出島
kurage_honmaru
DONEはんなまパフェが可愛くて羨ましい!!弊デアが行った出島ではコウモリパフェ(ヤヤウキカンパニー協賛)が売られていたし、食べることを考えずに勢いで作ったカマソッソとぐだがすごい顔色になっていたんだ(妄想)
しゅうりり
DOODLE綻び越高になるえつ上官と高崎の話。
○サザンカ
江戸時代に長崎の出島からオランダを経由してヨーロッパに広まり、和名のサザンカがそのまま学名「Camellia sasanqua」として使われている
本当に美しいのは、あなたの方。 1655
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TRAINING8/27ワンライお題【きらきら・歯ブラシ】
出島の夜景を見る狡噛さんと宜野座さんが、征陸さんの昔話をするお話です。
光の連なり 歯みがきを終えてリビングに行くと、ベランダに続くガラス窓が開いていた。俺はまた狡噛が煙草を吸いに出たのかと思い、蒸し暑い風が吹き込んで来るその窓をくぐる。するとやはり彼はスピネルを咥え、空になったハイネケンの瓶ビールを足元に置いていた。
狡噛が見つめているのは高層ビル群のきらきらとした夜景と、その裏側に位置する猥雑な地域のどぎつい色味のネオンだった。彼はそれを等しく愛しているように思えて、俺はそんな恋人の仕草に安心感を覚えた。
狡噛は等しく人を愛する。博愛主義者と言ってもいい。赤の他人のために大切な全てを捨てられる人間なのだ、彼は。槙島に出会う前の彼を知っている者ならきっとそれを理解してくれると思うが、あの男に出会ってしまった後の彼しか知らない者なら、それも難しいかもしれない。何せ狡噛は長くあの犯罪者に執着していたので、そのせいで自分が身につけてきた者全てを捨ててしまっていたので。
2815狡噛が見つめているのは高層ビル群のきらきらとした夜景と、その裏側に位置する猥雑な地域のどぎつい色味のネオンだった。彼はそれを等しく愛しているように思えて、俺はそんな恋人の仕草に安心感を覚えた。
狡噛は等しく人を愛する。博愛主義者と言ってもいい。赤の他人のために大切な全てを捨てられる人間なのだ、彼は。槙島に出会う前の彼を知っている者ならきっとそれを理解してくれると思うが、あの男に出会ってしまった後の彼しか知らない者なら、それも難しいかもしれない。何せ狡噛は長くあの犯罪者に執着していたので、そのせいで自分が身につけてきた者全てを捨ててしまっていたので。
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TRAINING7/30ワンライお題【幽霊・筋肉】
出島のマーケットで古い幽霊映画の記録媒体を買ってきた狡噛さんが宜野座さんと一緒に見たり、ビールを飲んだり、SEAUnで撮った写真を見ながら昔の話をしたりするお話です。
夜に浮かぶもの 狡噛はどんな映画でも見るが、今日彼が出島のマーケットで買った記録媒体は、大昔のアメリカの幽霊映画だった。夏だから涼しくなるものを見よう、とでも言うのだろうか? 俺はその単純な考えにまず食傷気味だったのだけれど、彼はこれは貴重な映画なんだ、と言って聞かなかった。見ると呪われる、伝説の映画らしい。かくして俺は一時間と少し、興味も持っていないおどろおどろしいそれを見るわけになり、やけっぱちになってハイネケンのスペシャルダークを数本飲んだ。アルコール度数が七度のそれは少し足をふらふらさせて、映画の中と現実を曖昧にさせた気がする。まぁ、それなりに怖かったのだ、結論から言うと。
「どうだった?」
「幽霊の泣き声が不気味だったかな。探偵が出てきたのはアメリカ映画ぽかった。ちゃんと伏線が張ってあって面白かったよ、割り合い」
2695「どうだった?」
「幽霊の泣き声が不気味だったかな。探偵が出てきたのはアメリカ映画ぽかった。ちゃんと伏線が張ってあって面白かったよ、割り合い」
