Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    すずもち

    ☆quiet follow

    ヴァルバトーゼが血を吸わなくなってから間もない主従
    魔力が尽きた状態に慣れてなくて眠りがちの閣下と尽くす執事

    #ディスガイア4
    disgaea4

    それでも満月は昇る傍を歩いていたヴァルバトーゼの体が不意にかしいだ。すぐに腕を伸ばしてかつての逞しさの面影もない細い腕を掴まえて体を支える。
    「すまない」
    その声も常のような張りはなく疲労が滲んでいる。以前の閣下ならば決して聞けない声だった。
    「そろそろ休まられてはいかがです」
    「だが……」
    「魔力を失った貴方様は以前よりも体力が落ちていらっしゃるのです、一度眠りましょう」
    「……すまん世話を掛けるな」
    「閣下の世話を焼くのが私の務めでございます」
    ふっと細い体から力が抜ける。その体を丁寧に抱えると主人を休ませるべくフェンリッヒは近くの空き家に入った。横抱きにした体はひどく軽い体だった、今にも風に吹き飛ばされてしまいそうなそんな感想を抱かせるほど。
    適当に埃や砂を払って主をこの家でまともに形を保っている生地が傷んだソファの上に寝かせて薄い毛布をそっと掛ける。本来なら棺で寝るのが吸血鬼の習慣だがヴァルバトーゼの持っていた棺はとっくの昔にならず者の悪魔たちに壊されてしまった。
    血を吸わなくなり魔力を失ったヴァルバトーゼはあっという間に衰え弱くなってしまった。
    かつての力が漲る体も痩せ細り、魔力はほとんど感じられず、振るう力は弱々しい。加えて魔力の無い体は頻繁に休息を欲するようでここ最近の閣下は眠ってばかりいる。今日も二日ぶりに起きたところだったのだが数時間も経たない内にこのように眠ってしまった。
    魔力の無い状態が悪魔にとってどれほど苦痛か、以前姦計に嵌められたフェンリッヒは嫌と言うほど思い知っている。
    それでもなおこの方は人間との下らん約束ごときのために頑なに血を吸おうとはしない。頑固などでは足りない異常なほどの意思の強さ。それは美点でもあり主を苦しめる元凶にもなっている。
    悪魔なのだから苦痛を厭って欲望のままに人間の血を吸えば良いのにと思うがそれをしないのが我が主なのだと堂々巡りの考えだけが頭を占める。
    「次はいつお目覚めになるのですか閣下」
    主が動いてくださらないと私も動けないのですよと深い眠りに落ちている主に向けて呟く。
    別に魔力を失った貴方でも構わないなどとほざく気はない、俺が惚れ込んだのは暴君の貴方だ。
    けれど今の姿を見ても月の誓いは欠片も揺るがない、誓った当初に思い描いていた未来とは似ても似つかないと言うのに。
    前に閣下に付いてくる必要はない、別の主を探すが良いと言われたことを思い出す。傭兵をやっていた頃の自分なら言われるまでもなくそうしていただろう、けれど。
    「知っていますかヴァル様、人間と言うものは他人同士であっても長らく過ごしているとお互い似てくるそうですよ……私のこの頑固さはひょっとしたら閣下の影響を受けたのかもしれませんね」
    静かに眠る主の寝顔を眺める。こんな状況であっても心折れず瞳からは決して力が失われない閣下の精神の在り方が不変であることだけがフェンリッヒを勇気づける。今はただこの眠りを守ろう、それしかできることはないのだからと独り心に誓った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏😭💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    recommended works

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
    2926

    last_of_QED

    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
    6012