動点 もし偶然にも、子供の頃、世紀の霊能力者と知り合うことができたなら、その後の人生をどこで過ごそうとも、彼はついてくる。彼は移動祝祭日だからだ。
ある作家の名句を真似るとこうなるだろうか。もとは作家がパリで過ごした青春の日々を讃えたエピグラフだ。世紀の霊能力者――つまり霊幻さんとあまり積極的に交流したとは言えない僕が、彼と過ごした日々についてこのような感慨を抱くことになるとは誰が予想しただろう。しかし、残念ながらこの日記を書いた当時の僕はまだ少年時代を冷静に俯瞰できておらず、その日の記録に書かれたこれは全く別の意味が込められた、字面だけの本歌取りに過ぎない。それは僕が大学生になってから初めて迎えた、年の暮れのことだった。
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