年下×年上七灰♀「やっと見つけた。まさかこんなところにいるなんて、会えて嬉しい」
下校時間、学校の校門前で少女に頬を染めながら迫る少年。これが他人事ならさぞ面白いだろうが、当事者だと周りの視線が痛すぎる。
「灰原」
「とりあえず」
場所を移動しようか、と灰原女史は提案した。
「年上!?」
駅前のファミレスに移動し、まずはお互いの近況を話し合う。灰原が三年生の十八歳だと自己紹介したところで七海が声を荒げた。
「そんなに意外?」
「五条さんたちより年上なのは意外だが、それよりも学生として一緒にいられる期間が短いことが悔しい。私はまだ一年なのに」
「普通の高校だと早いよね」
高専は四年制だったから気にならなかったが普通高校の二歳差は大きい。
「一緒にやりたいことがいっぱいあったのに」
「これからでもできるよ、二人共高校生の夏は前世が最後だけど」
季節は秋に入り最近は風も冷たい。うだるような暑さだった前世に思いを馳せる灰原とは違い七海は苦しそうに眉を顰めた。灰原が亡くなった時のことを思い出したのだろう。その様子を見て慌てて話題を変えた。
「ねえ七海」
「どうした」
「僕が女子なことには何も言わないの?」
前世とあまり変化のない学ラン姿の七海と違い、灰原はセーラー服に膝上スカートという女子高生姿だった。
「念のため確認だが、女装ではなく女子でいいんだよな?」
「当たり前でしょ。女装じゃ女子高に入るのは無理だよ」
二卵性双子の妹として生まれた前世の妹の希望により都内の女子高校に進学していた。
「だったら言うことは一つだよ」
机に置いていた両手が七海の両手に包まれる。
「結婚しよう」
「はじめまして!ナナミンの彼女さん!」
「七海さんを振り回すなんてどんな悪女かと思ったけど…ふーん」
「すみません。こいつら言うこと聞かなくて」
衝撃の告白から一週間。断られてもめげもせず七海は灰原の元に来た。ここ数日は元陸上部の足を生かして全力で下校しているので校門前で捕まることはないが、今日は複数人で探すという七海の作戦の勝利で灰原は捕まってしまった。
「灰原、後輩の虎杖くん、釘崎くん、伏黒くんだ。証人もいることだし結婚しよう」
「いや、外野がいても変わらないし、七海まだ十六歳でしょ」
「二年の婚約期間だと思ってもらえれば」
「うーん」
灰原は頭を抱える。
「そもそも、僕達恋人でもないし、恋人だったこともないし」
「好きです」
間髪入れずに七海が答えた。
「言葉に出したことはなかったけれど、知ってくれていると思ってた」
「うん、そうだね」
「あなたも同じだと思っていたのですが」
「………そうだね」
僕も七海が好きだよ、と顔を赤らめながら小声で答える。
「じゃあやることは一つだ、結婚しよう」
「うーん?」
そうなのか?あの冷静沈着な七海が言うならそうなのかもしれないな?と連日の突撃で回らない頭で灰原の思考は傾いていた。
「付き合うどころか告白すらしてなかったの?ないわー」
「ナナミンがんば!もう一押し!」
「(………俺たちはここにいてもいいのか…?)」