サルベージ
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PAST【花言葉は、】過去作サルベージ。
kmt/ぎゆしの
花言葉は、『カアアアーーッ、死亡! 胡蝶シノブ死亡! 上弦ノ弐ト格闘ノ末死亡ーーーッ!』
ああ、とうとうあの約束を果たさないままになってしまった――
◇
「ねえ、冨岡さん。そのお花、なんて言うか知ってますか?」
「……知らん」
「房藤空木って言うんです。藤みたいで綺麗でしょう?」
「……そうだな」
「花言葉……は、もちろん知りませんよね」
「……」
「いつか、調べてみてくださいね」
「……なぜだ」
「冨岡さんに、房藤空木の花言葉を知ってほしいからです」
「胡蝶は知らないのか」
「私は知ってますよ。でも、教えません」
「……」
「ねえ、冨岡さん。約束ですよ。いつかきっと――」
◇
あの会話は、いつのことだっただろう。
4000ああ、とうとうあの約束を果たさないままになってしまった――
◇
「ねえ、冨岡さん。そのお花、なんて言うか知ってますか?」
「……知らん」
「房藤空木って言うんです。藤みたいで綺麗でしょう?」
「……そうだな」
「花言葉……は、もちろん知りませんよね」
「……」
「いつか、調べてみてくださいね」
「……なぜだ」
「冨岡さんに、房藤空木の花言葉を知ってほしいからです」
「胡蝶は知らないのか」
「私は知ってますよ。でも、教えません」
「……」
「ねえ、冨岡さん。約束ですよ。いつかきっと――」
◇
あの会話は、いつのことだっただろう。
E_m_box
MOURNING来年春に出す以龍本の没になったところ。昨日一日書いていたところほぼ没!悲しい!見てあげてほしい。ちょこちょこサルベージできたところもあるけれどほぼこの場面は消えた。 1363
小 雪
CAN’T MAKE2023.06.04に投稿したやつ久晋。
iドルパロが見たかったから前に呟いたネタサルベージしたんだけど…あんま要素詰め込めなかった…。
オチがいつも迷子。
※全てはこうだったらいいなの妄想です。 2385
kani10cauchi
MOURNING反導砲の青年が初めて下方された時に描いた下方修正中のカノーネとリア兄の妄想寸劇オチ無し漫画です。
dataをサルベージしたので供養としてお置いておきます。
数年前のものですので生暖かい目でご覧ください^^ 4
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PAST【クリスマスの装い】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第12回参加作品。
猫又と男子高校生とクリスマスの気配。
クリスマスの装い バイトからの帰り道――
帰路を急ぐ俺を呼ぶ声が塀の上から降ってきた。
「こんばんは、少年」
俺のことを〝少年〟なんて呼び方する奴はひとり……いや、一匹しかいない。眉をしかめて声のほうを見上げれば、顔なじみの猫又がなぜだかサンタの帽子を被って鎮座していた。
「それ、どうしたんだ?」
「これですか? 公園で昼寝してたら子どもに被せられたんです。意外と暖かいですよ」
当たり前のように俺の肩に飛び降りてきた猫又のその口ぶりからすると、どうやら気に入ったらしい。肩口で器用に丸まられると、帽子の飾りが頬をかすめて少しくすぐったい。
だがまあ。
「妖怪がクリスマスで浮かれた格好してるって、なんか面白いな」
「うるさいですよ!」
333帰路を急ぐ俺を呼ぶ声が塀の上から降ってきた。
「こんばんは、少年」
俺のことを〝少年〟なんて呼び方する奴はひとり……いや、一匹しかいない。眉をしかめて声のほうを見上げれば、顔なじみの猫又がなぜだかサンタの帽子を被って鎮座していた。
「それ、どうしたんだ?」
「これですか? 公園で昼寝してたら子どもに被せられたんです。意外と暖かいですよ」
当たり前のように俺の肩に飛び降りてきた猫又のその口ぶりからすると、どうやら気に入ったらしい。肩口で器用に丸まられると、帽子の飾りが頬をかすめて少しくすぐったい。
だがまあ。
「妖怪がクリスマスで浮かれた格好してるって、なんか面白いな」
「うるさいですよ!」
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PAST【ベッド争奪戦】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第11回参加作品。
猫又と男子高校生の陣取り合戦。
ベッド争奪戦 家に帰ると、すっかり顔なじみになってしまった猫又が我がもの顔で熟睡していた。
俺の部屋で。
俺のベッドのど真ん中で。
「……起きろ、猫又」
「んにゃむ……」
声をかけても、むにゃむにゃ寝言を言うばかりでいっこうに目を覚ます気配がない。うーん、腹立つな!
「だあーーーっ! 毎度毎度ひとの寝床を奪いやがって! おら! どけ!」
猫又をベッドから追い出そうとするが、小柄とはいえさすがは妖怪。まったくもってビクともしない。
しかし、ビクともしないということは。
「……おい、お前起きてんだろ」
「おや、バレましたか」
狸寝入りをかましてやがった猫又が涼しい顔でベッドから降りていく。
これにて、本日のベッド争奪戦は終了だ……やれやれ。
340俺の部屋で。
俺のベッドのど真ん中で。
「……起きろ、猫又」
「んにゃむ……」
声をかけても、むにゃむにゃ寝言を言うばかりでいっこうに目を覚ます気配がない。うーん、腹立つな!
