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    Sarururu

    @Sarururu00

    FFTとFF16ほかの二次小説書き。こそっとぽいっと時々置きます。
    FFT:ディリータ、オーバル
    FF16:テラディオ、クラジル

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    Sarururu

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    ED後、オリフレムでのディオンとテランスです。ディオン視点。
    完成の際にタイトルを改題しましたが、回収できてない部分があるので続くかも。続かないかも。

    #テラディオ

    A Bookmark and Twelve Cards 空がやけに高く見えるような気がした。
     たなびくのは巻雲。空の色はやや薄く、それでいて吸い込まれそうなほどに深い。もう少しで巡る季節を前にして、この季節特有の空色をしていた。
     幾日か時を進めてしまえば、風が強く吹き始める。今はかすかにしか聞こえない潮騒も、少しばかりその存在を主張するのだろう。
     空に、海に、薄い灰色が乗る季節。
    「ディオン様?」
     立ち止まって空を見上げるばかりのディオンの背後でテランスが声をかけてきた。いかがなさいましたか、と続けた彼にディオンは向き直った。
     一歩だけ踏み出し、テランスの瞳を覗き込む。テランスは一瞬たじろいだが、すぐに落ち着き払った様子を見せた。問いをまなざしに含めるも、ディオンの好きにさせることにしたらしい。
    「……不思議な色だな」
     テランスの瞳の色を確かめ、ディオンは再び空を見上げた。今でこそすっきりとした青に染まっているが、あと少しもすれば。
    「何がですか?」
    「その瞳の色が」
     間もなく訪れるのは薄灰を刷いた空、鈍色の海。ごく近くに佇む恋人の瞳の色は、実はそのどちらでもない。それらを混ぜ合わせて、さらに数滴の群青を混ぜ込んだような不思議な色合いだとディオンは思う。
    「私にとっては、貴方の瞳のほうが不思議な色です」
     説明したディオンに、テランスが言う。曰く、晴れた日の黄昏時から夕闇に差し掛かるその一歩手前で降り注ぐ光の色なのだと。
    「こうして空の色が戻り……、また目にすることができました」
     陽光の色も、貴方の瞳の色も。
    「……ああ」
     穏やかに笑むテランスに頷き、ディオンは再び歩き出した。


         § §


     ──オリフレムを「視察」しようと思っているのだが、どうだろう。
     クライヴ・ロズフィールド──ヴァリスゼアの天秤を影から見守っている男──から声をかけられたディオンは、その言葉の意味を瞬時には掴みそこねてしまった。
     何らかの意図があるのか、あるいは何もないのか。クライヴはディオンに言外にオリフレムへ入る許しを得ようとしていたが、うち捨てられてしまったかの地を形式的にせよ治めていたのは己ではない。それ故に「許可ならばオリフレム公へ」とディオンはクライヴに答えた。
     想定外の答だったらしく、ぱちぱちとクライヴは目を瞬かせた。「俺が行っていいのか?」とよく分からない問いをしてきた彼に、ディオンは再度頷いた。

