公
白流 龍
DONEタル鍾(独白、少し蛇鍾):こんなに苦しいなんて鍾離は今、この六千年の間でほぼ初めての感覚に溺れ戸惑っていた。
はぁ、と、特段長距離を走ったわけでもないのに息が乱れるのは勝手に心臓が激しく脈を打つから
「これは…どうしたものか…」
片手で顔を覆い今しがた閉めたドアにもたれ掛かる。
つい先刻までタルタリヤと食事をしていた。とても楽しく。
これが厄介だった。『楽しい』のだ。ただひたすらに。
毎日でも良い。苦痛がないのだ。
―馴染みすぎ、だな。
人間は儚い。精々百年。だからこそ必死に生きて、美しい。
憧れていた。望んで神の座を降りたのだ。しかしいくら神の座を降りたとしても、寿命は続くこの身体。
それを、忘れては行けないのだ。それなのに。
そもそもとっくに気付けた筈だった。そこから切り離すなど容易い筈だった。誤算だったのは、鍾離自身がその感情の名前を知らなかった事。
1813はぁ、と、特段長距離を走ったわけでもないのに息が乱れるのは勝手に心臓が激しく脈を打つから
「これは…どうしたものか…」
片手で顔を覆い今しがた閉めたドアにもたれ掛かる。
つい先刻までタルタリヤと食事をしていた。とても楽しく。
これが厄介だった。『楽しい』のだ。ただひたすらに。
毎日でも良い。苦痛がないのだ。
―馴染みすぎ、だな。
人間は儚い。精々百年。だからこそ必死に生きて、美しい。
憧れていた。望んで神の座を降りたのだ。しかしいくら神の座を降りたとしても、寿命は続くこの身体。
それを、忘れては行けないのだ。それなのに。
そもそもとっくに気付けた筈だった。そこから切り離すなど容易い筈だった。誤算だったのは、鍾離自身がその感情の名前を知らなかった事。
白流 龍
DONEタル鍾:ご飯を食べようさてどうしたものか、と思案する。
「何をしている公子殿。冷めてしまっては勿体ないぞそれに箸も使わんと上手くならないだろう」
全くどうして羨ましい。こんなに幸せそうに物を食べるなんて。そんなことはさておいて、とても気になることが一つ。問いただそうと思っている。
「えタルタリヤって鍾離とご飯食べてるのかいいないいなおれも行きたいぞ」――蛍とパイモンに質問した時だった。ただ俺は、他に誰と飯に行ってるのかと思って聞いただけだった。…ちょっとした嫉妬心だ。でもそれは違ったようで「そんな岩王帝君と食事だなんて畏れ多いです」なんて甘雨ちゃんには言われたくらいにして。
そう、モラクス、岩神、岩王帝君、そんな仰々しい名前で呼ばれるようなこの自称凡人が、俺なんかと飯を食っている。――まぁそんなヤツに淡い恋心持ってるヤツもどうにかしてるけど――なんて心で苦笑う。
1115「何をしている公子殿。冷めてしまっては勿体ないぞそれに箸も使わんと上手くならないだろう」
全くどうして羨ましい。こんなに幸せそうに物を食べるなんて。そんなことはさておいて、とても気になることが一つ。問いただそうと思っている。
「えタルタリヤって鍾離とご飯食べてるのかいいないいなおれも行きたいぞ」――蛍とパイモンに質問した時だった。ただ俺は、他に誰と飯に行ってるのかと思って聞いただけだった。…ちょっとした嫉妬心だ。でもそれは違ったようで「そんな岩王帝君と食事だなんて畏れ多いです」なんて甘雨ちゃんには言われたくらいにして。
そう、モラクス、岩神、岩王帝君、そんな仰々しい名前で呼ばれるようなこの自称凡人が、俺なんかと飯を食っている。――まぁそんなヤツに淡い恋心持ってるヤツもどうにかしてるけど――なんて心で苦笑う。
fshy_zatsu
DONEハイエナゴリラ様のタル鍾小説、『徒歩圏内』のFAをたいへん勝手ながら描かせていただきました。年齢制限を守って全人類読んでください、後生です。何か問題がありましたらすぐに削除させていただきます。
san_jiga
DONE07/11タル鍾webオンリーで掲載した漫画の英語版です。This is the ENG ver of the manga released at a Japanese event.
