菊田
Takase
MOURNING3月4月にアップした漫画のボツコマ1〜3枚目:浩平の表情が"無"すぎて、これからこの2人の発展が望めなさそうだったからボツに(私は好きだけどね…
4枚目:コマで消えちゃったけど、上手くいった菊田さんのキューティクル
5枚目:タバコ咥えさせたからボツにしたけど、いい笑顔
6枚目:アングルからやり直しでボツにしたけど、割といいなと思ってる 6
tabi22954045
DONE「バレンタインという日」(※明治軸菊トニSS、全年齢)明治末の登別、もし菊田が、どこかの時空で行われている「バレンタイン」という行事を知っていたら、きっと按摩さんに教えてあげるだろうなーという発想で、バレンタイン当日中に仕上げることを目標に書きました。(2025.2.14)
twitterにはL版メーカーを使用した画像の形で掲載したので、これも最終ページに載せておきます。 3
tabi22954045
DONE「今年も、そしてその先も」(※現パロ菊トニSS、全年齢)旅行先で初詣に行く話。(2025.1.14)
一人称視点で書く練習を兼ねました。一人称難しいです。
なかなかしっくり来なくて、最初のうち、菊田一人称→都丹一人称→三人称→都丹一人称と、何度か変えながら書き進めました。 4
tabi22954045
DONE「十一月二十六日」(※前世記憶有り現パロ菊トニSS、全年齢)10月20日に開催された第2回都丹庵士webオンリー。
その企画「トニコレ2024 都丹さんと記念日」のために書いた、L判ネットプリント用の作品です。(2024.9.29)
(※2024.11.26:菊田さん誕生日を機に本文再録。)
藍河響
DOODLE過去の書きかけメモ発掘。杢月小説で、菊田が月島へ向ける自分の中にある執着のデカさに初めて気づいた時の話。
直接的な性描写はありませんが、ふんわり雰囲気スケベ。
終わりところが見当たらなかったけれど、おれ、こういのが好きなんよ!っていう落書きです。
『開いた蓋を落としたら2つ一緒に割れて混ざる』「あ、」
パチンコ屋から聴こえてきた音楽に、月島がその主題歌となる作品をボソリと呟いた。
「……懐かしい。──と、あ〜……。すません。昔の記憶だけです」
今は行ってませんよ。
そう言う月島の笑顔はどこかここではない過去に意識が奪われて、少し、苦い顔をする。
苦さを誤魔化すように進行方向へ無理やり顔を向けて、貼り付けたような、俺に、気を使うような下手くそな笑顔を声色に乗せる月島に、体中を巡る血液が一気に沸騰して、そして急速に冷えた。
握った拳はきっと色を失ってるだろう。
「今日観る映画、たしか貴方がずっと公開するの待ってたシリーズ物ですよね。俺、観た事がなくて一応予習しとかなきゃって思っ、て!? ちょ、え、菊田さん!?」
4138パチンコ屋から聴こえてきた音楽に、月島がその主題歌となる作品をボソリと呟いた。
「……懐かしい。──と、あ〜……。すません。昔の記憶だけです」
今は行ってませんよ。
そう言う月島の笑顔はどこかここではない過去に意識が奪われて、少し、苦い顔をする。
苦さを誤魔化すように進行方向へ無理やり顔を向けて、貼り付けたような、俺に、気を使うような下手くそな笑顔を声色に乗せる月島に、体中を巡る血液が一気に沸騰して、そして急速に冷えた。
握った拳はきっと色を失ってるだろう。
「今日観る映画、たしか貴方がずっと公開するの待ってたシリーズ物ですよね。俺、観た事がなくて一応予習しとかなきゃって思っ、て!? ちょ、え、菊田さん!?」
tabi22954045
DONE「鹵獲銃」(明治軸菊トニSS、全年齢)按摩さんと菊田の銃「ナガンM1895」。(2024.5.14)
最後のページに、銃器に関するざっくりしたメモを付けてあります。
