御堂筋翔の教室へ初めて訪れた時、石垣光太郎は柄にもなく緊張していた。
後輩の教室への出入りなど部を取りまとめる石垣にとっては日常茶飯事。部外の後輩たちまで『ちわ! ノブに用っすよね、呼びましょか?』と話しかけてくれるほど、気負うことのない行動だった。
だのに、御堂筋翔。一年で、デカいのに痩せ細っていて、入部したばかりの……。御堂筋に対してだけは、石垣はどうもいつものようにいられずにいた。
(いや、『いつものように』は求められてない、か……)
ついこの間のことだった。石垣は御堂筋を相手にエースの座を賭け勝負し、負けた。インターハイでの3日間完勝を提示した代わりに御堂筋が定めたルール。御堂筋を絶対として全てに従うこと、チームメイトはくん付けか番号で呼ぶこと。
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