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    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

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    すずもち

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    ヴァルバトーゼが血を吸わなくなってから間もない主従
    魔力が尽きた状態に慣れてなくて眠りがちの閣下と尽くす執事

    #ディスガイア4
    disgaea4

    それでも満月は昇る傍を歩いていたヴァルバトーゼの体が不意にかしいだ。すぐに腕を伸ばしてかつての逞しさの面影もない細い腕を掴まえて体を支える。
    「すまない」
    その声も常のような張りはなく疲労が滲んでいる。以前の閣下ならば決して聞けない声だった。
    「そろそろ休まられてはいかがです」
    「だが……」
    「魔力を失った貴方様は以前よりも体力が落ちていらっしゃるのです、一度眠りましょう」
    「……すまん世話を掛けるな」
    「閣下の世話を焼くのが私の務めでございます」
    ふっと細い体から力が抜ける。その体を丁寧に抱えると主人を休ませるべくフェンリッヒは近くの空き家に入った。横抱きにした体はひどく軽い体だった、今にも風に吹き飛ばされてしまいそうなそんな感想を抱かせるほど。
    適当に埃や砂を払って主をこの家でまともに形を保っている生地が傷んだソファの上に寝かせて薄い毛布をそっと掛ける。本来なら棺で寝るのが吸血鬼の習慣だがヴァルバトーゼの持っていた棺はとっくの昔にならず者の悪魔たちに壊されてしまった。
    血を吸わなくなり魔力を失ったヴァルバトーゼはあっという間に衰え弱くなってしまった。
    かつての力が漲る体も痩せ細り、魔力はほとんど感じられず、振るう力は弱々しい。加えて魔力の無い体は頻繁に休息を欲するようでここ最近の閣下は眠ってばかりいる。今日も二日ぶりに起きたところだったのだが数時間も経たない内にこのように眠ってしまった。
    魔力の無い状態が悪魔にとってどれほど苦痛か、以前姦計に嵌められたフェンリッヒは嫌と言うほど思い知っている。
    それでもなおこの方は人間との下らん約束ごときのために頑なに血を吸おうとはしない。頑固などでは足りない異常なほどの意思の強さ。それは美点でもあり主を苦しめる元凶にもなっている。
    悪魔なのだから苦痛を厭って欲望のままに人間の血を吸えば良いのにと思うがそれをしないのが我が主なのだと堂々巡りの考えだけが頭を占める。
    「次はいつお目覚めになるのですか閣下」
    主が動いてくださらないと私も動けないのですよと深い眠りに落ちている主に向けて呟く。
    別に魔力を失った貴方でも構わないなどとほざく気はない、俺が惚れ込んだのは暴君の貴方だ。
    けれど今の姿を見ても月の誓いは欠片も揺るがない、誓った当初に思い描いていた未来とは似ても似つかないと言うのに。
    前に閣下に付いてくる必要はない、別の主を探すが良いと言われたことを思い出す。傭兵をやっていた頃の自分なら言われるまでもなくそうしていただろう、けれど。
    「知っていますかヴァル様、人間と言うものは他人同士であっても長らく過ごしているとお互い似てくるそうですよ……私のこの頑固さはひょっとしたら閣下の影響を受けたのかもしれませんね」
    静かに眠る主の寝顔を眺める。こんな状況であっても心折れず瞳からは決して力が失われない閣下の精神の在り方が不変であることだけがフェンリッヒを勇気づける。今はただこの眠りを守ろう、それしかできることはないのだからと独り心に誓った。
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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

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    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

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    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321