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TRAINING7/23ワンライお題【ボードゲーム・海】
出島のマーケットでバックギャモンを買ってきた狡噛さんが宜野座さんに映画の話をしたり、ビールを飲んだり、一緒に水風呂に入ったりするお話です。先日アップしたナイトプールのお話と少し続いています。
海に沈む彗星 狡噛は出島のマーケットでなんでも買ってくる。それは彼の趣味である古書から始まり、珍しい皿であったり(大概が貧しさ所以に金持ちが手放した品だった)、持ち主が死んでしまった小さな祈りの像であったりしたが、今回は古びたボードゲームだった。見慣れないそれに俺が一体何だと興味を惹かれていると、狡噛は「バックギャモンだよ」とどこかニヒリスティックに休日の昼間から笑った。
赤と黒の駒がある、サイコロとダブリングキューブ、ダイスキャップがついた四角いボード。それが世界最古にして、今も最も難しいと言われるゲームらしい。彼は将棋や囲碁、チェスなどにも親しんでいたから、嬉々として披露されても大した驚きはなかった。ただ、それに自分がつき合わされるのだとしたら、どうか御免願いたかったが。
2687赤と黒の駒がある、サイコロとダブリングキューブ、ダイスキャップがついた四角いボード。それが世界最古にして、今も最も難しいと言われるゲームらしい。彼は将棋や囲碁、チェスなどにも親しんでいたから、嬉々として披露されても大した驚きはなかった。ただ、それに自分がつき合わされるのだとしたら、どうか御免願いたかったが。
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TRAININGお題 3時【中途覚醒・冷たい・人の気も知らず】狡噛さんの部屋でセックスをした後夜中に起きてしまった宜野座さんが、ベッドを抜け出し炭酸水を飲みながら出島の夜景を見るお話です。
36種の時間のワードパレットをお借りしました。
ネオンと炭酸水 揺らぐ浮遊感の中で目が覚めた。照明が落とされた真っ白な天井から目をそらし、辺りを見回すと、眠り入る前と同じ景色が丑三つ時をいくらか過ぎた暗がりの中広がっているのが分かる。
そこは自室と比べたら、ずいぶんと殺風景な部屋だった。黴の生えたような古い文庫本や新書、図録などがそこかしこに積み上げられ、今時手に入れるのも難しい旧式のレコードプレーヤーなんかに、縁が朽ちかけた、銀のスパンコールのドレスを着た、黒人の女たちが笑う紙製のジャケットが立てかけられている。トレーニング用の器具には昨日散々楽しんだ時の黒のワイシャツがかかっていて、あぁ、クリーニング用のドローンを使うのを忘れたな、と俺はぼんやりと思った。
3565そこは自室と比べたら、ずいぶんと殺風景な部屋だった。黴の生えたような古い文庫本や新書、図録などがそこかしこに積み上げられ、今時手に入れるのも難しい旧式のレコードプレーヤーなんかに、縁が朽ちかけた、銀のスパンコールのドレスを着た、黒人の女たちが笑う紙製のジャケットが立てかけられている。トレーニング用の器具には昨日散々楽しんだ時の黒のワイシャツがかかっていて、あぁ、クリーニング用のドローンを使うのを忘れたな、と俺はぼんやりと思った。
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TRAINING6/25ワンライお題【父・夏至】
出島のマーケットに買い出しに行き夏至祭の花を貰う狡噛さんが、宜野座さんにどうやってプロポーズするか悩むお話です。宜野座さんは出てきませんが甘いです。