     そう、頷いたのだが。


         § §


     二名の警護兵の後にテランスが続き、ディオンはさらにその後ろを行く。殿には「石の剣」の精鋭が三名つき、一行はホワイトウィルム城の城門を潜った。
     城下町がそうであったように、白亜の城にも人の気配はほぼなかった。世界の理が変わってエーテル溜まりからも解放されたといえど、それだけでは「帰還」はなし得ない。野盗避けの最低限の警備は為されているが、民も主も国としての機能も失ったまま、城は静寂に包まれていた。
     いくつかの回廊を抜け、中枢へと向かう。神皇宮に差し掛かる頃合いで、場の安全を判じたテランスがディオンとその位置を入れ替わり、警護兵と石の剣をその場に留め置いた。
     テランスの配慮に心の内で感謝しつつ、ディオンは階段を上った。ヒビの入った玻璃をはめた窓から射し込む光に導かれ、一歩ずつを踏みしめる。年月を経て降り積もった埃が歩を進めるごとに舞い、光に反射してちかちかと瞬いた。逃げ遅れたのか、それとも後に入り込んだのか、鼠か何かの骨が隅に転がっている。塵ひとつ落ちていなかった往時とはまるで違うそのさまに少なからず苦い思いになったが、そうした思いに至った己を不思議にも感じた。
     この地を離れたときは、そんな思いなど抱えなかったのに。
     黒の一帯が押し寄せ、マザークリスタルを失い、エーテル溜まりに沈みゆく都を棄てたとき、「仕方がないことだ」とどこか冷めた心持ちで割り切っていた。クリスタル自治領への侵攻については承服しかねたが、半ば無理やりに己の心をねじ伏せた。……今思えば、目の前の変事に相対することで精一杯で、故国喪失の感傷に浸る余地などなかったのだろう。
     それなのに、今は。
    「大掃除が必要だな?」
     そんなふうにディオンが軽口を叩くと、背後でテランスがかすかに笑った。確かに、と応える彼にディオンもまた笑う。実際にはその必要はないかもしれない。このまま静寂に眠り続けることを人々が望むのなら。
     階段を上りきり、再び回廊を歩む。つきあたりで止まり、扉に手をかけたディオンの背にテランスが声をかけた。
    「私は、ここで」
     かつてのように回廊の脇に身を寄せ、テランスは敬礼をした。扉の向こう側──謁見の間に彼が身を置いたことはない。
    「よい。お前も入れ──、いや、入ってくれ」
     一度振り返り、ディオンはテランスを手招いた。は、と応じた彼に軽く頷き、重厚な扉を開く。
     中に入ってみると、部屋はまさしくがらんどうだった。
    「見事に何もない」
    「……そう、ですね」
     唯一残されてあった絨毯の上をディオンは歩いた。謁見者に許された位置で立ち止まり、御座が置かれていた高みにあわせて僅かに視線を上げる。
     そうしてみたところで、幻の姿が見えるわけでもなく、同じように幻の声が聞こえるわけでもない。分かりきったことだったから、落胆することもなかった。
     だが、もしも、とは少し思う。もしも、早いうちに父の御心に沿うのをやめていれば、何かが変わったかもしれない。時折襲い来る悔恨という名の波はその形を変えていたかもしれないし、民にとって、国にとって、そしてヴァリスゼアという世界にとっても今少し穏やかな日々を齎せたかもしれない。驕りではなく、そう思う。
     もっとも、戦場で(あるいは、別の場所で?)命を落とした可能性のほうがずっと高いのだろうが。
     だが、今となってはすべては詮無き考えで、こうして夢想してみても何も変わらない。ただ、不可思議な経緯でこの場に在ることだけが事実だった。
    「使い方に苦慮しそうだ。いっそ、使わない手もある」
     踵を返し、ディオンは扉近くのテランスに歩み寄った。結局、テランスはその場に佇んだままでディオンの様子を見守ることに決めたらしい。そんな彼にまたひとつ頷き、謁見の間を出た。
     ザンブレクの再興への道筋は、荒山を登るに等しい。多くの岩が転がり、足場は悪く、獣道は途中で抉れ、山頂は暴風が齎す乱雲に隠されている。
     オリフレム公の言葉通り、統治者は必要だった。民が願う安寧を早く成し遂げるためにも「国」という枠組みはやはりあるべきだ、とロズフィールド卿達も語っていたし、ディオンもその意見に否やはなかった。だが、その役目を負う者をどのように定めるかについては未だ決まっていない。
