仲良し(意味深)でした!「夏油さん、僕と『仲良し』してくれませんか?」
連休明けの月曜日、灰原が爆弾発言を落とした。
「灰原?」
「ダメですか…?」
上目遣いでこちらを伺う様子は庇護欲を掻き立てられるが今はいけない。七海が人を殺しそうな目でこちらを凝視している。
「…なぜそんなことを言いだしたのか聞いてもいいかい?」
「妹が…」
なるほど。確か灰原は先の連休で実家に帰省していた。その時に何かあったのだろう。
「妹と話してる時にみんなで撮った写真を見せたんです。そしたら『この髪の長い人に『一緒に仲良ししよう』って言ってきて』ってお願いされて」
「断るか、言ったふりをすればよかったのに」
「ちゃんと言わないなら自分も高専に入学するって…」
「ああ…」
灰原が妹を大事に思い呪術界に入れたくないと考えているのはここにいる全員が知っている。
「灰原はこの場合の『仲良し』の意味を知っているかい?」
「わかんないです。妹に聞いても『相手の人に任せておけば大丈夫』としか教えてくれなくて…」
「うーん」
話を聞く限り灰原は悪くない。悪くないのだが、なぜ私なんだ、と心の中で愚痴をこぼしていると般若の顔を引っ込めた七海が口を開いた。
「妹さんの要望は『写真に写っている人物と仲良ししろ』ですよね?なら私でもいいのでは?」
「七海?」
「夏油さんってご指名だったけど」
「髪の長い人、でしょう。私も一般的な男性に比べたら長髪かと。ですよね夏油さん?」
「そうだね!!」
七海の振りに全力で頷く。すまない灰原。私は自分が可愛いんだ。
「というわけで行きますよ灰原」
「どこに?」
「私の部屋です。今から『仲良し』しますよ」
「ここじゃダメなの?」
「灰原がいいなら「やめろ!!」」
意味がわかっていない灰原からとんでもない提案が出されるがやめてほしい。人の『仲良し』を見る趣味はない。
「ダメみたいなので行きましょう」
「う、うん」
翌日、『仲良し』の意味を知った灰原が妹に問いただす電話の声が寮の中を響き渡った。
***
妹「お兄ちゃんとなら前髪の長い人とお似合いかなって思ったけど、金髪の人にいったんだ。あの人、お兄ちゃんと一緒で受けだと思ってた」
灰「髪が長いって前髪の事だったの!?」
七「ツッコミ所はそこじゃないです」