夢の花 移民が多く住む出島では、夏至祭が盛大に行われる。色とりどりの花を冠にした少女が走り回り、苺やベリーを大声で売る商人が身振り手振りで客引きをし、古い言語で歌われる恋の歌がラジカセから流れ、花の葉についた朝露を老婆たちが健康を願って孫たちに含ませる。もちろん民族によって夏至祭は多くの種類に分けられるから、さまざまな国家から脱出した人間が集まるここでは、全てが統一されているわけではない。現に夏至祭が行われる日もばらばらだ。二十一日だったり、二十六日までだったり、そもそもが移動祝祭日だったり。冬至に祝う民族もいる。それでも共通して一つだけ残っているものがある。というか、日本人にも、特に若い女たちの間で広まりつつある風習があった。それは夏至祭のイブに、枕の下にセイヨウオトギリの黄色い花を敷いて眠るというものだ。俺がそれを聞いたのは、太陽が天に昇る頃のマーケットの果物屋で、腹の出っぱった親父から林檎やら何やらを買い、おまけだと黄色い花をもらった時だった。
2129時緒🍴自家通販実施中
TRAINING6/18ワンライお題【謝る・紫陽花】
出島のマーケットで紫陽花を買って過去の話とこれからの話をする甘い狡宜です。
そこに咲く花は 雨が降って来たのは、狡噛と出島のマーケットに行ってしばらく経った時のことだった。俺たちはその時ちょうどベランダに飾る花を探していて、やれ百合がいいだの、薔薇が無難だの、香りを楽しむならラベンダーだの、やはりここは紫陽花だのと、花屋の店先で話し込んでいた。店番をする老婆は、にこにこと笑いながら俺たちにどれもいいですよと、拙い日本語で言った。私の祖国では沖縄のデイゴに似た花が咲くんですよ、とも。百年ほど前に日本でも流行歌になったそれにもあった、咲けば咲くほど台風が強く来るとの迷信がある花。それに俺は惹かれて、けれどこの小さな店にそれはなく、世話も難しいことから俺は記憶の中のあの花を思い出していた。
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TRAINING出島を歩いていて結婚式に出会う狡宜です。言えないよ、一言じゃ済まないから 言葉にしたら消えてしまうようなものについて、たまに考えることがある。愛しているって言葉は軽薄になるが消えない。消えてしまうのは、もっと些細で、小さくて、壊れそうなものだ。そして狡噛が一番大切にしているもの。彼が俺にどうにかしてそれをくれたのは学生時代のことで、初めてキスをした日のことだった。ギノ、愛してる、どこにも行かないでくれ。彼はそう俺にお願いをして、何度も、何度もキスをした。俺はそれにうなずいた。別に行くところなんてなかったし、彼のそばが一番心地よい気がした。けれど違ったのだ、彼はひとところにとどまる人間じゃなかった。彼は居心地の良さを求めてどこにでも行く人間だった。だから俺がいなくなることはなくても、彼がいなくなることはあった。それが彼が日本を飛び出た理由なんだろう。人間関係を全て捨てて、そしてそこで新しく何かを築き上げて、それすらすぐに捨ててしまう。言葉にしたら消えてしまうようなものについて考えると、彼はそれをよく使うことが分かった。でも俺はそれを使えない。一言じゃ済まないから。一生どこにも行かないくでくれ、そばにいてくれ、俺を愛してくれ、そんなふうに言葉が止まらなくなるから。
2147時緒🍴自家通販実施中
TRAINING出島で買い物をしながら賭け事をする狡宜。800文字チャレンジ46日目。
小さな賭け事(熱いのは君のせい) 次に曲がる道で、最初に会うのが男だったら俺の勝ち、女だったらギノの勝ち。勝ったらなんでも言うことを聞くこと。そんなくだらない約束事をして、俺たちは出島の街を歩いた。街は混雑していた。祭りが近いのもあって、買い物に出る家族が多いのだ。俺たちははぐれそうになりながらも手を繋がず歩く。俺が勝ったらまずは手を繋いでもらおうか、そう思った時、俺たちは角を曲がった。そしてまず目に入って来たのは、これこれはかわいらしく頭にリボンをつけた幼い少女だった。つまり、俺は賭けに負けたのである。
「あー、負けた。なんでも言ってくれ、ギノ」
