Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    村人A

    ☆quiet follow

    過去小説修正版第二弾。
    これは確か、閣下に「浮気者」というセリフを言わせたいがために書き始めた話でした。モブ女出ますので注意。
    こうして時折、閣下はリッヒの地雷を踏みます。

    #執事閣下
    deacon
    #フェンヴァル
    fenval

    シモベを煽るものはそれは珍しく、主従が共にいなかった日。
    フェンリッヒは他の魔界へ出張のようなものへ行っていて、ヴァルバトーゼは普段の仕事をこなしていた。
    出張と言っても、向こうの悪魔と化かし合いのようなことになることも少なくない。その点で言えば、話術に優れるフェンリッヒ以上の適役はいないのだ。だが、優秀なシモベがいないと言うのは、それだけで負担な訳で。

    (……あいつが居ないだけで、こんなに疲れるとは…いつも無理をさせているのか…涼しい顔をして…)

    普段は休憩をあまりしないヴァルバトーゼも、人目につかない所で少し休んでいた。
    目を閉じていた彼の意識を浮上させたのは、女性たちの声。
    最初は見つからなければいいか、と考えるヴァルバトーゼだったが、ひとりの言葉で目が冴えることになる。

    「─アンタ、フェンリッヒ様狙いなワケ?」
    「だって、カッコよくない!?私も仕えてもらいたーい」
    「アンタじゃ無理無理」
    「わかんないでしょ!出張から帰っていらしたら、声かけてみよっかなー!」
    「なに、誘惑でもするつもり?惨敗するからやめときなよ」
    「ふーんだ、見てなさい!私が成功者第一号になるんだから!」

    それは明らかにシモベを誘惑しようとする女の声で。
    シモベといっても、兼恋人なのだが。
    フェンリッヒという悪魔は、基本ヴァルバトーゼにしか興味がなく、何と言い寄られても「有象無象に興味などない」とバッサリ切り捨てるほどだ。先程の女性が言うように、惨敗するのは目に見えていた。
    しかし、信じていても不安にはなる。

    (あいつが、もし心変わりをしたら?…俺から、離れていってしまったら?)

    そう考えたところで、首を横に何度も振った。
    疲れているから、こんな思考になるのだと。
    だが一度胸に住み着いた不安は消えることなく。紛らわせるようにプリニーたちが心配するほどの勢いで仕事を終わらせたヴァルバトーゼは、早めに自室へと戻ることとなった。それは考える時間も増えるという訳で。

    (……遅い)

    フェンリッヒが帰ってくる時間はとうに過ぎていた。
    時計を眺めながら、ヴァルバトーゼはモヤモヤで何も手につかない。
    ため息をついた時、ドアがノックされた。

    「閣下ー、お食事持ってきましたッスー」
    「…ああ、すまんな。…ところでプリニーよ、フェンリッヒはまだ帰らんか?」
    「え?フェンリッヒ様ならさっき帰ってきたッスけど…まだお会いしてないッスか?」
    「帰ってきた…?」

    なら何故、まずはここに来ない。
    そう言いたい言葉をグッと喉に飲み込んだ。その言葉は、目の前のプリニーにぶつける訳にはいかないのだ。

    プリニーが戻っていき、再び部屋にはひとりの状態になる。
    女悪魔の言葉がグルグルしていた。

    (…やはり、あいつは─)

    嫌な考えが出た瞬間、ヴァルバトーゼの部屋のドアがまたノックされた。

    「…開いているぞ。誰だ」
    「閣下、失礼します」
    「フェンリッヒ…!」
    「お待たせして申し訳ございません」

    入ってきたのは、彼が待ち焦がれていた人物だった。
    いつものジャケットではなく、茶色の革のジャケットに身を包み、その下は黒のタートルネックのシャツを着て、長い髪は赤いリボンで纏められていたそれは完全に余所行きの格好で、彼の見た目の良さを際立たせていた。
    部屋に入ると、流れるような所作で傅く。

    「少しゴタつきまして…遅れましたこと、お許しください」
    「……良い。顔を上げろ」
    「有り難き幸せでございます」

    顔を上げたフェンリッヒの表情は、穏やかに微笑んでいた。
    ヴァルバトーゼ以外には見せることのない顔だ。

    (…何故、何も言わぬ?あの女に声をかけられたのではないのか?気にしていないから言わぬのか、それとも……)
    「ヴァル様?」
    「ッ!!」

    覗き込んできたその顔に思わず赤面し、ヴァルバトーゼは咄嗟に距離を取る。
    だがそれを意に介さず、フェンリッヒはゆっくりと主の手をすくい上げてその甲に口付けを落とした。

