テロップと共にくしゃくしゃに歪めた顔が映された画面をぼんやりと見ながら、ブラッドはクラッカーを手に取った。ローテーブルに長時間放置されたそれは湿気ていて、口の中から軽快な歯応えは聞こえない。目の前の大型モニターでは、難易度の高い問題に次の挑戦者であるコメディアンが難しい顔をしていた。彼らが運任せに選ぼうとしている時だった。玄関の方から電子音が聞こえ、しばらくして扉が開かれる。
「ただいまー……って、うおっ! ブ、ブラッド……!?」
帰宅した家主は、リビングの扉を開くなり驚きに目を丸くさせた。モニターは丁度コマーシャルに入っている。丁度良いと、ブラッドは固まったまま動かないアキラへ視線を向けた。
「おかえり。遅かったな」
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