流川、コートの中でお前以上に速くて、強くて、カッコいいやつなんてそうそういねえんだ。この天才が言うんだから間違いない。なあ覚えてるか?三年の夏、決勝で、俺が出したパスのこと…。
ひらひらと目の前で手を振られてはっとした。チームメイトがロッカールームの時計を指差す。コートに行く時間だ。流川はイヤホンを外し、カセットの停止ボタンを押した。
「ごめんな、カエデ。声かけたんだけど聞こえてなかったみたいだから」
「こっちこそ。教えてくれてありがと」
チームメイトはにこりと笑ってロッカールームを出て行った。気づけば自分が最後の一人のようだ。
イヤホンをくるくるとまとめて大事にバッグの中にしまう。
『天才に褒められたい時!』
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