#tartali #公鍾 #タル鍾
pass: 18歳以上ですか? Are you 18↑?(yes/no) 15
清(せい)
DONEタル鍾かっこいいタルも先生も居ない
甘々と水の結晶「可愛いね」
「………。」
彼は事ある毎に 口癖のように言う。
かわいい などと形容され、初めは大人の男に向かって
それは些かおかしなものではないかと抗議をしてみたが、
「かわいいんだから仕方ない 」などと理解し難い理由で一蹴された、
湯浴みのあと髪を乾かす時、
自分の髪なのに俺には一切手を触れさせず
俺にやらせて と言って
乾かし、櫛でとかして、と甲斐甲斐しく世話を焼いては
「綺麗だね」「いい香りがする」などと成人男性に対して使うには到底似つかわしくない言葉を散々垂れ流す。
そうして 、「かわいいね」と言われながら寄り添って眠るのが休日の日課になりつつあるのが自分でも可笑しくて笑える。
食事中にひしひしと感じる視線にももはや慣れてしまった。
2792「………。」
彼は事ある毎に 口癖のように言う。
かわいい などと形容され、初めは大人の男に向かって
それは些かおかしなものではないかと抗議をしてみたが、
「かわいいんだから仕方ない 」などと理解し難い理由で一蹴された、
湯浴みのあと髪を乾かす時、
自分の髪なのに俺には一切手を触れさせず
俺にやらせて と言って
乾かし、櫛でとかして、と甲斐甲斐しく世話を焼いては
「綺麗だね」「いい香りがする」などと成人男性に対して使うには到底似つかわしくない言葉を散々垂れ流す。
そうして 、「かわいいね」と言われながら寄り添って眠るのが休日の日課になりつつあるのが自分でも可笑しくて笑える。
食事中にひしひしと感じる視線にももはや慣れてしまった。
清(せい)
DONEタル鍾ワンドロワンライ 「手紙」のときに書いたものです。手紙文字を書き連ねては、丸めて捨てた。
また別の単語を並べて、結局くしゃくしゃと丸めて、捨てた。
何枚無駄にしただろう。
紙は貴重で、そう簡単にくしゃくしゃと丸めて捨てれるものではないのだが、最近凡人になったばかりのその男は、ものは使えばなくなるという感覚がいまいち掴めていない。
目の前の紙きれに向いていた視線が宙に向かう。
何かを見ている訳では無い。
その頭の中ではたくさんの単語が引き出しから取り出され、これは違う、これも違うと、言葉が散らかっていた。
あの明るい髪の恋人に
何かを伝えたい
そう思ったのに。
この気持ちはなんだろうと、筆を持った手は止まったまま。
あいしてる? そうだけど、何かが違う。
ありがとう? …それだけでもない。
1188また別の単語を並べて、結局くしゃくしゃと丸めて、捨てた。
何枚無駄にしただろう。
紙は貴重で、そう簡単にくしゃくしゃと丸めて捨てれるものではないのだが、最近凡人になったばかりのその男は、ものは使えばなくなるという感覚がいまいち掴めていない。
目の前の紙きれに向いていた視線が宙に向かう。
何かを見ている訳では無い。
その頭の中ではたくさんの単語が引き出しから取り出され、これは違う、これも違うと、言葉が散らかっていた。
あの明るい髪の恋人に
何かを伝えたい
そう思ったのに。
この気持ちはなんだろうと、筆を持った手は止まったまま。
あいしてる? そうだけど、何かが違う。
ありがとう? …それだけでもない。
drsakosako
TRAINING火傷の感触タル鍾 ややねっちょり
交合、交接、交尾。交わると称するそれが繁殖を主とする行為ではない事を知ったのは、どれだけ昔のことだったろうか。情を交わすとはよく言ったものである。髪を指で梳き、ぬるい手の甲で唇の温度を確かめて、少しだけ伏せた瞼の奥から水底のような青藍が見据えてくる。肉付きの良くなった魂が、じわりと熱を持つ。
「上の空に見える」
「ん、……」
タルタリヤの手指が鍾離の輪郭をつ、と撫ぜる。少しだけ緊張に強張っているようにも見えたそれに頬を擦り寄せると、鍾離のなめらかな髪の一房が褥に広がった。
「余裕があるな」
「理性を取るなんて、らしくないかな」
鍾離がほくそ笑んで煽ってみせても、タルタリヤは目の色を変えることはなかった。それどころか、白布に散った鍾離の髪に、身を屈めて口を付ける振る舞いまですると来た。
578「上の空に見える」
「ん、……」
タルタリヤの手指が鍾離の輪郭をつ、と撫ぜる。少しだけ緊張に強張っているようにも見えたそれに頬を擦り寄せると、鍾離のなめらかな髪の一房が褥に広がった。
「余裕があるな」
「理性を取るなんて、らしくないかな」
鍾離がほくそ笑んで煽ってみせても、タルタリヤは目の色を変えることはなかった。それどころか、白布に散った鍾離の髪に、身を屈めて口を付ける振る舞いまですると来た。
清(せい)
DONE⚠️死ネタ好みが分かれるカテゴリなのでご注意を。
タル鍾だけどしょ先生しか出ません。