「何にしようか。とりあえず今日の夕飯の買い出しを済ませよう。それから考えることにするよ」
930「あー、負けた。なんでも言ってくれ、ギノ」
「何にしようか。とりあえず今日の夕飯の買い出しを済ませよう。それから考えることにするよ」
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TRAINING夏の終わりの出島のお話。800文字チャレンジ36日目。
夏が終わる声(ひぐらしの鳴き声) 雑賀先生が隠居していた森の中には、様々な生物がいた。夏の終わりには夕涼みに誘われて、狡噛と訪ねることもあった。そんな日はいつもひぐらしが鳴いていて、俺は幼い頃に祖母に手を引かれて、見知らぬ人の中を通ったことを思い出す。あれは祭りか何かだったのだろうか? 記憶はあやふやで果たしてそれに行ったことすら曖昧だ。だが、あの鳴き声はいつも思い出すのだ、夏が終わる頃、もう楽しい日々も終わると、俺に教えるように。
出島でもひぐらしは鳴いた。俺はそれに懐かしい思い出を引き出されそうになって、改めてそんなんではいけないと思い直した。優しい思い出で自分を慰めてもしょうがない、今は狡噛がいる、そう思うのだ。しかし今日は何故か狡噛が俺を誘って出島のマーケットに任務帰りに寄った。なんの記念日でもないというのに花城の許可まで取って。
922出島でもひぐらしは鳴いた。俺はそれに懐かしい思い出を引き出されそうになって、改めてそんなんではいけないと思い直した。優しい思い出で自分を慰めてもしょうがない、今は狡噛がいる、そう思うのだ。しかし今日は何故か狡噛が俺を誘って出島のマーケットに任務帰りに寄った。なんの記念日でもないというのに花城の許可まで取って。
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TRAININGもしも公安局に入ってなかったらと空想する話。出島のマーケットに行きます。
800文字チャレンジ34日目。
カゴの鳥(唄を忘れたカナリヤ) もし何にも知ろうとしないで生きていたら、きっと狡噛には出会わなかった。もし公安局を目指していなかったら、きっと狡噛には出会わなかった。もし父を憎んでいなかったら、きっと狡噛には出会わなかった。そんなもしもやきっとを繰り返して出会った狡噛は、今も俺の隣にいる。
公安局に入っていなかったら、と考えることがある。だとすればいくつか資格は取っていたから、そっちに行ったのだろうか? 動物に携わる仕事や、植物に関係する仕事。そうしたらきっと事件に巻き込まれない限り、俺は公安局の狡噛慎也とは出会わないだろう。いや、狡噛自体、俺と出会わなかったら、公安局なんて目指さず、きっと学問の道を進んで教員にでもなってたのじゃないか。
976公安局に入っていなかったら、と考えることがある。だとすればいくつか資格は取っていたから、そっちに行ったのだろうか? 動物に携わる仕事や、植物に関係する仕事。そうしたらきっと事件に巻き込まれない限り、俺は公安局の狡噛慎也とは出会わないだろう。いや、狡噛自体、俺と出会わなかったら、公安局なんて目指さず、きっと学問の道を進んで教員にでもなってたのじゃないか。
時緒🍴自家通販実施中
TRAINING出島での張り込みをする狡噛さんとそれを出迎える宜野座さん。800文字チャレンジ27日目。
冷たい頰(浴室へ) 痩せた頬に触れると、そこは思ったよりもずっと冷たかった。俺はそれを迎え入れるように包み込み、そうしてしばらくの間さすって、鼻をこすりつけてキスをする。すると彼はそれを喜んで何度も俺にひげの生えかけたそこを押し付けて、優しいキスをねだる。俺たちは玄関で、もしかしたら誰かが見ているかもしれないそこでそんな馬鹿なことをする。愛情を確かめるようなことをする。人前に出て、確かめるようなことをする。けれど確かめたところで、愛情は去ってはいかないのだろうか? 俺には分からない。ずっと逃げられた人々しか見ていなかったから、幸せなそれが想像出来ないのだ。でも、彼は丁寧に頬をこすりつける。そして俺はキスをする。その繰り返しが、俺たちのおかえりの挨拶だった。
