さよならの本当の理由ひとつの街を襲った、大きな事件だった。
燃え上がる建物、瓦礫に埋もれる武器庫、どこからともなく漂う血と火薬の匂い。
耳をつんざく爆発音に混じって、誰かの叫び声と断末魔の声が響き渡る。
空は灰色の煙に覆われ、どこを見渡しても死と暴力の匂いしかしなかった。
その混乱の最中、一人の少年が銃を手に取る。
未熟ながらもその瞳はまっすぐで、折れそうにない強い意志を宿していた。
「俺も戦える」と口にし、戦場に立とうとするその姿に、ジャックは歯を嚙み締めた。
(……違う)
俺は、こんなことをさせるために銃を教えたわけじゃない。
ただ純粋に、興味を向けてくれたその気持ちに応えたかった。──それだけだった。
だが、今のあいつには何を言っても無駄だった。駄目だと叫んでも、その手を放すことはないだろう。
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