    「何をお考えなのかは存じませんが、今はわたくしとふたりきりなのですから─その心、わたくしにも分けて欲しいものです」

    とびきりの甘い声、甘い仕草。
    それは普段なら甘い空気になる所だが、今のモヤモヤを抱えたヴァルバトーゼには逆効果だった。

    「─うるさい!浮気者めっ!!」
    「……は?」

    そこで口から勝手に出た言葉にヴァルバトーゼは焦った。
    顔は見ていないが、シモベの空気と声が完全に不機嫌な時のそれになったのだから。

    「…ほう?浮気者、ですか?何を疑っておいでですか」
    「あ、いや、それはだな……」
    「…ご無礼をお許しください」
    「は?─うぐっ!?」

    ソファーの上、ヴァルバトーゼは両腕を掴まれて強引に押し倒された。
    倒された後に片手で両腕を纏めて頭上で掴まれ、もう片手が顎を持って強制的に目線を合わせられる。

    「疑うということは、理由がおありなのですね?」
    「いっ…!」
    「答えてください」

    ギリ、と腕が音を立てた。
    その目には怒気だけが含まれている。
    普段ならこんなに乱暴な真似は絶対にしない。それ程怒っているということなのだろう。

    どうにも出来なくなり、ヴァルバトーゼは耳に入った女たちの話と、それが不安だったということを吐露した。

    「─ということがあっただけだ」
    「…そういうことでしたか。…確かに、帰ってきた時に女には声をかけられましたが」

    腕を放したフェンリッヒはそう話し始めた。
    その声色は、「そんなこともあったな」とでも言いたげだ。
    ヴァルバトーゼも起き上がり、座って話を聞いた。

    「別にやましいことがあった訳ではなく…あれが誘惑などと、笑わせるなという話ですよ」
    「ゆ、誘惑されたのか」
    「そのお話しから察するならば、そうなのでしょう?」

    本当にしたのか、と勇気ある女性に心の中で言葉を投げかける。
    といっても、当の本人には気付かれていないようだが。

    「わたくしには、閣下が真っ赤な顔で震えている方が余程劣情を煽られます」
    「ば、馬鹿者…」

    顎に指をかけられ、微笑まれる。
    このシモベは素でそういうことを言ってのけるのだ。

    「そうですね。言わなかったのではなく……気付かなかった、ということです」
    「そうか。…悪かった、あんなことを口走って」
    「構いませんよ。…ですが、疑われたことは正直面白くない」
    「は、わっ」

    謝り許され終わり──とはいかない訳で。
    慣れた手つきで再び押し倒され、あっという間に押さえつけられる。
    ニコリと笑うその顔からは、嫌な気配だけが漂っていた。

    「浮気?…わたくしが、どれ程の間あなたのことを想ってきたか、どれ程想っているのか、わかっていないのですね?」
    「いや、その」
    「ヴァル様以外の有象無象にどう思われようと、知ったことでは無いです。わたくしは、あなた以外要らないと言っているのに」

    重なった唇が、ちゅ、と音を立てて離れる。
    マズい、とヴァルバトーゼは本能的に思った。

    「わたくしの想いが伝わっていないようですので、じっくりと教えて差し上げます。今日は少し気が立っているので、無茶をしないためにも我慢しようと思っていたのですが…そうにもいきませんね」
    「いや、ちょっと待て」
    「待ちません」

    もう一度唇が重なる。
    しかしそのまま離れてはいかず、唇を舐められた。

    「ヴァル様。口を開けてくださいますか」
    「待て、あれは…んぅ!」

    舌同士が無理矢理絡められる。
    息がしづらく、ヴァルバトーゼが苦手だと言うので、ほとんどしないキスだ。
    絡めた指をギュッと握って抗議しても無駄だった。

    (…食われる……)

    文字通り貪るようなキスがようやく終わった時には、ヴァルバトーゼは息も絶え絶えだった。

    「…ほら、やっぱり。あなた様のそういう顔の方が、わたくしは余程好みですよ」
    「お前は…!!」
    「お嫌でしたら、舌を噛んででも逃げてください」
    「そんなこと出来るわけなかろう!?」
    「でしたら諦めてください」

    舌を噛んで血でも飲んでしまったら大変だということを分かった上でフェンリッヒも言う。
    逃げていいと口は言うが、目は絶対に逃がさないと言っている。

    (やっとだ。やっと手に入れたのに、この手に抱くことが出来たのに。易々と逃がすわけが無い)

    そんなことを考えるフェンリッヒの口が弧を描く。悪いことを考えるその顔が、己を求めるそのギラつく目が。全てがヴァルバトーゼを煽る。

    (…ああ、要らぬ事を口走るものでないな)

    その教訓を胸に刻みつつ、ヴァルバトーゼは来たるシモベに備えるのだった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749

    recommended works

    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025