ヨタヨタと壁伝いに基地内を歩く。
まだ空に橙が残る早い時間に起きるのは、何も散歩が趣味というわけではなくて、単純に間に合わないからだ。
ヘビ、と呼ばれる自分達の宿舎から、機体の倉庫までは少し距離がある。…少し、とは体が満足なシャケの物言いで。自分の様に尾鰭を半分無くした者には十分に遠いと言える距離だった。
訓練で怪我をする、自分のような間抜けなシャケにはいいペナルティだ、と自嘲する。
いつも通りにまだ誰もいない倉庫を開けて。
灯りをつけて、ハッチを開ける様スイッチを入れる。
そうすると倉庫の前面の大きなハッチが巻き上がっていって、機体を走らせる訓練場と満点の星空が視界いっぱいに広がる。
ヘビに移動して、何よりも役得を感じたのは、この光景を独り占めできる事と言っても過言じゃないな、なんて思いながら不自由な体と工具を引きずって自分の機体を整備しに行くとどこか不満げな顔をして見えて。
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