(※2024.10.20:第2回トニオンリーを機に4箇所ほど手を入れました。) 9
TorrraTorrra5
DOODLE初めてです。勇尾(になるはず?)dk。それぞれ名字で呼ぶ。はじめましてのシーン。
今のところは、もしかすると、菊田さんとただならぬ関係かもしれない尾。
妬み嫉みをモロに受けている作さん。
どっちがいいですか? まいったな……。
練習を終えて備品の片付けをしていた。他の部員は練習終わりの合図で早々に部室に引き上げ、一人で何台ものハードルを片付けていた。雑用は一年が、そういう慣習だと聞いている。同時に入部した1年は15名。残りの14名も上級生とともに部室へ引き上げていた。――仕方ない。みんな疲れていたんだと思う。俺は体力だけが取り柄だから。
すっかり日が暮れてから部室に戻って唖然とした。荒らされたロッカー、あるはずの制服が忽然と姿を消して、不格好に切られたジャージのズボンだけが転がっていた。ユニホームの短パンでは流石に電車にのるのは憚れる。かと言ってこのジャージを穿くことも難しい。
途方に暮れて部室の外へ顔を向けた。
1848練習を終えて備品の片付けをしていた。他の部員は練習終わりの合図で早々に部室に引き上げ、一人で何台ものハードルを片付けていた。雑用は一年が、そういう慣習だと聞いている。同時に入部した1年は15名。残りの14名も上級生とともに部室へ引き上げていた。――仕方ない。みんな疲れていたんだと思う。俺は体力だけが取り柄だから。
すっかり日が暮れてから部室に戻って唖然とした。荒らされたロッカー、あるはずの制服が忽然と姿を消して、不格好に切られたジャージのズボンだけが転がっていた。ユニホームの短パンでは流石に電車にのるのは憚れる。かと言ってこのジャージを穿くことも難しい。
途方に暮れて部室の外へ顔を向けた。
tabi22954045
DONE「手袋」(※菊トニ短編、前世記憶持ち現パロ、全年齢)読み専が急にどうした?って感じですが、元は2023年10月22日のトニオンリー開催でテンション上がってSSにチャレンジしてみた時に候補にしていたテーマの一つで、菊田さん誕生日を目標に、腰を据えて再挑戦してみたものです。(2023.11.26)
(※2023.12.3:pixiv掲載にあたり少し手直ししました。) 21
氷輪(ひょうりん)
DONE金カ夢kkt菊田さんと重陽の話。呟いたネタを形にしてみた。
菊田さんと重陽の話食事も終わり、ソファーに座りなんとなくテレビを見ていると、
「今日は重陽なんですよ」
そう言って彼女が何かを運んできた。ローテーブルに並べられたのは、菊の花びらが浮かんだお猪口。徳利もガラス製で、その中にも菊の花が入っているという凝りようだ。
「へぇ、なかなか風流だな」
でしょう?とニコニコとしている彼女を見ながら酒を口に含むと、仄かに菊の香りがしたような気がする。
「無病息災や不老長寿を願ってたらしいですよ」
「でもまだ菊の花にはちと早ぇよなぁ」
「旧暦ならちょうどいいのかもしれないですね」
お猪口が空けば、彼女が注いでくれる。徳利から注いだ酒は花を漬けてあったからか、菊の香りが先程よりも感じられた。
あまり酒に強くない彼女は、ちびりちびりと舐めるように飲んでいる。苦手なら無理に飲まなきゃいいのに、同じものを楽しみたいって言われたら止める理由はない。
753「今日は重陽なんですよ」
そう言って彼女が何かを運んできた。ローテーブルに並べられたのは、菊の花びらが浮かんだお猪口。徳利もガラス製で、その中にも菊の花が入っているという凝りようだ。
「へぇ、なかなか風流だな」
でしょう?とニコニコとしている彼女を見ながら酒を口に含むと、仄かに菊の香りがしたような気がする。
「無病息災や不老長寿を願ってたらしいですよ」