833時緒🍴自家通販実施中
TRAINING事件終わりに出島に行って買い物をする話。800文字チャレンジ26日目。
花盗人(愛情) 花泥棒がその風流さで罪を許された狂言があるように、愛してはいけない人を愛してもその切実さで許されることがある。俺たちが担当したのは、そんな事件だった。マフィアの妻を愛した海外調整局の男がキーとなったこの事件は、男の誠実さによって解決した。詳細は省くが、生真面目な愛情が誰かを救うこともあるということだ。
俺たちはそんな仕事を終えて出島のマーケットを歩いていた。さまざまな肌の色をした人間が歩くそこは、俺がここで一番好きな場所の一つだった。ギノはどうかは知らないが、そうであってくれたら良いのにと思う。
「敵を愛するなんて、そんなこともあるんだな。それで全てうまくいくってことも」
ギノはそう言って、マーケットに並ぶリンゴを一つ取った。明日の朝食にするらしい。
870俺たちはそんな仕事を終えて出島のマーケットを歩いていた。さまざまな肌の色をした人間が歩くそこは、俺がここで一番好きな場所の一つだった。ギノはどうかは知らないが、そうであってくれたら良いのにと思う。
「敵を愛するなんて、そんなこともあるんだな。それで全てうまくいくってことも」
ギノはそう言って、マーケットに並ぶリンゴを一つ取った。明日の朝食にするらしい。
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TRAINING出島のマーケットを夜歩く話。800文字チャレンジ17日目。
月のない夜(あなたのいる夜) 出島は景観整備がほとんどされていないから、夜にマーケットを歩くとほとんど空に月はない。星もないし、店から登る湯気や、煙草の煙なんかで薄くけぶっている。けれど俺はその風景が好きだった。それこそが彼が日本に戻ってきた理由のような気がして。
狡噛が日本に戻って再び寝るようになった時、彼はここでは月は見えないのだなと、少し寂しそうに言った。そりゃあそうだろう、彼が道を作るように進んでいた発展途上国には夜には明かりはない。みな早くに寝て、早くに起きて仕事をする。こんなふうに夜を楽しむのは、電気が通っているところだけだ。
「飲んで帰るか?」
「今日はそうするか」
花城と離れたら本当はすぐにでも官舎に戻らねばならないのに、俺たちは彼女の監視がルーズなのをいいことに聞きなれない言葉を話す店主に勧められて、読めもしない文字が書かれたビールを二本頼んだ。狡噛はそれを温かい夜にぐいぐい飲んで身体を暖かくして、俺の指先に、ベンチに手を置くふりをして触った。俺もそれに同じように触った。あたりにはまだ人がいて、月はなくて、通りに掲げられたぼんやりとした明かりだけが夜市を照らしていた。美しい夜だった。
867狡噛が日本に戻って再び寝るようになった時、彼はここでは月は見えないのだなと、少し寂しそうに言った。そりゃあそうだろう、彼が道を作るように進んでいた発展途上国には夜には明かりはない。みな早くに寝て、早くに起きて仕事をする。こんなふうに夜を楽しむのは、電気が通っているところだけだ。
「飲んで帰るか?」
「今日はそうするか」
花城と離れたら本当はすぐにでも官舎に戻らねばならないのに、俺たちは彼女の監視がルーズなのをいいことに聞きなれない言葉を話す店主に勧められて、読めもしない文字が書かれたビールを二本頼んだ。狡噛はそれを温かい夜にぐいぐい飲んで身体を暖かくして、俺の指先に、ベンチに手を置くふりをして触った。俺もそれに同じように触った。あたりにはまだ人がいて、月はなくて、通りに掲げられたぼんやりとした明かりだけが夜市を照らしていた。美しい夜だった。