【フィファ】告げた言葉のその先で※二部を越え、それからも少し未来のはなし。
告げた言葉のその先で
「僕は、おまえの、あなたのことが、好きだよ」
黒い布の裂け目のように細く輝く<大いなる厄災>。それは遠く、それよりも小さく煌めく星たちの光のほうが空を彩る、そんな夜だった。
ふとした会話の切れ目。フィガロとファウストの会話においては多々訪れる、空白の時間。
落ちた沈黙がいやな重さを持つことは少なくなった。回答、返答、告げたい言葉、それらを探すときもある。口に含んだ酒の美味さを舌の上で転がしながらただ味わうような、ふたりの時間を堪能するかのようなときもある。そんな沈黙。
いま、口から転がり出た言葉は、いま思いついたものではない。いつのころからかファウストの中にあって、形となって、相手に渡す機会を待っていたもの。
3903