「でもまだ菊の花にはちと早ぇよなぁ」
「旧暦ならちょうどいいのかもしれないですね」
お猪口が空けば、彼女が注いでくれる。徳利から注いだ酒は花を漬けてあったからか、菊の香りが先程よりも感じられた。
あまり酒に強くない彼女は、ちびりちびりと舐めるように飲んでいる。苦手なら無理に飲まなきゃいいのに、同じものを楽しみたいって言われたら止める理由はない。
氷輪(ひょうりん)
DONE金カ夢ark有古くん、誕生日おめでとう。
半日クオリティで申し訳ないけど、祝福の気持ちは沢山沢山詰め込んでおいたよ。
そのうち加筆訂正すると思いますので、いろいろ目をつぶってください
菊田さんがでしゃばってるけど、気にしないでください
わがままひとつ今日は俺の誕生日。それを知っていた上司の菊田さんが、食事に誘ってくれた。定時を少し過ぎてから菊田さんと一緒に会社を出る。
よく行く店に入り、いつものように注文を済ませた。
「有古、誕生日おめでとう」
乾杯、と菊田さんが掲げたグラスに自分のグラスを軽く合わせる。明日も仕事なのでそれほど飲めないが、まだまだ暑い日が続くなかで仕事終わりの一杯はうまい。
料理も運ばれてきて箸をつけたところで、
「遅くなりました」
とよく知る明るい声が響いた。驚いて個室の入り口を見れば、予想通りの人物が靴を脱いでいる。
彼女が来るなんて聞いてない。
慌てて菊田さんを見るが、菊田さんは俺の視線に気づいていないのか、彼女を俺の隣に座らせておしぼりを渡している。
1940よく行く店に入り、いつものように注文を済ませた。
「有古、誕生日おめでとう」
乾杯、と菊田さんが掲げたグラスに自分のグラスを軽く合わせる。明日も仕事なのでそれほど飲めないが、まだまだ暑い日が続くなかで仕事終わりの一杯はうまい。
料理も運ばれてきて箸をつけたところで、
「遅くなりました」
とよく知る明るい声が響いた。驚いて個室の入り口を見れば、予想通りの人物が靴を脱いでいる。
彼女が来るなんて聞いてない。
慌てて菊田さんを見るが、菊田さんは俺の視線に気づいていないのか、彼女を俺の隣に座らせておしぼりを渡している。
氷輪(ひょうりん)
DONE金カ夢kkt菊田さんと葡萄を食べるだけの話
葡萄/菊田何度目かのお家デート。今日は彼女の家で夕飯をご馳走になった。そして食後のデザートにと食卓に並んだのは、葡萄。もうそんな時期か、と大振りな実を眺めた。
「スイカじゃなくてごめんなさい」
彼女はそう言って向かいに座る。気にするな、といって葡萄に手を伸ばすが、彼女が俺の好きなものを覚えていてくれたのが何だか嬉しい。
「今は一年中なんでも手に入るが、やはり旬のものが一番旨いからな」
一粒皮を剥き、口へと放り込んだ。瑞々しい甘さが口の中に広がる。
皮を剥く手間があるのと手がベトベトになるのがなぁ、と思うが、スイカもたいして変わらない事を思い出し、用意されていた濡れタオルで手を拭いた。
「葡萄といえば、三国志に出てくる曹丕って人が葡萄が好きでね……」
986「スイカじゃなくてごめんなさい」
彼女はそう言って向かいに座る。気にするな、といって葡萄に手を伸ばすが、彼女が俺の好きなものを覚えていてくれたのが何だか嬉しい。
「今は一年中なんでも手に入るが、やはり旬のものが一番旨いからな」
一粒皮を剥き、口へと放り込んだ。瑞々しい甘さが口の中に広がる。
皮を剥く手間があるのと手がベトベトになるのがなぁ、と思うが、スイカもたいして変わらない事を思い出し、用意されていた濡れタオルで手を拭いた。
「葡萄といえば、三国志に出てくる曹丕って人が葡萄が好きでね……」
oshihamidori
DONE「よきひと」で書いた菊田課長が個人的にお気に入りなので、続き書きました。誤字脱字誤用、ないとは思いますが文章抜けとかあったら申し訳ないです(ひどい)
