お題で真っ先に浮かんだのがこれだったので…「ご都合術式にかかって調子を示すアイコンが頭上に表示されるようになった?」
「ダセー」
「うるさいですよ」
単独任務からの帰還後、治療のために立ち寄った医務室で絡んできたのは最強二人。彼らには絶対会いたくなかったのにと七海はため息をつく。
「治療で『普通』にまで戻したのに五条たちのせいで『絶不調』になってんじゃん、ウケる」
頭上のアイコンは絶不調、不調、普通、好調、絶好調の五段階で変化するらしい。真顔だったアイコンは五条たちのからかいによって紫に変色しくたびれた表情になっていた。
「パ◯プロに恨みを持つ呪霊だなんて災難だったな。まあ、数日で消えるだろうから我慢しろ」
「パ◯プロに何されたんだよそいつは」
「さあ?」
「七海はそいつをどうやって倒したの?」
「対戦しました」
「対戦?」
「ゲームで」
七海がドヤと自慢げな顔になると同時に頭上のアイコンの口角も上がる。『好調』のサインのそれから察するに気持ちを持ち直したようだ。
「七海!?呪霊にやられたって聞いたけど大丈夫!?」
医務室のドアが大きな音を立てて開く。七海の同級生の灰原が息を切らして室内へ入ってきた。
「私は大丈夫だから、大声で騒ぐな」
「ごめん…」
諫めるられた灰原はしょんぼりと顔を下げる。七海は照れくさいのかぷいと横を向いてフォローを入れた。
「…心配してくれたのは嬉しい」
「本当!?」
「ああ」
二人の微笑ましいやり取りを先輩三人は笑いを堪えながら眺めていた。なぜなら。
「七海、わかりやすいな」
「灰原が来てからずっと『絶好調』じゃねーか」
「ご機嫌だね」
「うるさいですよ」
三人の野次に眉間に皺を寄せながら七海が唸る。だがその表情とは裏腹に頭上のアイコンはニッコニコの笑顔だ。
「何が『絶好調』なんですか?」
「灰原はパ◯プロは知らないのかい?」
「パワ…?」
「知らないままでいてくれ」
「…?」
どれだけ疲れていても揶揄われても、灰原がいるだけで幸せな七海であった。