胎児の夢胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
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誰かが泣いている。ぼんやりとした意識の中、少年は隣を見た。そこにいる少女の顔をした化け物は、楽し気に笑いながら哭いていた。どこかで見たような顔で、しかし見覚えのない姿でいるその怪物に手を伸ばし、身体を覆っているふんわりとした羽毛に触れる。とくんとくんとその奥に流れる血潮を手の平に感じながら、少年はそれをよく聞こうと耳を押し付けた。自分がなんだったのか、彼女がなんだったのかもまだよく思い出せないので、ひとまず目を閉じてその音に耳を傾ける。少女の号哭はまだ響いていた。
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化け物は笑っている。笑って笑って、そうしながら町の中を練り歩いていた。人の目を惹きつけ狂わせて、パレードのように追従する人々を増やしながら、それは四本の脚で歩いている。
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