梓
かづき@FF14そうさく
PAST音楽は君と共に 一話あの不思議な出会いから一年。
その日、華月 梓(かづき あず)はいつも通り学校から帰宅した。自身の部屋にも洗面所があるが、7月に入ったこともあって喉が乾いている。飲み物を持っていこうと思い、1階の洗面所で手を洗ってうがいをしてからキッチンへと顔を出した。
だが、そこで妙な人影を見かける。
「……え」
「む」
そこでは、同い年ぐらいの梓よりも身長の高い男子が冷蔵庫を漁り、口に物を突っ込んで食べていた。
「なっ、なっ……」
「んっ、むぐっ!? 」
梓の姿を見留めると彼は腕を前に突き出し、必死にブンブンと振って冤罪を主張する。
「ま、舞衣(まい)姉ーっ!! 不法侵入!! しかも勝手になんか食べてるー!!」
「んぐぅっ!? ゴホッ、ゲホッ!」
2836その日、華月 梓(かづき あず)はいつも通り学校から帰宅した。自身の部屋にも洗面所があるが、7月に入ったこともあって喉が乾いている。飲み物を持っていこうと思い、1階の洗面所で手を洗ってうがいをしてからキッチンへと顔を出した。
だが、そこで妙な人影を見かける。
「……え」
「む」
そこでは、同い年ぐらいの梓よりも身長の高い男子が冷蔵庫を漁り、口に物を突っ込んで食べていた。
「なっ、なっ……」
「んっ、むぐっ!? 」
梓の姿を見留めると彼は腕を前に突き出し、必死にブンブンと振って冤罪を主張する。
「ま、舞衣(まい)姉ーっ!! 不法侵入!! しかも勝手になんか食べてるー!!」
「んぐぅっ!? ゴホッ、ゲホッ!」
かづき@FF14そうさく
PAST最終話 変わらない、これからも二人が夕飯を食べ終えれば、お風呂に入る。見たことの無いシャンプーやリンスのせいで、アズイルが一人でてんやわんやしていたため仕方なく梓が手伝った。完全に猫のお風呂である。
それからは、テレビを物珍しそうにじーっと見ていたり、梓の持つ『すまーとふぉん』とやらを見たりと文明の違いに彼が飽きることはなかった。
「不思議だな……」
「うん、僕たちは魔法が使えないから……こうやって発展や発明をして行くんだ」
「なるほどな……」
小さく笑って、梓は濡れた髪をドライヤーで乾かす。猫のような耳としっぽなのに、髪の毛はサラサラしている。自分でしっかりとお手入れしているのが良く分かった。
「アズって、意外とオシャレ好きだよね」
「……そうか?」
2773それからは、テレビを物珍しそうにじーっと見ていたり、梓の持つ『すまーとふぉん』とやらを見たりと文明の違いに彼が飽きることはなかった。
「不思議だな……」
「うん、僕たちは魔法が使えないから……こうやって発展や発明をして行くんだ」
「なるほどな……」
小さく笑って、梓は濡れた髪をドライヤーで乾かす。猫のような耳としっぽなのに、髪の毛はサラサラしている。自分でしっかりとお手入れしているのが良く分かった。
「アズって、意外とオシャレ好きだよね」
「……そうか?」
かづき@FF14そうさく
PAST第六話 温もり街に繰り出せば、楽しい時間の始まりだった。
「これがスカイツリー、上まで登れるんだ」
「敵は出ないのか?」
「何も出ないよ……」
相変わらずのアズイルに、梓は苦笑いを浮かべる。
中に入り上へと昇るエレベーターに載ると、予想以上の反応を見せた。
「すっっっげぇ、高い……!! 街並みも……全然、見たことないぞ……!!」
「はは、気に入ってくれたようで何よりだよ」
こうやって見ると、物珍しいものや初めて見る物には興味津々になるようだ。
大人っぽいなとは思っていたが、やはりなんだかんだで同い年なだけあるなぁと梓は思いつつエレベーターから降り、アズイルを連れて双眼鏡を指さす。
「これで東京の街並みがぱーっと見れるよ」
「とーきょー……よくは分からないが、この街の名前か? どこまでがとーきょーの領土なんだ?」
4580「これがスカイツリー、上まで登れるんだ」
「敵は出ないのか?」
「何も出ないよ……」
相変わらずのアズイルに、梓は苦笑いを浮かべる。
中に入り上へと昇るエレベーターに載ると、予想以上の反応を見せた。
「すっっっげぇ、高い……!! 街並みも……全然、見たことないぞ……!!」
「はは、気に入ってくれたようで何よりだよ」
こうやって見ると、物珍しいものや初めて見る物には興味津々になるようだ。
大人っぽいなとは思っていたが、やはりなんだかんだで同い年なだけあるなぁと梓は思いつつエレベーターから降り、アズイルを連れて双眼鏡を指さす。
「これで東京の街並みがぱーっと見れるよ」
「とーきょー……よくは分からないが、この街の名前か? どこまでがとーきょーの領土なんだ?」
かづき@FF14そうさく
PAST第五話 友だち色の褪せた世界は続いた、鏡に彼は写らないし弱まっていた雨は強まっていく。
ピアノを弾いても楽しくなかった。音楽がこんなにもつまらないと感じたのは初めてだった。
褪せた世界が色を失って、白と黒だけの世界になっていって……。
馬鹿だ。
僕は愚かだ。
話を聞いてくれた人を、嫌いだと突き放した。
決して親身ではなかったけど、それでも彼は話をしっかりと聞いてくれていた。
それだけで、良かったじゃないか。
欲を張って、彼を知ろうとしたのがいけなかったんだ。
『だって、それじゃあ不公平じゃない?』
不公平だよ。
僕だって、知りたいよ。
友だちになってくれた人を知りたいよ。
もっと、仲良くなりたいんだよ。
それの何がいけなかったの?
