Bloodborne
Ppeco0
DONEブラボの人形ちゃん。昔はこれぐらいのデフォルメばっかり描いていたので、当時を思い出しつつ描いてみました。
◆2023/6/28更新
ようやく完成しました。人形ちゃんはやっぱりかわいい。
涙石のイベントが一番好きなので、描けて満足。
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DONEブラボ8周年おめでとう文誰かが見る夢の話また同じ夢を見た。軋む床は多量の血を吸って腐り始めている。一歩と歩みを進める度、大袈裟なほどに靴底が沈んだこの感触は狩人にとって馴染みのものだった。獣の唸り声、腐った肉、酸化した血、それより体に馴染んだものがあった。
「が……ッひゅ……っ」
喉から搾り出すのは悲鳴にもならない粗末な呼気だ。気道から溢れ出る血がガラガラと喉奥で鳴って窒息しそうになる。致命傷を負ってなお、と腕を手繰り寄せ振り上げる。その右腕に握るのは血の錆が浮いたギザギザの刃だ。その腕を農夫のフォークが刺し貫いた。手首の関節を砕き、肉を貫き、切先が反対側の肉から覗いた。その激痛にのたうちまわるどころか悲鳴さえも上げられない。白く濁った瞳の農夫がフォークを振り回す。まるで集った蝿を払うような気軽さのままに狩人の肩の関節が外された。ぎぃっ!と濁った悲鳴を上げればようやく刺さったフォークが引き抜かれた。その勢いで路上に倒れ込む。死肉がこびりついた石畳は腐臭が染み込んでいる。その匂いを嗅ぎ取り、死を直感した。だがこれで死を与える慈悲はこの街にはなかった。外れた肩に目ざとく斧が叩き込まれたのだ。そのまま腕を切り落とす算段なのだろうか。何度も、何度も無情に肩に刃が叩き込まれていく。骨を削る音を真横に聞きながら、意識が白ばみ遠のきだした。いっそ、死ねるのであれば安堵もできただろう。血で濡れた視界が捉えるのは沈みゆく太陽だ。夜の気配に滲んだ陽光が無惨な死を遂げる狩人を照らし、やがて看取った。
3154「が……ッひゅ……っ」
喉から搾り出すのは悲鳴にもならない粗末な呼気だ。気道から溢れ出る血がガラガラと喉奥で鳴って窒息しそうになる。致命傷を負ってなお、と腕を手繰り寄せ振り上げる。その右腕に握るのは血の錆が浮いたギザギザの刃だ。その腕を農夫のフォークが刺し貫いた。手首の関節を砕き、肉を貫き、切先が反対側の肉から覗いた。その激痛にのたうちまわるどころか悲鳴さえも上げられない。白く濁った瞳の農夫がフォークを振り回す。まるで集った蝿を払うような気軽さのままに狩人の肩の関節が外された。ぎぃっ!と濁った悲鳴を上げればようやく刺さったフォークが引き抜かれた。その勢いで路上に倒れ込む。死肉がこびりついた石畳は腐臭が染み込んでいる。その匂いを嗅ぎ取り、死を直感した。だがこれで死を与える慈悲はこの街にはなかった。外れた肩に目ざとく斧が叩き込まれたのだ。そのまま腕を切り落とす算段なのだろうか。何度も、何度も無情に肩に刃が叩き込まれていく。骨を削る音を真横に聞きながら、意識が白ばみ遠のきだした。いっそ、死ねるのであれば安堵もできただろう。血で濡れた視界が捉えるのは沈みゆく太陽だ。夜の気配に滲んだ陽光が無惨な死を遂げる狩人を照らし、やがて看取った。
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DONEモブ狩人がルドウイークにクソデカ感情を一方的に寄せる話暴力表現有
