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    りな

    山椒魚

    DONE邦訳分冊版49巻の幕間の話。
    分冊版48巻で語られていた沈九から尊敬も感謝もされていなかった先代峰主とはどのような人物だったのか。なぜ名付けに『秋』が与えられて、それを受けねばならなかったのか、ぐるぐる考えているうちにできた話です。
    オリジナル設定入れまくりなので、何でも許せる方向けです。
    『秋』 清静峰の先代峰主はナマズに似た中年男だった。
     否。それは少し表現として間違っていたかもしれない。彼が本当に中年と呼ばれる年齢であったかどうかは、正確には定かではないのだ。
     仙師の見た目は金丹形成の時期と修為に因る。見た目のことでよく引き合いに出されるのが幻花宮の老宮主だが、実力者であることは間違いないにも拘わらず、誰の目にも明らかな老貌であるのは、俗欲にまみれた分だけ修為を損ねた為であろうというのが口にはせぬものの大方の見方であった。
     対して、清静峰先代の人となりは俗欲とは無縁であったため、これは結丹の時期が遅かったのだろうことが窺われた。
     金丹形成には身体的素養も大きく関係する為、当人がいくら努力しようが実を結ばないものは結ばない。仙門の師弟として昇山できる者は皆その素養ありと見做された者たちではあるが、それとて当人にとって希望の持てる時期に成果が得られるとは限らず、同輩が結丹を果たす中、焦り苦しんだ末に疲弊し、才無しと諦めてしまえばそこまでの話。そうやって幾人もの弟子達が下山していくのも仙門の倣いのひとつであった。
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    山椒魚

    DONE冰河は、それが当たり前の日常になってからは、師尊が起きる頃を見計らって朝食を準備したり出来るようになっていっただろうけれど、最初のうちは何よりも師の機嫌やら反応やらが気になってしまって側を離れられなかったんじゃないかなと。「この弟子に思うところがおありならば、すぐに口にしていただけるようその場にてお待ちせねば」くらいの気負いっぷりで。
    そんなことを思って書いた、まだ冰河の自信が薄かった頃の話です。
    早春 目を覚ました師は、しばらくぼんやりとしたお顔でこちらを眺めていらっしゃる。

     寝惚けているというよりも、記憶がうまく繋がらなくて緩慢に逡巡しているといった風情だ。
     はて?とでも言わんばかりに僅かに眉根を寄せ、斜め左上に瞳を動かした表情は、日頃の清廉風雅な面持ちとは相反した幼さをも感じさせる無防備なもので、無自覚な様子であるのがまた愛らしい。
     そう。師自身はお気付きではないようだが、ごくたまにこういった隙のある一瞬をお見せになるのが、この弟子としては嬉しいやら悩ましいやらトキメキが過ぎて具合悪くなるほどだけれど一周回って結局つまり嬉しいやら・・・・・・
     などと。
     無限ループしそうな気持ちにブレーキをかけつつも、思わず溢れてしまった笑みをそのままに俺が朝の挨拶をすると、師尊も返してくださろうと薄く唇を開き、そこで一瞬、眉を顰めた。
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    onionion8

    DOODLE今さらまた一人先生の誕生日ネタにたぬきを添えた胡乱な話。富Kのつもりで書いてはいるけどCP要素はあんまりない。
     実家に戻った富永は、忙しいなかでの眠りのうちによく夢を見るようになった。それは今さら国試に落ちる夢ではなく、どこか異世界を旅するような夢でもない。何度も繰り返し見る夢は、懐かしい、T村で過ごした日々だった。吹雪と血。違法な医療行為と警察沙汰。はじまりは凄惨なものであったのに、気がつけば穏やかな暮らしがそこにあった。
     同居を許された診療所。同居人となったその主。起きている時にも時おり思い出しはするが、夢ではいっそう鮮やかに、あの頃のKが目の前に現れる。それは白衣姿であることも、マント姿のこともあるが、そのどちらでもなく、くつろいだ部屋着であることも多い。
     富永がKとともに過ごした八年間を振り返ると、やはり医者としての姿が浮かぶので、不思議といえば不思議だった。どうしてこうも、何でもない日の何者でもない彼を夢に見るのだろう。まだ預かった子も昔の執事も看護師だっていない頃、ふたりきりだった診療所。寝起きのKがぺたぺたと、スリッパを鳴らして歩く姿。あるいは風呂から上がって出てきたKが、濡れた髪をタオルで巻いている姿。
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