数日写らない鏡は僕の抱く虚無感を増幅させて行く……。
3627ピアノを弾いても楽しくなかった。音楽がこんなにもつまらないと感じたのは初めてだった。
褪せた世界が色を失って、白と黒だけの世界になっていって……。
馬鹿だ。
僕は愚かだ。
話を聞いてくれた人を、嫌いだと突き放した。
決して親身ではなかったけど、それでも彼は話をしっかりと聞いてくれていた。
それだけで、良かったじゃないか。
欲を張って、彼を知ろうとしたのがいけなかったんだ。
『だって、それじゃあ不公平じゃない?』
不公平だよ。
僕だって、知りたいよ。
友だちになってくれた人を知りたいよ。
もっと、仲良くなりたいんだよ。
それの何がいけなかったの?
数日写らない鏡は僕の抱く虚無感を増幅させて行く……。
かづき@FF14そうさく
PAST第四話 変わらない梓が変わろうと動き始めれば、少しずつ変化は訪れた。
件の彼には金輪際関わってくるなと伝え、脅迫めいたことを言われ怖気付きそうになるがポケットに入れていたボイスレコーダーを見せれば、すぐに走って帰って行った。
両親にも、自分のことで言い争いをしないでくれと伝えつつ変わりたい旨を話す。もちろん、焦らずゆっくりでいいと言われ順調に事は進んでいた。
アズイルとの会話は日に日に短くなっていったが、それでも『できたこと』や『変われたこと』を伝えるには十分だ。
楽しい毎日が続けばいいのに──だが、それは叶わないことだと心の内では分かっている。
それでも、心から信用できる友を失いたくはなかった。
『ああ、そうだ』
「どうしたの?」
3141件の彼には金輪際関わってくるなと伝え、脅迫めいたことを言われ怖気付きそうになるがポケットに入れていたボイスレコーダーを見せれば、すぐに走って帰って行った。
両親にも、自分のことで言い争いをしないでくれと伝えつつ変わりたい旨を話す。もちろん、焦らずゆっくりでいいと言われ順調に事は進んでいた。
アズイルとの会話は日に日に短くなっていったが、それでも『できたこと』や『変われたこと』を伝えるには十分だ。
楽しい毎日が続けばいいのに──だが、それは叶わないことだと心の内では分かっている。
それでも、心から信用できる友を失いたくはなかった。
『ああ、そうだ』
「どうしたの?」
かづき@FF14そうさく
PAST第三話 愛されたいその日、梓にとっていらぬ来客があった。
中学の時に、いじめられていた男子がズカズカと部屋まで押し入ってくる。
「……っ」
「久しぶりだなぁ、梓! 元気にしてたかよ!」
「なんで……」
「懐かしいなあ! お前が来なくなって二年だぞ!? いやぁ、会いたかったぜ!」
ガッと胸元をつかまれると顔を寄せられ、そいつは笑う。
「逃げるために引越ししやがってよ……これからたっぷり搾ってやる」
「ひっ……」
思わず声が出た。それに、何も変わってないんだと分かったのかニタァとした気味の悪い笑みを浮かべる。
「んじゃ、分かってるよなぁ?」
「……僕、は……お金……持っ……てない……」
「はぁ? マジのニートかよ。じゃあ部屋にあるちょっと高そうなモンでも……」
2050中学の時に、いじめられていた男子がズカズカと部屋まで押し入ってくる。
「……っ」
「久しぶりだなぁ、梓! 元気にしてたかよ!」
「なんで……」
「懐かしいなあ! お前が来なくなって二年だぞ!? いやぁ、会いたかったぜ!」
ガッと胸元をつかまれると顔を寄せられ、そいつは笑う。
「逃げるために引越ししやがってよ……これからたっぷり搾ってやる」
「ひっ……」
思わず声が出た。それに、何も変わってないんだと分かったのかニタァとした気味の悪い笑みを浮かべる。
「んじゃ、分かってるよなぁ?」
「……僕、は……お金……持っ……てない……」
「はぁ? マジのニートかよ。じゃあ部屋にあるちょっと高そうなモンでも……」
かづき@FF14そうさく
PAST第二話 興味鬱陶しい雨が気にならないほどに、梓は鏡の中の彼に興味を持った。
