Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    nbsk_pk

    @nbsk_pk

    @nbsk_pk

    文字を書きます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 87

    nbsk_pk

    ☆quiet follow

    自分の独占欲の強さに振り回されかける銀灰さんと、そんな彼をかわいいなあと思ってる博の話。

    #銀博♂

    最後の一呼吸までも「お前に、私が作る影の下だけで呼吸してほしいと思うことがある」


    「ずいぶんと君には似合わない言葉だね、エンシオディス。まるでロマンス映画の悪役のようじゃないか」
    「悪い人間だろう、私は。なにせ国家転覆をほぼ完遂した希代の悪人だ」
    「今日の君は甘えん坊だな。ほら、おいで。ハグしてあげるから」
     背中に回された太い腕にはギリギリこちらをつぶさない程度の力が込められ、もはやどちらがハグしているのかという状況になってしまってはいるのだが、あれ今のこれはまさしく彼が望んだ姿そのものじゃあないか?
    「結論からいってしまうと、かなり悪くないねこれは。君はいい匂いがするし」
    「お前の薫香にはかなうまい」
    「ふふ、そうかな」
     ふすん、と首筋に彼の高い鼻梁が這うのはくすぐったかったけれど、彼の声が幾分元気を取り戻していたから我慢することにする。背中に感じるもふもふとした暖かい感触は、おそらく先ほどまでぺしょんと床に垂れてしまっていた彼の尻尾だろう。広いはずの彼の背をゆっくりと撫でながら、のんびりと私は口を開く。
    「でもねえ、君はつまらないと思うんだ」
    「お前に飽くことなど」
    「君のことしか見えてなくて、君の言葉しか聞こえない。そんな私なんて君は一週間、いや三日で飽きるよ」
     だって私は、どこまで行っても彼の目の前に立つ人間だ。それに足るからこそ、彼は私のことを盟友と呼ぶのだから。じっと覗き込んだ雪原の朝焼け色の瞳は私ただ一人を映し込んでいる。おそらくは私の目の中にも同様に。ふうっとため息を吐いたのはどちらが先だったのか、こぼれた微笑みは同じだけの温度で、だからもう大丈夫なんだろうと用意していた非常手段を脳内のゴミ箱に一時保留で投げ込んだ。
    「お前が言うのならば、その通りなのだろう」
    「そうだよ、私のエンシオディス。さあ君に飽きられたくないから腕を外してもらっても?」
    「三日間はこのままでいいのだろう?」
    「そういう意味じゃあないんだけどなー」
     あれこれ続けようとした反論はそっくり全部彼の口の中に吸い込まれてしまったし、三日間とはいわないまでも一晩中は放してもらえなかったのだけれど、自らの愛情の深さに振り回される彼はとてもかわいかったので執務室の椅子から立ち上がれない程度のことは許してあげるのだった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nbsk_pk

    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

    nbsk_pk

    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

    related works

    recommended works

    nbsk_pk

    DOODLE銀博未来捏造、ナチュラルに結婚してる銀博がいちゃついてるだけの話
     旦那様が長年の猛アタックの末にようやく迎えられた奥様は、今までずっとロドスという企業の陸上艦でテラ全土を飛び回る生活をなさっていたらしい。そんな方ですから心配になってしまうのです。イェラグの長い冬、家から出ることすら難しい雪と氷しかない長い冬に退屈してしまわれるのではないかと。

    「まさか仕事が忙しすぎて執務室にこもってたら、退屈すぎて仕事に逃避した人間だと思われていたとはね……」
    「彼女たちも悪気があったわけではないのですが」
    「うん、純粋に心配してくれただけなのはわかってるよ」
     ただ因果関係が逆なだけで。苦笑するマッターホルンから受け取ったカップにほっと一息をついて、私は朝から座りっぱなしだった椅子の上でうーんと伸びをした。ぱきぱきと鳴る背骨にさすがに根を詰めすぎただろうか、いやいやロドスではこのくらいは日常茶飯事だったしと首を振っていると、すかさず追加のお茶請けが並べられる。昔は一部の神殿関係者や巫女しか口にすることができなかったという伝統菓子は、舌が痺れるほどの甘さなのに花の上品な香りが鼻に抜ける。これが必要だったってことは昔から彼女たちも激務だったのだろう。なら大丈夫。問題ない。マッターホルンのため息を無視しながら二つ目に手を伸ばしつつ、目下の心配事について話を続ける。
    2706

    nbsk_pk

    DOODLEオフの日に角と尻尾ぴかぴかにして博に会いに来るScさんの話。両片思いすれ違いもだもだ美味しいーーーーーーー
    ぴかぴか バベルがロドス・アイランドという陸上艦を拠点として運用し始め、しかしいまだそこでの生活に慣れるまでには至っていない頃。久方ぶりの休みをもらったScoutは、しかしドクターの執務室で居心地悪く尾を揺らしながら立っていた。


     無論のこと狙撃兵でもあるScoutは命令があれば一日でも一週間でもその場で身じろぎひとつせずに静止し続けることは可能だった。だが今の彼はオフであったため、先ほど提出した書類とScoutをチラチラと往復するドクターの視線にとうとう耐え切れずに口を開いた。
    「何か不備があっただろうか」
    「あ、あぁ、いや。報告書は大丈夫だ」
     とは言いつつもドクターの視線はScoutから、厳密に言えばScoutのやや頭上から外されることはない。何か粗相をしでかしてしまっただろうかと内心冷や汗をかきつつ、現在のおのれの恰好を思い返してみる。とはいえ私服というものを所持していないScoutの現在の姿はといえば、いつもの恰好から上着と装備を外しただけでしかなく、別段おかしなものでもないはずである。帽子だっていつもかぶっている愛用の品であり、目立つ穴やほつれがあったわけではなかったはずだ。ひょっとして同僚の誰かに恥ずかしいいたずらでも仕掛けられているのだろうかと不安になって来たScoutは――なにせ同僚は一癖も二癖もある連中が勢ぞろいしているため何をされてもおかしくはないのである――後ろ手に組んだ腕を握りしめ、言葉を発した。
    2276