温和そうな顔つきでいてその内側に誰よりも狡猾な内面を持つ男たちが穏やかそうに談笑を楽しむテーブル。一目見ただけでイタリア製だと分かるスーツやオーダーメイドのシルクシャツ、飴色の靴は薄暗い照明の中でもキラキラと光りタイピンに納まる小ぶりの宝石は値段相応の輝きを見せつけている。
ここに集まる理由は交渉でもなければ接待でもない。誰もがみな、会話を楽しみにやってきているだけだ。このラウンジにいる間だけは世界有数の資産を持つ御曹司でもなく、古い時代から世襲を繰り返してきた芸能の人間でもなく、一世代で富を築き上げた社長でもない。誰もが平等に扱われる。
(あー、まんじゅう食べたい)
そんな社交場の中でひと際若く、見目麗しい男が一人。
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