすべてが貰えればわたくしは満足ですよ、ヴァル様)


    ──後日、首へのキスの意味を知ったヴァルバトーゼが、フェンリッヒが向けてきた感情の名を知り、しばらく顔を見れなくなったとか。

    終わり
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    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

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    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
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     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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