迷い子 分水嶺迷い子
訓練の遠泳から帰ってきたら、教官から「お前と同室の後輩が帰って来ていない」と知らされた。
今日は2年目の自分達と1年目の後輩は別の区域で泳いでいたから自分が監督していたわけではなかったが、この分だとまた連帯責任になるな…とため息をついて、「自分が探しに行きます」と申し出た。
既に遠泳で疲れているのにと口の中で文句を言いながら泳いでいって、ちょうど折り返し地点の岩の陰に後輩の姿を見つけた。
「おい!何やってるんだ!」
「ハード。」
ぎこちなく振り返った後輩は、見たことがないほど動揺して見えた。
いつもぼんやりと、何を考えているか分からない瞳が明らかに動揺していて。
「どうした?何かあったのか?」
怪我でもして動けないのかと思っていると、鰭をこちらに差し出してくる。
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