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    まどろみ

    @mdrmnmr00

    皆様の七灰作品が見たいので書いてます

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    まどろみ

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    自分が当て馬だと思い込んでいる灰の話。ほのぼのが書きたかった。アニメ灰の最後のセリフの言い方が好き。

    #七灰

    当て馬「それじゃあ、失礼しまーす」
    見知らぬ女性と尊敬する先輩の前から立ち去った灰原は、二人から見えない位置まで歩くとおもむろに携帯を取り出した。両手で素早く文字を打ち込み送信ボタンを押す。相手はここにはいないもう一人の先輩で文面は『夏油さんが美女と密談しています!』だ。携帯をポケットに戻し息をひそめること少し。灰原の送った文を読んだ先輩は文字通り飛んで帰ってきたようで怒鳴る声とそれに対して驚く声、女性の笑う声が聞こえる。二人は言い争いをしながらその場を立ち去った。あの様子だと多分明日には校舎が半壊していることだろう。女性に見つかる前に灰原もその場を立ち去った。その顔は達成感に満ち溢れている。
    「当て馬体質もたまには役に立つね」
    独り言は誰にも聞かれることなく廊下の中に消えた。

    ***

    灰原の言う当て馬とは、相手の様子や反応を見るために利用される人のこと。少女漫画で言うなら主人公の恋を応援したり、相手役より察しがよかったり、たまにトラブルを持ってきたりとヒーローにはなれないが作品を盛り上げる要素のある男の子。呪霊が見えるせいか人間の機微には疎いが察知能力は高かったため意図せずそんな役割を果たすことが続き、妹から「お兄ちゃんは当て馬」と言われてから灰原は自分がそうだと認識していた。
    人の役に立つのは好きだ。人が好きで、感情の機微を見るのが好きで、恋愛とはその浮き沈みが大きいジャンルである。灰原にとって当て馬の立場は悪くないものだった。

    ***

    翌日。五条と夏油は喧嘩からの意思疎通ができたのか二人並んで朝食をとっている。その距離が前より近いように見えて嬉しさで食事が進む。仲良きことは美しきかなってね。
    「うっとうしいな」
    「そう?」
    横目で先輩二人を睨む七海は朝に弱いことも相まって眉間の皺がすごいことになっている。
    「…まあ、夏油さんが元気になったのはよかったと思うが」
    「七海も気づいてた?」
    「…もしかして灰原が?」
    「なんのこと?」
    灰原は素知らぬ顔で食事をつづけた。自分がやったことは些細なことだし、それを誰かが知る必要もない。何せ自分は『当て馬』なのだ。

    ***

    食事が終わり共に廊下を歩いていると七海が「話がある」と言い出した。灰原の部屋に招き入れ向かい合って座ると意を決したように七海が口を開いた。
    「灰原はよかったのか?」
    「?なにが?」
    七海は少し言いよどんだ後、気まずそうに続けた。
    「夏油さんのこと…」
    「…?夏油さんがどうしたの?」
    「…好きだったんじゃないのか?」
    「え!?」
    予想外の発言に驚き慌てて首を横に振る。
    「夏油さんのことは先輩として尊敬してるけど、そんな目では見てないよ、断じて!」
    「そうか…」
    全力で否定する灰原を見て七海はほっとしたように息を吐いた。
    「よかった」
    頬を染め笑うその姿になにが、と野暮なことは聞かない。鈍い灰原でもわかる、空気が甘い。現実逃避をするようにこの状況は何というのかと頭を巡らす。なんだか見覚えがある。現実じゃなくて妹の持っている漫画で。確か、アレは、アレの名前は…思い出した。
    「スピンオフだ…」
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