傾倒する狩人の話曇った窓ガラスに雨粒が伝う。重力に従い流れていくそれは自分の人生だ。いずれ父親の石膏細工の家業を継ぐだけのつまらない人生になるのだろうと、黒い革を重ねて繋ぎ合わせたグローブで窓ガラスを撫でる。だが、今日から雨粒が天に昇るように自分の人生も変わるのだとまだ若い狩人は確信していた。先日、祖父の代から続いていた石膏細工屋は廃業した。正しく言えば、家屋が潰されたのだ。家屋だけではない。ともに逃げ隠れていた老いた父と母までもを失った。黒い毛が逆立った金の目を輝かせた獣によって。だが、自分だけは生きている。
吐いた呼気で窓ガラスが曇った。しかし憂鬱な呼吸には幾分の興奮も含んでいた。その視線の先には一人の狩人がいる。この市街に住む人間で知らないものはいないだろう。教会直属の狩人だ。そして自分は彼のおかげで生き延びたのだった。父の腹を裂き、母の首の骨を砕いた後、狙いを定めて歩み寄ってきた獣の腹を銃で撃ち抜き、一瞬の隙も与えぬ間も無く大剣で首を切り落とした。その剣技は鮮やかで少しの迷いもなく、月明かりのように鋭い一太刀が闇に閃いた。それを思い出すと脳に火照りを感じる。その熱は心臓にまで届き、異様な興奮に囚われる。熱に浮かされていると指摘されれば静かに頷くだろう。その興奮は自覚的でありながら静まることがない。この感情を言い当てるなら敬慕の他になかった。視線を窓ガラスから下ろし、装束越しに左腕を撫でる。革で作られた装束は分厚い。だが指で押すように撫でれば針で空いた穴がチクリと痛み、初めて教会の門を叩いた日のことを思い出した。
8332吐いた呼気で窓ガラスが曇った。しかし憂鬱な呼吸には幾分の興奮も含んでいた。その視線の先には一人の狩人がいる。この市街に住む人間で知らないものはいないだろう。教会直属の狩人だ。そして自分は彼のおかげで生き延びたのだった。父の腹を裂き、母の首の骨を砕いた後、狙いを定めて歩み寄ってきた獣の腹を銃で撃ち抜き、一瞬の隙も与えぬ間も無く大剣で首を切り落とした。その剣技は鮮やかで少しの迷いもなく、月明かりのように鋭い一太刀が闇に閃いた。それを思い出すと脳に火照りを感じる。その熱は心臓にまで届き、異様な興奮に囚われる。熱に浮かされていると指摘されれば静かに頷くだろう。その興奮は自覚的でありながら静まることがない。この感情を言い当てるなら敬慕の他になかった。視線を窓ガラスから下ろし、装束越しに左腕を撫でる。革で作られた装束は分厚い。だが指で押すように撫でれば針で空いた穴がチクリと痛み、初めて教会の門を叩いた日のことを思い出した。
RoRworld21
MOURNINGBloodborne ヴァルトールさんのイベントに関する妄想解釈の怪文書です※マダラスの弟視点
※マダラスの弟が最強火のヴァルトールさん信者という解釈
※ヴァルトールさんは登場しません
※書きたかったとこだけなので超短文
※超短文ゆえここに供養
連盟に仇なす毒蛇は新月の夜に哭く※長の鉄兜入手後のマダラス弟独白
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…ふと自嘲の笑みが浮かぶ。
あの人が守り、残したもの…連盟、に、仇なす「虫」は…結局、己自身だったのかと。
いいや。違う。
己は「蛇」だ。全てを喰い殺し、途方もなく育つ毒蛇。
目を閉じて深く息を吸う。
あの人に会って…そして救われた遠い日から、片時も忘れず脳裏に焼いた文字を、
感傷とよぶにはまばゆい記憶とともに、
引き剥がした。
…。
……。
誰がゆるそうと。
誰が認めようと。
決して己はゆるしはしない。
認めなどするものか。
…たとえ、これが、あの人が待ち望んだ結末だとしても。
自分にとっての
「連盟の長」
は、あの人しかいないのだから。
もはや自らに残った最後の繋がり…
この手で葬った家族との絆…そして呪いの笛を吹き鳴らす。
