この奇妙なる世界で愛の言葉を 奇妙なものだ。
悠久の時を生きる吸血鬼、ドラキュラ伯爵はかつてない新鮮さに人知れず心踊らせていた。
ある日突然放り込まれた、自分たちが元よりいた世界とは別のどこか。この珍妙な世界が何なのか、混沌の城を支配していたドラキュラですら答えは持っていない。
時代も場所も、なんなら世界の位相すら異なる者が集う謎の空間。慣れ親しんだ城と見慣れたハンターを見かける一方で、全く知らない場所で知らない一族が影も形もないヴァンパイアを追っている、不可思議な世界。
だが、悪くはない。
好奇心と、幾許かの情を乗せた視線の先には豪奢な長椅子。その上で、寄り添うように眠りこける人影が二つ。凭れるように、抱えるように。身を預けるように、護るように。
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