神のまします社にて ――農作物が不作の年、雨乞いの儀式も豊作の儀式も効果が出ない年。
そんな時、周囲の村の中から若い娘が神様の生贄に捧げられる。生贄が神様に気に入られれば来年は豊かな暮らしが約束されるのだ。
辺境の村にはよくある習慣。今回はついにこの村から生贄を出すことになったらしい。
この村の子どもはわたしと、もう一人しかいないのだ。今回白羽の矢が立ったのは友達の方だった。……けれどわたしは大事な友達が神様のところに連れて行かれるのが嫌で、生贄に志願した。
「私の代わりに行くだなんて先輩、そんな……!」
「大丈夫だよ、きっと神様を説得して帰ってくるからね。豊作になるようにちゃんとお願いもするし」
彼女を安心させるのが半分、残りの半分は何とかやらなければ、という気持ちだった。
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