機材のメンテナンスの関係で、シュミレーションが使えないとの連絡が入った。
それなら、軽く体を動かすトレーニングか、惰眠を貪るか、なかなか進まないレポートを進めるか…。
いくつか候補を上げた後、立香は部屋で読みかけになっていた本を読み進めることとした。
しかしながら、広げた本の文字を追いかけるには、集中力が足りないようで、数ページも進まない内に手が止まった。
立香は目元を軽く揉みこんで、腰かけていた椅子の背に凭れながらぼんやりと天井を見上げる。
「あー」と」無意味に声を発したところで、気力も戻ってはくれないが。
無機質で真っ白な天井を眺めることしばし…ふとそれを遮るかのように顔が現れた。
立香が何度も目を瞬く上で、金色の髪をさらりと流し、翠色の瞳を細めた相手はくすりと笑いを零す。
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