独白のようなもの。
あれはいつの日のことだったか
もうずっと前のことのようにも
つい先日のことのようにも感じる。
月日が流れるのは早い。
流れる時間は同じなはずなのに、
いつだって自分は世界に取り残されるのだと、
そう感じる。
喧嘩をした。
らしくもなく、彼が声を荒らげたのは
俺が別れを申し込んだからだ。
何人も友を見送ってきた。
だからこそ、彼を見送れる気がしなかった。
お前が旧友になってしまう日が来るのがこわい
そう伝えると彼は
驚いたような顔をした後、
寂しげに、安堵のため息をついた。
「そう、じゃあ俺にも分けてよ。
先生ほどじゃないかもしれないけど
普通の人間よりは長く生きられるようにできるでしょう?」
「不可能ではないが、いいのか?」
「もちろん。
1068もうずっと前のことのようにも
つい先日のことのようにも感じる。
月日が流れるのは早い。
流れる時間は同じなはずなのに、
いつだって自分は世界に取り残されるのだと、
そう感じる。
喧嘩をした。
らしくもなく、彼が声を荒らげたのは
俺が別れを申し込んだからだ。
何人も友を見送ってきた。
だからこそ、彼を見送れる気がしなかった。
お前が旧友になってしまう日が来るのがこわい
そう伝えると彼は
驚いたような顔をした後、
寂しげに、安堵のため息をついた。
「そう、じゃあ俺にも分けてよ。
先生ほどじゃないかもしれないけど
普通の人間よりは長く生きられるようにできるでしょう?」
「不可能ではないが、いいのか?」
「もちろん。
drsakosako
TRAINING紙一重の交歓タル鍾
戯れに重ねた刃がぶつかり合う音は、身体の暗い奥底でたゆたう熾火へ注がれる揮発油のようなものだった。児戯であるはずの剣戟の一つ一つが、退屈な策謀でなまくらになりかけた身体を乱暴に叩き起こし、つまらない謀略で喜悦を忘れた精神を目覚めさせていく。
此方が半歩踏み出せば、彼方が半歩引いて、薙ぐ。彼方が強烈に数歩踏み込めば、此方とて引いてなぞおれない。激流の刃のかけらを服に染ませるタルタリヤは、得も言われぬ興奮を背筋に走らせる。散る水の花びらの奥で、梔子色に爛々と輝く彼の瞳があまりにも熱を帯びていたから。
「――……全く、見惚れちゃうね」
槍の穂先に水の刃を砕かれるやいなや、そのまま弾かれるがままに後ろへと飛び退く。さざめく刃を数千の飛沫に変えてから矢の形へとこごらせて、背負った弓を握り、番える。水の刃を砕かれて、ぐ、と限界まで引いた弦から空気を裂く弓矢が放たれるまでは、一秒も無かった。
1025此方が半歩踏み出せば、彼方が半歩引いて、薙ぐ。彼方が強烈に数歩踏み込めば、此方とて引いてなぞおれない。激流の刃のかけらを服に染ませるタルタリヤは、得も言われぬ興奮を背筋に走らせる。散る水の花びらの奥で、梔子色に爛々と輝く彼の瞳があまりにも熱を帯びていたから。
「――……全く、見惚れちゃうね」
槍の穂先に水の刃を砕かれるやいなや、そのまま弾かれるがままに後ろへと飛び退く。さざめく刃を数千の飛沫に変えてから矢の形へとこごらせて、背負った弓を握り、番える。水の刃を砕かれて、ぐ、と限界まで引いた弦から空気を裂く弓矢が放たれるまでは、一秒も無かった。
drsakosako
TRAININGあやまちの定義タル鍾
普段は食事処で酒を舐め、見目麗しさと簡素さにとらわれず肴を愉しむものだが、何方かの居宅で飲み食いするのも趣があって良い。
逸品が手に入ったんだ、一人で空けるには勿体なくて。先生もどう?
そんなタルタリヤの誘いに、鍾離は二つ返事で快諾した。少しくらいは表情をけぶらせるかとも思ったが、杞憂でしかなかった。
幾つかの小さな椀に盛られた肴は、此処に来るまでの道中に通り過ぎる飲食店で買ったものだ。シンプルな椀や皿に盛られた肴を小器用につまみ、口に運ぶ。火酒で唇を湿らせてから少しだけ口に含み、舌の上で味を確かめてから嚥下する。無駄のない鍾離の所作の一つ一つは、己の飲み食いする手が止まってしまう程に美しかった。僅かに伏せた瞼の奥にとろけそうな梔子色が潤んでいるのを知ったのは、一つの卓を共にするようになって三度目くらいの頃だったように思う。
1860逸品が手に入ったんだ、一人で空けるには勿体なくて。先生もどう?
そんなタルタリヤの誘いに、鍾離は二つ返事で快諾した。少しくらいは表情をけぶらせるかとも思ったが、杞憂でしかなかった。
幾つかの小さな椀に盛られた肴は、此処に来るまでの道中に通り過ぎる飲食店で買ったものだ。シンプルな椀や皿に盛られた肴を小器用につまみ、口に運ぶ。火酒で唇を湿らせてから少しだけ口に含み、舌の上で味を確かめてから嚥下する。無駄のない鍾離の所作の一つ一つは、己の飲み食いする手が止まってしまう程に美しかった。僅かに伏せた瞼の奥にとろけそうな梔子色が潤んでいるのを知ったのは、一つの卓を共にするようになって三度目くらいの頃だったように思う。