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…ふと自嘲の笑みが浮かぶ。
あの人が守り、残したもの…連盟、に、仇なす「虫」は…結局、己自身だったのかと。
いいや。違う。
己は「蛇」だ。全てを喰い殺し、途方もなく育つ毒蛇。
目を閉じて深く息を吸う。
あの人に会って…そして救われた遠い日から、片時も忘れず脳裏に焼いた文字を、
感傷とよぶにはまばゆい記憶とともに、
引き剥がした。
…。
……。
誰がゆるそうと。
誰が認めようと。
決して己はゆるしはしない。
認めなどするものか。
…たとえ、これが、あの人が待ち望んだ結末だとしても。
自分にとっての
「連盟の長」
は、あの人しかいないのだから。
もはや自らに残った最後の繋がり…
この手で葬った家族との絆…そして呪いの笛を吹き鳴らす。
sakemosample
INFOブルーノ+アンチノミー×不動遊星 R18 A5 中綴じ12頁 ゲームbloodborneパロディでブル遊とチノ遊があります 遊星=狩人 ブルーノ=聖歌隊 アンチノミー=連盟の長でパロっています Twitterにあげた落書きを清書したログ本になります。 3pa_rasite
DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ21血を吸って湿った砂塵が靴底でじゃりじゃりと鳴る。乾いた空気はひどく冷え、気が緩めば足が竦んでしまいそうだった。見慣れたヤーナムの街はひしゃげて歪み、整地された道は木の根のようにねじれて小山のように盛り上がっている。岩場を登るように、ときには這うように進んでも見えてくるのは見慣れた筈の聖堂街だ。
そこに人の影はあった。しかし正気を失い、生ける屍のように血を求めて彷徨う狩人がいるだけだ。かつては自分と同じように狩人だったであろう獣を狩り、肉を裂いて浴びる血に喜びを見出していた。妙に明るい街並みを見渡し、霞む瞳を手で拭う。
罹患者の症状の一つである、蕩けて崩れた瞳孔のような太陽が不気味に明るい。なんの温かみのない光が崩れたヤーナムを照らしていた。がり、と硬質な地面を爪でかく。腕の力で這い上がれば見えたのは異様な風景だった。ほとんどの道も家も崩れ切ってしまっているのに聖堂街だけはそのままの姿を保っているのだ。また、がりと音を立てて岩のように凹凸が目立つ地面に爪を立てる。見れば爪を立てた場所には深い爪痕が残されていた。背中の産毛が逆立つような不安を感じてルドウイークは装束の手袋を外した。手袋の下には割れた爪が並んでいた。割れた爪の間からは血が滲んでいる。それなのにもはや痛みらしいものさえ感じることもなかった。ルドウイークはここ数ヶ月前から痛みを感じることも少なくなっていた。痛みどころか肉体で感じ得る感覚全てが鈍くなり、体を薄い膜が包んでいるように現実味が薄くなっていた。
9761そこに人の影はあった。しかし正気を失い、生ける屍のように血を求めて彷徨う狩人がいるだけだ。かつては自分と同じように狩人だったであろう獣を狩り、肉を裂いて浴びる血に喜びを見出していた。妙に明るい街並みを見渡し、霞む瞳を手で拭う。