     人の意思によって長が選ばれるダルメキアならば、憂慮は少ないだろう。世襲制ではないザンブレクも結局は「人」が選ぶのだが、信仰が絡む故に事情は少なからず異なる。国の統治者──神皇を定める高位の枢機卿達の多くがツインサイドにて失われ、元老院もまた機能していない。神託を授ける星詠も同様だ。
     残されたヤツを数え上げたほうが早いな、常のように皮肉げに笑いながらそう言ったのはカンタン卿だった。「寄合」と風の志士達が呼称するところの集まりに招聘されたオリフレム公を彼は眺め、次いで同じように呼ばれたディオンを見やった。
     首の賢人であったオリフレム公は分かるとして、罪人である己を呼んだのはどのような意図があってのことか。彼らが己に真に課そうとしている役目を推し量る前に、心のどこかがそれを拒んだ。
     今日から続く未来を見たい、そう願う心に偽りはない。
     ……だが、それでも。
    「難しい顔をしておいでですね。……苦しいですか?」
     すぐ傍で問うてきたテランスに、ディオンは目を伏せた。そんなことはないと否定してみても、この恋人は容易く看破する。
     それでも、以前ならば己が繰り出した嘘を見逃してくれもした。それに幾度も甘え、果てには別離を強いた。心の裏側を覗き込むまでに至ったのに、「望み」を聞き入れてくれた。
     苦しく、辛かったと彼はあのときの心情を後に吐露した。すまない、とは言えず、その告白に何の言葉も返せなかった。そんな己を腕の中に招き入れ、彼は言った。
     ──よくないけれど、もういいんです。すべてがあって、今がある……そんなふうに思える未来があるだなんて、思わなかったから。
     彼のその言葉を、震えた声音を忘れられない。否、忘れてはならないと思う。
     その故に。
    「少し、な」
     向けられたまなざしに促され、短く肯定する。ふう、と息をつき、それからディオンは顔を上げた。
     いつもの角度で彼に目線を置く。
    「謗られるのではなく、望まれる。それが、少し苦しい」
     怨嗟の唸りがあった。石礫を投げられ、哀哭を聞いた。向けられた刃、極刑を叫ぶ声。当然だと思ったが、膝を屈するわけにはいかないと思った。死を求む海嘯に攫われてしまうのは己にとってある種の救いでしかない。心の内で言い聞かせ、前を向いた。
     だが、他方で。
     悲痛に満ちた願いがあった。失ったもの、届かなかった想いの果て。再び見送った川辺の灯籠、崩れた女神の像、古びた井戸、砂塵の熱風、灰色の都。──わたしたちに、光を。導きを。市場の子供達が呟き、老爺が縋る。泣き濡れた婦人が微笑み、刻まれた刻印を隠さない男が頷いた。見知らぬ人々の、どこか漠然としていた民達の、その直なる声。祈り。望み。
     何故? そう問おうとした声は音にはならなかった。思いも寄らない多くの願いに晒され、呼吸ができなくなった。晴れた空、聞こえないはずの雨音がざあざあと耳元に響き、地面が揺らいだ。
     それでも倒れ込まなかったのは、背に彼のまなざしを受けていた故に。
    『これが現実です。世界が貴方を待っている』
     甘やかな死ではなく、苦難に彩られた生を。
     声を聞く旅の終わりに、彼は言った。そうして、竦んだ己に「未来」を突きつけた。……いつわりのない願いの裏で己が隠し持っていた、本当の願いを。
    「これで良いのだろうか、どうしてもそう思ってしまうが」
     掬い上げられてしまった願いに思いを馳せた言葉は、弱音にしか聞こえない。そのことに苦笑し、ディオンは続けた。
    「みなが私を望んだ。壊れた揺り籠を新たに作り直せと望むのならば、その声に応えよう。……テランス」
     呼びかけると、目の前の彼が頷いた。灰青の瞳の奥に光を見出す。
    「其方は──お前は、私の傍に。私が揺らがぬよう、すぐ傍で見張っていてくれ」
    「御意に、我が君。……いえ、ディオン」
     落とされた言葉、唯一の妙なる響き。それらに引き寄せられるように、ディオンは手を伸ばした。すぐにテランスがその手をとり、自らの頬に当てる。
    「共に在り、同じ未来を見る。それこそが私の、僕の願いだ」
    「……知っている」
     間近で囁く声に笑みが溢れる。擦り合わせた額のあたたかさ、交差するまなざし。目を閉じると、ありがとう、と吐息が触れた。



