最後の星空　その人が穏やかに語る宇宙の話は、どんな本やプラネタリウムの解説よりも俺の心の中に入っていった。


　クリスもといクリストファー・アークライトに初めて会った日のことは今でも覚えている。
　あのときの俺にとって、世界は全て敵だった。ハルトに構わず研究に没頭している父さんも、碌な治療法も見つけられないくせにハルトのことを実験動物のように扱う周りの研究員も、そんなハルトを守ってやれない自分自身も。

　それなのに

　「はじめまして。Dr.フェイカーから話は聞いているよ。君が天城カイト…君、だね」

　そう言って柔らかく微笑んだ彼の手を、何故とってしまったのか。優しく握られた手を、何故僅かにでも握り返してしまったのか。

綱、茨木とバカンスを過ごすこと　①北極に突如現れた常夏の楽園、様々な水着霊基のサーヴァント達が思い思いのリゾートを作る中、源氏の棟梁である頼光が生み出したのはハワイアンリゾートGENJIであった。
最初はストイック極まる修行場になるはずであったが、清少納言の優れた機転によりプールを中心としたリゾート施設として生まれ変わった。
やや労働環境をブラックにしがちな頼光を清少納言がドッジボール大会でリフレッシュさせた。
綱は清少納言に言われてドッジボールなる毬遊びに興じただけである。棟梁は思いのほか堪能したようで普段は自分を律して凛としているが、遊びに興じ体を動かせば童女の如きあどけない様子であった。常に気を張っているから気を休めたり散らしたりする方法を知らぬ不器用を愛おしくも思う。

楽しい秘密。　季節はもうすぐ夏、という頃。
　バーソロミューは、タブレットを手にして真剣に画面を見つめていた。その目が映すのは、夏の装い。夏らしくカラフルなもの、落ち着いた色合いのもの……指先が画面をなぞり、時々、気になるものをタップし確認する。暫くその動きが続き、バーソロミューの目が輝いた。
（今年は、これにしよう……）
　満足げに笑い、カートへ。確認画面を経て、すぐに購入手続きが済んだ。アマゾネスからの注文完了メッセージを確認し、安堵したように息をついてウィンドウを閉じた。

　それから、数日後。
「……え」
　自室のカウチでタブレットを操作していたバーソロミューの表情が強張り、指が止まった。
　『強度の宇宙嵐の発生により、配送に遅れが出ております』

熾火ギルドメイン山脈の麓、奥深い森の中にロン・ベルクとノヴァの住まう工房がひっそりと佇んでいる。
　辺りは初夏の清々しい空気に満ち溢れ、朝もやの中、木々の隙間を縫って清らかな光が幾筋も降り注いでいる。
　新しく増築した工房に、朝早くから鉈の音が響いている。ロンに教えを受けたノヴァが炭を切る練習をしているのだった。
　ノヴァにはさすがに自分で炭を焼く技術は無かったので、ランカークスの村外れに住まう老人から炭を買い求めていた。松を材料とした黒炭を大量に買い付け、文字通り朝から晩まで炭を切って修行している。
　師曰く、炭の大きさで炉の温度を調節するため、炭を的確な大きさで均等に切る技術は、まともな剣を打つ為にどうしても必要不可欠な技なのだという。