十二話 書斎の鍵 白衣の少女は私を客として扱うように決めたらしい。最初こそ突然現れた私の姿を見て驚いていたが、オイカワさんがあらかじめ説明してくれたおかげか、変な事態にならなくてよかった。
「コーヒーは飲めるかしら?」
「あー……えっと、苦いのは苦手で……」
「紅茶は平気?」
「はい、紅茶は大丈夫です」
「わかったわ。ちょっと待って」
彼女はそう言うと指を鳴らす。すると彼女が立っているすぐ後ろに何の前触れもなく女性が現れた。女性は黒いワンピースに白いエプロン、いわゆる侍女のような服装をしていた。肌は白く、明るい青色の長髪で佇まいは物静かな感じだ。よく見ると、女性の体はうっすら透き通っており、人ではないというのは直感的にわかった。
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