     神皇宮を出、待機していた兵達と合流する。待機の時間を使い、手分けして周辺を警邏したとの報告にディオンは頷いた。
     次いで迎賓宮を訪い、使用に耐えうることを確かめた。代え難い御物が多かったがためにがらんどうだった神皇宮と比べ、迎賓宮の調度品はその多くがそのまま残されていた。城を再び使うならば、この宮に重きを置いたほうが良いだろう。無論、「大掃除」は必要となるが。そんなことをテランスと話しながら、城内の他の場所も巡った。
     最後に、二人だけで自宮へ向かった。
     気高く聳えるホワイトウィルムの城。中央に据えられた神皇宮や他の宮とは異なり、廃太子となった際に与えられた自宮は城を囲む塔のひとつにあった。
     宮に移った折、これではまるで幽閉のようだと己より憤慨してそう語った「友」に、空の近さが好ましいと嘯いた。塔の高みから臨むドレイクヘッドの美しさに見惚れるのだと。繰り出した嘘をやはり友は見逃したが、恋仲となってしばらくした後に「ひとつだけ、利があります」と艶の残る声で言った。「それは?」と心地よい疲れに微睡みながら問うた己に、彼は──テランスは「ここでの貴方を誰もが知り得ない」と背骨を撫でた。
     そんなこともあった、と思う。懐かしくも慕わしい、貴重な思い出。
    「ディオン?」
     塔の入口で立ち止まったディオンに、テランスが不思議そうに小首を傾げた。そのまま進めようとしてしまった歩を戻すあたり、やはり生真面目な男だとディオンは思う。なんでもない、と返して中に入った。
    「本当に?」
    「本当だとも。ただ、思い出しただけだ」
    「何を?」
    「さあ?」
     ふふ、とディオンは笑った。またそうやって誤魔化すんだから、とぼやきを隠さなくなったテランスの声にも過ぎ去った年月を思った。
     神皇宮のそれよりも若干急な階段を上っていく。格子のある小窓を数え、その数字が記憶にあったものと同じになったとき、自室があった階に着いた。
     扉を開けるようテランスに指示し、ディオンは中へ入った。鎧戸で閉ざされた部屋は暗く、埃っぽい。同じように感じたのだろう、窓辺に歩み寄ったテランスが鎧戸と格子窓を開いた。
     澄んだ空気が流れ込み、傾き始めた陽光が部屋に射す。
     迎賓宮と同様に、自室の調度品もほぼそのままだった。「引越先」に運び込んだものは多くはなかったと記憶している。戦場に身を置いていたが故に、城からも自宮からも離れていた時間のほうがずっと長かった。元来、収集癖も持ち合わせていない。
     ──ただ。
     居間を挟んで寝室と反対側にある手狭な書斎に入る。書棚には一冊の本もなかったが、頓着はしなかった。窓辺に置かれた文机に寄り、その引き出しを開ける。一遍の期待と共に。
    「……やはり、な」
     だが、そこには何もなかった。
     それはそうだ、と思いながらディオンは自嘲気味に笑んだ。此処に納めてあったものだけは持ち出したのだ。誰にも触れられたくなかったから、厳重に鍵をかけたことを覚えている。そして、その先でついぞ開かなかったことも。
    「何か、探しもの?」
     様子を窺うテランスに、ディオンは向き直った。「文箱だ」と答えると、テランスが「文箱?」と同じ単語を繰り返す。
    「一枚の栞と、お前から贈られた十二枚のカードが入っていた」
    「栞……」
     思い当たるふしがあったらしく、テランスが言い淀む。そんな彼にひとつ頷いてみせ、ディオンは細く長い息を吐いた。
    「覚えているか? 父上から──猊下から賜った飛竜草を押し花にして、栞に仕立てた」
    「……ええ。覚えております」
     返された言葉の固さに、ディオンは緩く笑む。
    「作る過程で、私の不注意で花びらを一枚損なった」
    「……」
     黙り込んだまま、テランスが頷く。
    「沈んだ私に代わって、お前が栞を作り上げた。最後に、損なった花びらをうまい具合に配して」
     何故か緊張した面持ちで差し出されたそれを、両手で受け取った。あのときの喜びを覚えている。
     ……覚えているけれども。
    「私は嬉しかったが……、テランス、お前は違うのだろう」
     今思えば、あのときは己のことばかりだった。彼が何を感じていたか、何を想っていたか、そういったことに考えが及ばなかった。そして、それからも。
    「……ええ」
     沈黙に身を委ねる前に、テランスが首肯する。何かを吹っ切ったのか、溜息の後に彼は口を開いた。
    「色々なことに、怒っていたんです。無情の花を贈る猊下に、無理やりに喜びを見出していた貴方に、何もできない自分の無力さに」
     本当は、と言葉を繋げる。
    「貴方が……君が花びらを損なったとき、僕は嬉しかった。そのまま捨ててほしいと願った。そんなことにはならないと勿論分かっていたのに」
     込み上げた想いをやり過ごすためだろう、テランスは再び大きな溜息をついた。
    「僕がすべてに代わりたかった。ずっと、そう思っていた」
    「テランス」
     紡がれる積年の告白が愛しいと思う。その感情のままに、ディオンは恋人の名を呼んだ。
    「誰もがその代わりにはなりえない。どう足掻いてもお前は父上の代わりにはならない」
    「……分かっています」
     否定を甘んじて受け止めたテランスに、ディオンはかぶりを振った。
    「いいや、分かっていない。仮にお前がすべてに代わってしまったとして、私は誰を愛せばよい? テランス、お前という存在だけが消えてしまった世界で」
    「ディオン……」
     呆然と名を呼ぶ最愛に微笑み、「だが」と続ける。
    「だが、私はお前にこの苦しみを強いた。……そう、これこそがお前の抱え持っていた想いなのだな?」
    「そう、だけれど。でも……!」
     咄嗟に認めてしまったテランスの反駁を遮り、ディオンは繰り返した。
    「誰もがその代わりにはなりえない。テランス、私が最も愛するお前の代わりはいない」
    「……それは、僕も同じだ」
     知っているでしょう? 先のやり取りをなぞるようにテランスが言う。
     ああ、とディオンが応えると、テランスはようやく笑顔を見せた。
    「お前の想いを聞きたい。今まで隠していたぶんも、これからのも」
     その笑みに願いを返す。ささやかなようで、切なる願い。
    「お望みのままに。……僕にも、君の心を聞かせて?」
     過去の苦しみ、未来への恐怖。絶望と、希望。抱え込んだ、そのすべてを。
    「無論、伝えよう。私の話は長い、聞き逃すなよ?」
    「僕の愛は重いからね、押し潰されないよう気をつけて」
     冗談めいた軽口で応酬していると、ぬくもりを失い始めた風が吹き込んだ。その流れに促され、窓の外を二人で眺める。
     黄昏時から夕闇に差し掛かる、その一歩手前で遍く降り注ぐ光。
    「……私の色か」
    「ええ」
     ──幸いをもたらす光の色です。
     呟きに応じた恋人に肩を抱かれ、ディオンは目を細めた。
     無音の城に、街に、束の間の優しい光が降る。せめて忘れぬようにと、心に刻んだ。
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    mizutarou22

