「君とは違って私はもう年ですからね」と前置きした瞬間、買い物カートにイチゴのパックを放り込んだ七海はフルーツコーナーをあとにして野菜コーナーに直進した。
「油ものと一緒に食べるサンチュ、おいしいんですよ」そういってきょろきょろと葉物野菜を見渡し、お目当ての緑色の葉っぱを手に取る。「すごい、悠仁くん。ここサンチュがパックに入ってます」と感動した様子で10枚セットのソレをポイポイ三個ほどカートに放りこみ、もやしコーナーで腕を組む。
「豆つきの方が絶対美味しいですよね」そう言って悠仁の意見など聞く前に選んで放り込む姿は真剣である。本人いわく、すでに焼肉は始まっているらしい。
そんなこんなでエリンギを買い、キャベツを買い、キムチを購入してやきそばをポンと中に入れ、あれよあれよと海鮮コーナーにきてまた七海は止まった。ちなみにここまで悠仁の発した言葉は『あ、うん』のみである。それはいいとして。
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