求婚「おうじさま、あたしがおよめさんになってあげる」
とある片田舎の任務終わり。近隣住民と話していると女の子が七海に話しかけてきた。
「おや、このお兄さんが気に入ったのかな?」
「うん、だからあたしがおよめさんになってあげる」
「おませだねー」
自信満々に話す女の子を周囲は微笑ましく見守っている。声をかけられた七海はというと、眉間に皺を寄せながら膝を折り彼女に目線を合わせた。
「申し訳ありませんが、私はあなたをお嫁さんにはできません」
「なんで?あたしがいいっていってるのよ?」
「私がダメだと言ってるからです」
「なんでダメなの?」
「ダメなものはダメです」
「ダメじゃない!」
***
「いやー、七海も子供には弱いよね」
結局、女の子の両親が止めに入るまで押し問答は続き、七海は任務とは別の意味で疲弊していた。
「まったく…他人事だと思って…」
「嘘でもいいよって言わないのは七海の良い所だと思うよ」
「守れない約束はしない主義だからな。下手に許諾の言葉を口にすれば縛りになりかねない」
灰原も気をつけろよと軽く睨まれ、はーいと気楽に返事をした。
「まったく、わかってるんだかわかってないんだか…」
ぼやきながら歩く七海の背中を見ながらふとある考えが浮かぶ。
(七海は、僕をずっと側に置いてくれる?って聞いたら、いいよって言ってくれるかな?)
ダメだろうな、とすぐに結論をだし、目の前の背中を追い越した。
***
(あの時、側に置いて、なんて言わなくてよかったな)
上半身だけになった自分の身体。意識が保てるのもあと数秒だろう。そんな自身を抱えて走る同級生に思いを馳せた。
(守れない約束はしない主義だからね)
でも、死後というのがあるのなら。その時は側にいさせてと目を閉じた。
***
灰原が求婚された場合
「おにいさん、あたしをおよめさんにしてください」
「わー、あり「お兄さんは私のお嫁さんになるのでダメです」
「えー!やだー!あたしがおよめさんになるの!」
「お兄さんはあげません!」
「びぇー!」
「七海!女の子泣かせちゃダメだよ!」
「謝りませんよ」
「びぇー!」