・リーマン鯉月同棲中
・菊田さんは二人の上司
・第七師団のメンバーも、名前だけの登場だったりもするけど出てくる
続よきひと前作「よきひと」はhttps://twitter.com/oshihamidori/status/1651568998994313216s=61&t=zoQb2uOrMX9DDUQ7m-6NQg
です。
「あ、いけね。この資料、明日朝イチで宇佐美が使うって言ってたよな」
会社の最寄り駅まであと一駅のところで、ふと思い出した。直帰の夢が儚く消えた。
どうせ家に帰ってもやることはないから支障はないのだが、こう言うのは本当、気分の問題。
イケメン部下の鯉登からすでに同棲している彼女がいると聞かされて、なんでも揃ってるやつは身を固めるのも早いんだなぁ、そういえばスポーツ選手も結婚早いもんなぁなどと勝手なことを考える。フリーだと吹聴してるが、俺だってビビッとくる相手が居たら結婚もありだ。鯉登の彼女、どんな子なんだろう。結婚式に呼ばれたら会えるか。
6728です。
「あ、いけね。この資料、明日朝イチで宇佐美が使うって言ってたよな」
会社の最寄り駅まであと一駅のところで、ふと思い出した。直帰の夢が儚く消えた。
どうせ家に帰ってもやることはないから支障はないのだが、こう言うのは本当、気分の問題。
イケメン部下の鯉登からすでに同棲している彼女がいると聞かされて、なんでも揃ってるやつは身を固めるのも早いんだなぁ、そういえばスポーツ選手も結婚早いもんなぁなどと勝手なことを考える。フリーだと吹聴してるが、俺だってビビッとくる相手が居たら結婚もありだ。鯉登の彼女、どんな子なんだろう。結婚式に呼ばれたら会えるか。
3031
DONE有菊現パロ、泥酔テンション菊田、恋人が好きすぎる38歳
あまくない夜と、あまい明日 スイカの入浴剤を見つけた。
赤と緑のポップでかわいらしいパッケージ。つい手に取ってそのままレジへ向かったのは、きっとアルコールのせいだと思いたい。飲みすぎた肝臓を労わる粉末剤と、愛するクソブラック弊社の激務に備えたエナジードリンクを3本。そういや切らしていたなと思い出したLサイズのゴムに加えて、キュートなスイカの入浴剤1パックを置いたレジ台を前にして、俺こと菊田杢太郎38歳はふいに思う。
飲みすぎて足元がおぼつかないにも関わらず、これからスイカの甘い香りを漂わせながら誰かとしっぽり頑張っちゃうつもりの見栄っ張りな酔っぱらい中年男。というラインナップになっている気がする。ちょっと恥ずかしい。
珍妙な客と頻繁にエンカウントする夜のコンビニ店員から見れば、俺なんて記憶にも残らないだろうし、そもそも客が買うものに大した興味もなければ、そんな下世話な想像を膨らませることもないだろう。自分でも自意識過剰だとは思う。しかし、一度そう考え及んでしまったら恥ずかしさが止まらなくなる。そんなつもりじゃないんだと言い訳をしたいが、それこそ珍妙な客としてランクインするだけなので止めておく。これまたアルコールの力で、店を出たら早急に忘れることにしよう。頼むぜ黒霧島。ボトル4分の3の威力を見せてくれ。
5098赤と緑のポップでかわいらしいパッケージ。つい手に取ってそのままレジへ向かったのは、きっとアルコールのせいだと思いたい。飲みすぎた肝臓を労わる粉末剤と、愛するクソブラック弊社の激務に備えたエナジードリンクを3本。そういや切らしていたなと思い出したLサイズのゴムに加えて、キュートなスイカの入浴剤1パックを置いたレジ台を前にして、俺こと菊田杢太郎38歳はふいに思う。
飲みすぎて足元がおぼつかないにも関わらず、これからスイカの甘い香りを漂わせながら誰かとしっぽり頑張っちゃうつもりの見栄っ張りな酔っぱらい中年男。というラインナップになっている気がする。ちょっと恥ずかしい。
