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    ティア

    おわり

    SPUR MEミーティア3️⃣後編-9
     この五年の空白、時間を巻き戻すことが出来ないなら、オレはその空白を全て知りたかった。男の金魚ちゃんが、どんな気持ちで二人の母親役をやって来たのか? アスターとサミュエルがそんな金魚ちゃんとどう過ごしてきたのか? 知りたいことを口にすれば、きっと止まんねぇぐらい聞きたいことで溢れそうだ。
     そんで金魚ちゃんは、そーいうオレの気持ちが全く分からない。この輪の中に踏み込みたいオレをやんわりと避ける金魚ちゃんに、頬を膨らませて抗議したくなる。まぁ、そんな事したって「なんなんだいその顔は!?」とかなんとか、怒るんだろうな。

     まぁ、こんな事をずっと考えて二の足を踏んでても仕方ねぇ……面倒で暗い気持ちは切り替えて、着ていたシャツ、ポイッと投げて、波打ち際でパチャパチャ遊んでたアスターとサミュエルの横に飛び込んで、魔力を込めて久しぶりに人魚の姿に戻った。尾鰭を使って、二人に海水ぶっかければ、目をキラキラさせてオレのこと見てるサミュエルと違って、始めはおんなじ表情でオレのこと見てたクセに、アスターの方は「ハッ!」っとなって「とうさんが人魚の姿になった方がきっとすごいもん」とか言ってくんの。きっと……って、見たことねぇのに言ってんのかよ。
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    おわり

    SPUR MEミーティア3️⃣後編-3 『憤怒』
     四年前、陽光の国。
     二人が生まれて半年頃、ボクの養父であるイヴァーノと、その妻であるアズールのお母様が、小さな二人にプレゼントしたベッドメリーが急に壊れるという小さな事件が頻発するようになった。
     今日壊れたベッドメリーは、購入して一週間程度。天井から吊り下げたそれを外して壊れた箇所を確認すると、モーターが焼ききれていたり、回転する箇所に当たるプラスチックが溶けていて、購入したベビーグッズの店主には疲労摩擦を起こしている。一体、購入一週間でどんな使い方をしたらこうなるんだと呆れられたらしい。
     ベッドメリーは二人のお気に入りで、これがなければ不機嫌になって酷く泣き出すこともある。それを知っているイヴァーノが「修理可能か調べてもらって、無理なら新しいのを買ってくるよ」と、そう言って壊れたベッドメリーを手に購入店に向かう彼を何度見送ったことか……そして、数時間後には、修理不可と言われ新しいベッドメリーの箱を抱えたイヴァーノが、「アスター、サミュエルお待ち遠さま」と帰ってくるだろう。それを申し訳なく思いながら部屋に戻れば、ボクはその一連の原因を目の当たりにすることとなった。
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