罹患者の症状の一つである、蕩けて崩れた瞳孔のような太陽が不気味に明るい。なんの温かみのない光が崩れたヤーナムを照らしていた。がり、と硬質な地面を爪でかく。腕の力で這い上がれば見えたのは異様な風景だった。ほとんどの道も家も崩れ切ってしまっているのに聖堂街だけはそのままの姿を保っているのだ。また、がりと音を立てて岩のように凹凸が目立つ地面に爪を立てる。見れば爪を立てた場所には深い爪痕が残されていた。背中の産毛が逆立つような不安を感じてルドウイークは装束の手袋を外した。手袋の下には割れた爪が並んでいた。割れた爪の間からは血が滲んでいる。それなのにもはや痛みらしいものさえ感じることもなかった。ルドウイークはここ数ヶ月前から痛みを感じることも少なくなっていた。痛みどころか肉体で感じ得る感覚全てが鈍くなり、体を薄い膜が包んでいるように現実味が薄くなっていた。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ20街が病んでいることなど誰が見ても明白だろう。ふらりと足を運んだ異邦人でも一目で分かるほど街の荒廃は一目瞭然だ。整然と並んだ石畳に染み込んだ血の色は消えず、壁に張り付いた肉片はは乾いている。何よりこの臭いだ。腐った肉の臭いや濡れた獣の毛皮の匂いが付き纏い、眉間が疼くようだった。住み慣れている筈の街だが、徐々に増す生臭い死臭に不快感は増すばかりだ。
粘つく唾液を吐きながら一匹の犬が飛びかかる。シモンの頸動脈を狙ったのだろう。身を屈めて襲撃を避ければ着地に失敗して犬が転ぶ。その四肢は腐って肉が崩れて始めていた。皮がずる剥けて繊維状の筋肉が剥き出しになった足から酷い匂いが漂っているようだ。
甲高く吠えたてる腐った肉を纏う犬の脇腹を蹴って弓で射る。誰かの飼い犬だったのかも分からぬほど原型を留めぬ其れを射殺せば、その隙にこちらに掴みかかろうと迫る男がいた。一切躊躇わずに首を刃で跳ねれば饐えた血の匂いがした。
10243粘つく唾液を吐きながら一匹の犬が飛びかかる。シモンの頸動脈を狙ったのだろう。身を屈めて襲撃を避ければ着地に失敗して犬が転ぶ。その四肢は腐って肉が崩れて始めていた。皮がずる剥けて繊維状の筋肉が剥き出しになった足から酷い匂いが漂っているようだ。
甲高く吠えたてる腐った肉を纏う犬の脇腹を蹴って弓で射る。誰かの飼い犬だったのかも分からぬほど原型を留めぬ其れを射殺せば、その隙にこちらに掴みかかろうと迫る男がいた。一切躊躇わずに首を刃で跳ねれば饐えた血の匂いがした。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ19花が咲き乱れ、名称も定かではない植物の蔦が外壁に伝う。木葉は緑色に染まり、艶々と輝き生命力に溢れているというのに、この場所は生気が一切感じられない。まさしく夢と呼ぶのにふさわしいのだろう。どこか夢見心地で現実味がないこの場所に一体の人形が佇んでいた。
生命力のない硝子の瞳の色は薄く、どこを見据えているか分からないほどに儚げだった。
陶器で作られた球体人形が夢へと戻った狩人に向かい合う。灰色がかったブロンドが何処からか靡く風に揺れた。
狩人より幾分高い位置にあるその顔はあまりにも整い過ぎていた。人間味を削ぎ落としたように美しい顔を見つめていれば恭しく、人形が首を下げた。
「お帰りなさい。狩人様。」
ただの人形ではない。名前を持たない彼女の声は小鳥のように小さく可憐だった。人間のように嗜好を持つこともなく、ただ狩人の世話をするためだけに夢に用意された舞台装置に過ぎない彼女に狩人はどんな感情を抱いたというのだろうか。
4146生命力のない硝子の瞳の色は薄く、どこを見据えているか分からないほどに儚げだった。
陶器で作られた球体人形が夢へと戻った狩人に向かい合う。灰色がかったブロンドが何処からか靡く風に揺れた。
狩人より幾分高い位置にあるその顔はあまりにも整い過ぎていた。人間味を削ぎ落としたように美しい顔を見つめていれば恭しく、人形が首を下げた。
「お帰りなさい。狩人様。」
