青年は元素記号を唱える 反射で煌めく川は流れの早い部分だけが深く狭い。
魚釣りをするならそういう場所は適していない。泳いだり洗濯したりはもっぱら浅瀬もあり、流れも穏やかな下流だが、釣りをするなら上流だ。しかも隠れ場になる岩の多い、それでいて流れの和らいでいる場所。
隣で重力に逆らった髪を揺らしながら、うんちくを垂らす千空ちゃんの話に相槌を適当に返す。一度話始めたら止まらないので、半分しか聞いてないが話している千空ちゃんは気付いていない。どころか、知識を延々と披露し続けている。
「なぁんで、夏はこうも暑いの。夏の暑さ、冬の寒さだけは石化前の文明が恋しくなっちゃう」
「地軸の傾きで夏は太陽が一番高いところで長い時間地表を照らして温める、だから一番熱い」
3797