    DONEテラディオの二人がコスタ・デル・ソルへバカンスに行く話です。謎時空な現パロです。FF7リバースをプレイしていたら二人にも行ってほしくて…。リバースのネタバレは無いと思いますが一応注意してください。
    あなたが一番綺麗 遠くからさぁ……と音が聞こえる。その音は私を落ち着かせ、身体が勝手に胎児のように丸くなろうとする。しかし足を丸めようとしたところで、ふと温かい何かに当たった。そこで私は意識が少しずつ覚醒していく。目をふっと開け、視界に映ったのは……。

    「おはようディオン……目、覚めた?」

     目を開いた先にいたのは私の最愛の夫、テランスだった。テランスが微笑みながら私の髪をそっと撫でる。私はその撫でられる気持ちよさにうっとりとして、テランスがしてくれている腕枕に唇を近づけ、キスをする。

    「ああ……波の音で目が覚めてしまったようだ」

    「綺麗な音だね、ディオン」

    「ああ……」

     そう、私たちは今コスタ・デル・ソルというリゾート地へ来ている。温かい……というよりカッと太陽が照り付ける暑い気温で、ここにいる人々は薄着や水着で街中を歩いたりしていた。街も活気があり、皆楽しそうに催し物に参加したり、また様々なお店が軒を連ねており、そのなかでショッピングを楽しむ者もいた。
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