ただの人形ではない。名前を持たない彼女の声は小鳥のように小さく可憐だった。人間のように嗜好を持つこともなく、ただ狩人の世話をするためだけに夢に用意された舞台装置に過ぎない彼女に狩人はどんな感情を抱いたというのだろうか。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ18血を吸った革靴がひどく重たい。中に海水が潜り込んだせいで一層重たく、さらには不快な冷たさがつま先を痺れさせている。悪夢は潮が引くように静かに終わったはずだった。ビルゲンワースの冒涜の果てに悪夢に潜み、子を産み落とした母の憎悪。母も亡くして生まれ落ちた子の嘆き。それらの命を絶って海に沈め、すべてに終止符を打ったはずだというのに悪夢は消えることはなかった。
館の主人を失っても館ごと消えるわけではないということなのだろうか。
人の気配もない。獣もいない。静謐と呼ぶには血腥さだけが残る悪夢の残留を一人の狩人は歩いていた。
実験棟の下に構えられた地下牢の石で作られた冷たい壁を手袋越しに撫でる。ここで幾ばくの命が失われたのだろうか。そして無念の死を遂げたのだろうか。正気を失った、ヴァルトールの同胞もまたここで正気は果てていた。医療教会が産み落とした負の産物に指で触れ、鼻腔で血の上に芽吹いた黴の匂いを確かめる。そこにあるのは確かな狂気と悲壮だけだった。
3396館の主人を失っても館ごと消えるわけではないということなのだろうか。
人の気配もない。獣もいない。静謐と呼ぶには血腥さだけが残る悪夢の残留を一人の狩人は歩いていた。
実験棟の下に構えられた地下牢の石で作られた冷たい壁を手袋越しに撫でる。ここで幾ばくの命が失われたのだろうか。そして無念の死を遂げたのだろうか。正気を失った、ヴァルトールの同胞もまたここで正気は果てていた。医療教会が産み落とした負の産物に指で触れ、鼻腔で血の上に芽吹いた黴の匂いを確かめる。そこにあるのは確かな狂気と悲壮だけだった。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ16鼓膜を揺らす声があった。
母を求め泣き叫び続ける赤子の声だ。止め処なくその鳴き声は延々と響き続け、息を吸って一息を置くような音までもがルドウイークの耳に届いていた。
鳴き声が果たしてがどこから響くのかを調べようにも、甲高い鳴き声は水の中で反響するかのように出所が掴むことができなかった。
その鳴き声は昼も夜も関係なしに響き続けた。時に頭の芯を揺らすように。脳の表面を逆撫でるように不快に響くその泣き声に耐えきれず、耳を塞いでは髪を掻き毟る。そんな日々が幾夜も続き、泣き声を掻き消す為だけに獣の断末魔を求めた。
狩りの中に身を置く瞬間だけ暫しの沈黙と癒しが訪れた。
そしてふと、輝く白刃を獣の血で染め抜いたある夜に気がついてしまったのだ。
7366母を求め泣き叫び続ける赤子の声だ。止め処なくその鳴き声は延々と響き続け、息を吸って一息を置くような音までもがルドウイークの耳に届いていた。
鳴き声が果たしてがどこから響くのかを調べようにも、甲高い鳴き声は水の中で反響するかのように出所が掴むことができなかった。
その鳴き声は昼も夜も関係なしに響き続けた。時に頭の芯を揺らすように。脳の表面を逆撫でるように不快に響くその泣き声に耐えきれず、耳を塞いでは髪を掻き毟る。そんな日々が幾夜も続き、泣き声を掻き消す為だけに獣の断末魔を求めた。
狩りの中に身を置く瞬間だけ暫しの沈黙と癒しが訪れた。
そしてふと、輝く白刃を獣の血で染め抜いたある夜に気がついてしまったのだ。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ15灰のように細かい雪が肩に薄く積もる。