鏡は決まって部屋に誰もいない夜の19時に繋がるようだ。アズイルも、その時間は大体は野宿をして過ごしているようで森の中であれど、場所は毎度変わっている。
今日は、穏やかな川のせせらぎが聞こえて来て梓は欠伸をした。
「静かでいいとこだね」
『まぁ……僕も気に入ってるとこ』
そんなたわいない会話しかしなかったが、梓には楽しい日々が続いている。
「そういえば、なんでアズは野宿してるの? 宿とかないの?」
『あることにはある……けど、今は帰りづらい』
今日は動物の心配がないのか、琴は脇に置いてアズイルは頬をポリポリとかく。
「帰りづらい……誰かと喧嘩した?」
『……まあ、そんな感じ……』
2280鏡は決まって部屋に誰もいない夜の19時に繋がるようだ。アズイルも、その時間は大体は野宿をして過ごしているようで森の中であれど、場所は毎度変わっている。
今日は、穏やかな川のせせらぎが聞こえて来て梓は欠伸をした。
「静かでいいとこだね」
『まぁ……僕も気に入ってるとこ』
そんなたわいない会話しかしなかったが、梓には楽しい日々が続いている。
「そういえば、なんでアズは野宿してるの? 宿とかないの?」
『あることにはある……けど、今は帰りづらい』
今日は動物の心配がないのか、琴は脇に置いてアズイルは頬をポリポリとかく。
「帰りづらい……誰かと喧嘩した?」
『……まあ、そんな感じ……』
かづき@FF14そうさく
PAST第一話 雨「……猫……?」
『猫? 僕の種族のことを言っているのか?』
「種族……?」
『僕はミコッテだ、お前は……見た感じヒューランみたいだな』
「ちょ、ちょっと待って……なに? ミコッテだのヒューランだの……」
話が食い違うのに動揺する梓は、目の前の少年を見つめる。
見れば見るほど似ている。鏡にただ写っているだけなのでは、と錯覚するほどに。それでも、頭にある可愛らしい耳を見れば違うのだろう。
それに、鏡の中は夜の森の中のようだ。時折、狼の遠吠えのようなものも聞こえるし火を焚べる音がリアルで、梓は更に混乱する。
『……お前、名前は?』
「え……梓……華月 梓」
『名前まで似てるな……僕はアズイル・カヅリエ。吟遊詩人だ』
「吟遊詩人……? えっと、英雄譚を歌にして旅をするっていう……」
2264『猫? 僕の種族のことを言っているのか?』
「種族……?」
『僕はミコッテだ、お前は……見た感じヒューランみたいだな』
「ちょ、ちょっと待って……なに? ミコッテだのヒューランだの……」
話が食い違うのに動揺する梓は、目の前の少年を見つめる。
見れば見るほど似ている。鏡にただ写っているだけなのでは、と錯覚するほどに。それでも、頭にある可愛らしい耳を見れば違うのだろう。
それに、鏡の中は夜の森の中のようだ。時折、狼の遠吠えのようなものも聞こえるし火を焚べる音がリアルで、梓は更に混乱する。
『……お前、名前は?』
「え……梓……華月 梓」
『名前まで似てるな……僕はアズイル・カヅリエ。吟遊詩人だ』
「吟遊詩人……? えっと、英雄譚を歌にして旅をするっていう……」
pancake_303
DOODLE絡み等は無いですが一応。唯くんと梓世くん。唯くんと梓世くんの二人で一緒に暮らしてる妄想をした時に描いたもの。朝コーヒー淹れて無言で出してくれそうな感じ。
率先してお喋りはしないけど心地いい空気で過ごせそうな二人…【幽不A】 2
染井悉
MEMO❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏𝘾𝙖𝙡𝙡 𝙤𝙛 𝘾𝙩𝙝𝙪𝙡𝙝𝙪
❚ プルガトリウムの夜
作:中尾ヤスヒロ様
𝙆𝙋:染井悉
❚ 𝙃𝙊𝟭 / 𝙋𝙇
梓沢 将人 / 水蜘蛛
❚ 𝙃𝙊𝟮 / 𝙋𝙇
雨鷺 碧正 / 佐藤
↪︎𝙀𝙉𝘿-𝘼 両生還
❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