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    ケント

    karakusa28883

    MOURNINGイライラするとタブレット食べるケントの話

    続きは書くかもしれないし書かないかもしれない
    ミントタブレット カーター・ホールは苛立っていた。
     会議室の大きなスクリーンの向こうには、無愛想な顔の官僚が映し出されている。1時間前からずっと同じ顔の男。たまに秘書らしい女性が資料を差し出してくるのを別にすれば、男は淡々とした様子で堅い言葉を並べ立てている。抑揚の乏しい口調。事務的で目の前の資料を読み上げているだけのように思える。
     これは到底話し合いとは言えないな。ケントは会議室の椅子の中に身を沈めながら思った。会合の前面に立ち、男と話しているカーターの苛立ち様と言ったら。極力冷静に、口調は静かに荒らげず、できるだけ感情的にならず、そう努めているようだったが、普段ならば必殺の戦鎚を振るう肩が小刻みに震え、テーブルを叩く指先が、木製の表面を傷つける。次は特注で作らせた高画質のスクリーンを殴って破壊するのではないかとさえ思えた。カーターはよく耐えている。ケント自身よりもずっと。彼は、上着の内ポケットからタブレットケースを取り出して、中のミントタブレットを一粒指先でつまむと、口の中へと運んだ。
    1927