それを払う剥き出しの指は血が凍るほど冷たく、骨の髄まで悴んでいた。身体中に浴びた血は冷えた肌には火傷をするほどの灼熱に感じたが、今となってはその熱と共に狩りの興奮と共に冷え込み、ただ煩わしい鉄錆くささだけを残していた。擦り切れた服の袖口で顔に浴びた血を拭えばシモンは疲れ切ったため息を漏らした。横目で見るのは石畳の上に倒れた、狼よりさらにひとまわり大きい黒毛並みの生えそろった獣だ。
黒い毛並みに半ば隠れた首から下げた狩人証だけが彼が教会に所属していた狩人であることを物語っている。今宵もまた、一人の狩人が獣に堕ちた。
瞳孔が歪に蕩け興奮に開ききっている。その瞳に宿るのは狩られることへの恐怖なのか、失いつつある自我か。引き攣った呼気の間に覗き見える歯はガタガタに崩れ、舌の色は燻んで紫色に染まっている。何より病の進行が窺えるのは膝下まで伸びた枯れ枝のような長い腕と、全身に生えそろった硬い毛だ。獣の病の兆候はとうに過ぎている。
7906それを払う剥き出しの指は血が凍るほど冷たく、骨の髄まで悴んでいた。身体中に浴びた血は冷えた肌には火傷をするほどの灼熱に感じたが、今となってはその熱と共に狩りの興奮と共に冷え込み、ただ煩わしい鉄錆くささだけを残していた。擦り切れた服の袖口で顔に浴びた血を拭えばシモンは疲れ切ったため息を漏らした。横目で見るのは石畳の上に倒れた、狼よりさらにひとまわり大きい黒毛並みの生えそろった獣だ。
黒い毛並みに半ば隠れた首から下げた狩人証だけが彼が教会に所属していた狩人であることを物語っている。今宵もまた、一人の狩人が獣に堕ちた。
瞳孔が歪に蕩け興奮に開ききっている。その瞳に宿るのは狩られることへの恐怖なのか、失いつつある自我か。引き攣った呼気の間に覗き見える歯はガタガタに崩れ、舌の色は燻んで紫色に染まっている。何より病の進行が窺えるのは膝下まで伸びた枯れ枝のような長い腕と、全身に生えそろった硬い毛だ。獣の病の兆候はとうに過ぎている。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ14「私には何もありません」
彼女が誰なのか、決して自分には知り得ないものなのだろう。
薄い陶器で作られた繊細な瞼を閉じ、ガラスの網膜に焼き付いた影を思い描く。
その姿は自分によく似ていた。まるで鏡に映った自分自身のように、灰色の髪も白い肌も、睫毛に縁取られた薄氷のような淡い碧眼も。
いいや、彼女の影が自分なのだろう。彼女が自身の獲物で腹部を貫いた、その時に噴き上がった赤い鮮血は生命そのものだった。滴る生命は火柱を上げて轟々と燃え盛る。自分は生きているのだと主張するように。
何よりも、気高く誰にも落とせはしない蝶のような優雅さと高潔さを備えていた。そう、人形であり名前も持たぬ自分には決して持ち得ぬものだ。
生命は炎となって輝く。胸に抱く高潔さは輝く瞳が物語る。
1958彼女が誰なのか、決して自分には知り得ないものなのだろう。
薄い陶器で作られた繊細な瞼を閉じ、ガラスの網膜に焼き付いた影を思い描く。
その姿は自分によく似ていた。まるで鏡に映った自分自身のように、灰色の髪も白い肌も、睫毛に縁取られた薄氷のような淡い碧眼も。
いいや、彼女の影が自分なのだろう。彼女が自身の獲物で腹部を貫いた、その時に噴き上がった赤い鮮血は生命そのものだった。滴る生命は火柱を上げて轟々と燃え盛る。自分は生きているのだと主張するように。
何よりも、気高く誰にも落とせはしない蝶のような優雅さと高潔さを備えていた。そう、人形であり名前も持たぬ自分には決して持ち得ぬものだ。