珍妙な客と頻繁にエンカウントする夜のコンビニ店員から見れば、俺なんて記憶にも残らないだろうし、そもそも客が買うものに大した興味もなければ、そんな下世話な想像を膨らませることもないだろう。自分でも自意識過剰だとは思う。しかし、一度そう考え及んでしまったら恥ずかしさが止まらなくなる。そんなつもりじゃないんだと言い訳をしたいが、それこそ珍妙な客としてランクインするだけなので止めておく。これまたアルコールの力で、店を出たら早急に忘れることにしよう。頼むぜ黒霧島。ボトル4分の3の威力を見せてくれ。
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DONE杉菊金塊争奪戦後の菊田生存if、東京にて
※最終回より前に書いたもの
甘い男 空いた七年間の積もる話は長く、ようやく落ち着いた日々を共に過ごしていくうちに年下の男の憧れは恋慕に変わり、その想いを一身に受けた年上の男の心も甘く溶かされてしまった。
そうして特別な事件のない穏やかな毎日の中で、互いに甘いものが好物なのだと知って笑いあう瞬間を幸せというのだろう。
「似合わねぇって言いたいんだろ? 老け顔のガキの頃から何百回も聞かされた」
杉元が意外だと素直に驚いていると、紫煙をくゆらす菊田の眉間に皺が寄せられる。
「や、似合わないんじゃなくて! 塩っ辛い酒の肴の方が好きそうな印象でさ」
「それも嫌いじゃないけどな。でも、疲れた身体には甘いもんが効くんだよ。分かるだろ? で、大体にして、おっさんは常に疲れてる」
3120そうして特別な事件のない穏やかな毎日の中で、互いに甘いものが好物なのだと知って笑いあう瞬間を幸せというのだろう。
「似合わねぇって言いたいんだろ? 老け顔のガキの頃から何百回も聞かされた」
杉元が意外だと素直に驚いていると、紫煙をくゆらす菊田の眉間に皺が寄せられる。
「や、似合わないんじゃなくて! 塩っ辛い酒の肴の方が好きそうな印象でさ」
「それも嫌いじゃないけどな。でも、疲れた身体には甘いもんが効くんだよ。分かるだろ? で、大体にして、おっさんは常に疲れてる」
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DONE菊田が鹵獲を始めるに至る話※28巻で理由が判明する前に書いたもの
この手に、記憶として「兄ちゃん……この帽子、持って帰って」
人が死すれば、残された者は死者が生前所持していた物品に、さながらその魂が宿ったかのように面影を見る。それを形見という。
では、実際に菊田杢太郎の弟である藤次郎が日清戦争の最中で病に倒れ落ちた時、その魂は藤次郎の軍帽に宿ったのだろうか?
否、そんなものはただの幻想でしかない。少なくとも菊田はそう考えていた。それでも形見というものは、かつて死者が生きてきた証として残された者にとっては重要な意味を持つ。
軍帽を受け取ったその日から、菊田は自身が元より所持していたそれに代えて藤次郎のものを被るようになった。それは弟の最後の願いを叶えるため、そして、己の罪を常に抱えておくためだった。
2649人が死すれば、残された者は死者が生前所持していた物品に、さながらその魂が宿ったかのように面影を見る。それを形見という。
では、実際に菊田杢太郎の弟である藤次郎が日清戦争の最中で病に倒れ落ちた時、その魂は藤次郎の軍帽に宿ったのだろうか?
否、そんなものはただの幻想でしかない。少なくとも菊田はそう考えていた。それでも形見というものは、かつて死者が生きてきた証として残された者にとっては重要な意味を持つ。
軍帽を受け取ったその日から、菊田は自身が元より所持していたそれに代えて藤次郎のものを被るようになった。それは弟の最後の願いを叶えるため、そして、己の罪を常に抱えておくためだった。