誰かのために本日の弓道部は黄色い声援が飛び交う異様な光景だった。原因は弓道部にいる助っ人、西遠寺彷徨の存在だ。
真っ直ぐに矢を放つ姿は凛々しさがある。寺の息子だからだろうか、和装が絵になるように似合うため、弓道用の衣装すら見事に着こなしてしまっている。上級生、下級生の女子達の視線は、全て彼が持って行ってしまっていたのだった。
「未夢ちゃん聞いた?弓道部の助っ人」
「今弓道部、凄いよ女子群がってて」
放課後、帰り間際にそんな話が友人達からされ、なんの事かと頭にハテナを浮かばせる未夢。
「見に行かない?行けば分かるから」
「賛成!」
「え、ちょっと」
友人達にグイグイ引っ張られて弓道部棟へ。原因が直ぐに判明した。スパン!と矢が中央を射抜く度に黄色い声援が湧き上がる。
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