生命は炎となって輝く。胸に抱く高潔さは輝く瞳が物語る。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ10ここは地獄だ。そう独り言ちたのは帰る家を何年も前に無くしたような襤褸を纏った一人の男だ。目元は古びた包帯に巻かれ塞がれているが、不思議と視界に問題はなく岩場をゆっくりと降っていく。降る途中、目についたのは青白い肌をした巨人だ。その巨体に釣り合いの取れた大砲のような銃を構えている。
こちらに気がついていないのを幸いに、シモンは静かに弓を引いて狙いを定めた。毛髪のない巨人の頭だ。狙いを定める時間は短いにも関わらず、矢の切先は巨人の頭部を貫き脳漿をぶちまけた。巨人の命を刈り取ったのを見届ければ、またゴツゴツとした足場の悪い岩場を降る。
鼻につく血腥さはべっとりと張り付き、吐き気を誘った。
シモンは口と鼻を覆うように襟を立て、袖口で顔の半分を抑える。血の川が流れるのは一際目立つ、壮大な教会だった。地面を埋めつく夥しい量の血は教会から流れている。本来であれば救い手になる為の聖域だ。そこから穢らわしい血が溢れかえっているのだ。その悍ましさに身の毛がよだつのを堪え、慎重にその足を進めていった。べちゃりべちゃりと靴底を鳴らすのは血だけではない。砕けた肉片までもがへばり付いているのだ。
3362こちらに気がついていないのを幸いに、シモンは静かに弓を引いて狙いを定めた。毛髪のない巨人の頭だ。狙いを定める時間は短いにも関わらず、矢の切先は巨人の頭部を貫き脳漿をぶちまけた。巨人の命を刈り取ったのを見届ければ、またゴツゴツとした足場の悪い岩場を降る。
鼻につく血腥さはべっとりと張り付き、吐き気を誘った。
シモンは口と鼻を覆うように襟を立て、袖口で顔の半分を抑える。血の川が流れるのは一際目立つ、壮大な教会だった。地面を埋めつく夥しい量の血は教会から流れている。本来であれば救い手になる為の聖域だ。そこから穢らわしい血が溢れかえっているのだ。その悍ましさに身の毛がよだつのを堪え、慎重にその足を進めていった。べちゃりべちゃりと靴底を鳴らすのは血だけではない。砕けた肉片までもがへばり付いているのだ。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ9湯気の立つ内臓が凍った地面に打ち捨てられた。汚物のような黒い内臓が真っ白な雪を溶かしていく。まるで浄化だと、一人の男がせせら笑った。
一人の男が立つのはヤーナムの街の片隅だ。
獣が駆けずり回った石が張られた地面の至る場所が砕け、疎らな大きさの破片が歩くたびに蹴り上げられた。
不意に白い息を吐き零した男が何かを呟く。歌うように響いた声は低く、くぐもった笑いを含みながら。
「手こずらせやがって」
喉を鳴らした嘲笑が黒く澱んだ夜の闇の中に吸い込まれ、呑まれ、やがて静まり返った。訪れた静寂は冷たく、狂気を孕んでいる。
腐った汚泥のような血の臭い。生臭い獣の毛皮。ガスが噴き出す腐敗した内臓。
顔を顰めたくなる獣の死体を前に、男は静かな笑みを浮かべていた。
5487一人の男が立つのはヤーナムの街の片隅だ。
獣が駆けずり回った石が張られた地面の至る場所が砕け、疎らな大きさの破片が歩くたびに蹴り上げられた。
不意に白い息を吐き零した男が何かを呟く。歌うように響いた声は低く、くぐもった笑いを含みながら。
「手こずらせやがって」
喉を鳴らした嘲笑が黒く澱んだ夜の闇の中に吸い込まれ、呑まれ、やがて静まり返った。訪れた静寂は冷たく、狂気を孕んでいる。
腐った汚泥のような血の臭い。生臭い獣の毛皮。ガスが噴き出す腐敗した内臓。
顔を顰めたくなる獣の死体を前に、男は静かな笑みを浮かべていた。