「だあーーーっ! 毎度毎度ひとの寝床を奪いやがって! おら! どけ!」
猫又をベッドから追い出そうとするが、小柄とはいえさすがは妖怪。まったくもってビクともしない。
しかし、ビクともしないということは。
「……おい、お前起きてんだろ」
「おや、バレましたか」
狸寝入りをかましてやがった猫又が涼しい顔でベッドから降りていく。
これにて、本日のベッド争奪戦は終了だ……やれやれ。
ずのっこ
DOODLE【BJ】krk×先生ベッターであげてた漫画の続きっぽいやつです。
(追記:同じのサルベージして繋げました)
※ラフに近いのでめちゃ汚い
※直接描写は恥ずかしくて描けないいつものパターンですがアレな内容です。
パスは古の数字3文字です。 5
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PAST【何色なのか】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第10回参加作品。
猫又と男子高校生の縁の糸。
何色なのか「知ってますか、少年。運命の赤い糸って、実在するんですって。しかも、縁の糸は赤以外にもたくさん種類があるそうですよ」
「へえ……」
この世には、フィクションだと思われている妖怪だって当然のように存在するのだ。現に今、俺の目の前では猫又が俺のベッドの上で我がもの顔でくつろいでいる。
だから、縁の糸が存在したとしてもなんら不思議ではない。
「……で、それがどうしたんだ?」
「別に。先日、出雲のお祭りで縁結びを司る神様から聞いたのをふと思い出したので」
なんで神様の集まりに猫又が顔出してんだ……なんて、聞いてもろくな答えは返ってこないんだろうな。
「縁の糸ねえ……」
366「へえ……」
この世には、フィクションだと思われている妖怪だって当然のように存在するのだ。現に今、俺の目の前では猫又が俺のベッドの上で我がもの顔でくつろいでいる。
だから、縁の糸が存在したとしてもなんら不思議ではない。
「……で、それがどうしたんだ?」
「別に。先日、出雲のお祭りで縁結びを司る神様から聞いたのをふと思い出したので」
なんで神様の集まりに猫又が顔出してんだ……なんて、聞いてもろくな答えは返ってこないんだろうな。
「縁の糸ねえ……」
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PAST【向日葵】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第9回参加作品。
猫又と男子高校生と向日葵。
向日葵 我が家では、毎年夏になると向日葵が大輪の花を咲かせる。夏生まれの俺の花だからと、両親が庭の一画で育てているのだ。
俺は男なのになぜ花を育てるのか。
花=女の子のものと思っていた幼少期に両親に尋ねたことがある。
返ってきた答えは――
「向日葵のように明るく育ってほしいから……ね。暗い子だったんですか?」
「他人には見えないものが視える、聞こえないものが聴こえる……暗くならないほうが難しいだろ」
幸い、前述の通り両親から大事にされて育ったおかげで、そこまでひねくれずに済んだんだが。
「俺の分まで食うなよ、猫又」
「はいはい」
――今年も立派に咲いた向日葵から収穫した種をつまみながら、猫又と無駄話ができるぐらいには。
349俺は男なのになぜ花を育てるのか。
花=女の子のものと思っていた幼少期に両親に尋ねたことがある。
返ってきた答えは――
「向日葵のように明るく育ってほしいから……ね。暗い子だったんですか?」
「他人には見えないものが視える、聞こえないものが聴こえる……暗くならないほうが難しいだろ」
幸い、前述の通り両親から大事にされて育ったおかげで、そこまでひねくれずに済んだんだが。
「俺の分まで食うなよ、猫又」
「はいはい」
――今年も立派に咲いた向日葵から収穫した種をつまみながら、猫又と無駄話ができるぐらいには。
フジト🎹
DOODLE6月頃ツイッターに上げたダイユキ絵サルベージ(元ネタのツイート改変で)
「ごめん❄のり…この本全年齢だから…表紙もう入稿しちゃったべさ…」
「Dちゃん…これは?(あの顔」
「それは…!」
「そ。R18シール。オレは当日会場で表紙にコイツを貼ってもいいと思ってるんですけど?」
「ゆ…ゆぎのりぃ~!」
っていうデェユキちゃんは私の中に居るな…🤔
というツイートの描きたいところだけ描いたもの。
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PAST【狩猟本能】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第8回参加作品。
猫又と男子高校生と青い鳥。
狩猟本能 俺の部屋の勉強机の上には、幼い頃に親戚から旅行土産にともらった幸せの青い鳥の置き物がある。特に鳥が好きというわけではないけれど、一度飾ってからなんとなくそのままにしてあった。
知り合ってほどなくから何度となく勝手に俺の部屋に侵入りまくっている猫又は、どうやらその鳥がいたくお気に入りらしい。今日もまた、机の上に飛び乗ってフンフンと鼻を寄せている。
……正直言ってとても邪魔なんだが、言っても無駄なことは分かりきっているので大人しく我慢しよう。
「それ、落とすなよ」
「分かってますよ」
鳥を前足でちょいちょいとつつきながら、こちらに見向きもせずに返事をする猫又の金色の瞳は、まん丸に見開かれ爛々と輝いていた。
329知り合ってほどなくから何度となく勝手に俺の部屋に侵入りまくっている猫又は、どうやらその鳥がいたくお気に入りらしい。今日もまた、机の上に飛び乗ってフンフンと鼻を寄せている。
……正直言ってとても邪魔なんだが、言っても無駄なことは分かりきっているので大人しく我慢しよう。
「それ、落とすなよ」
「分かってますよ」
鳥を前足でちょいちょいとつつきながら、こちらに見向きもせずに返事をする猫又の金色の瞳は、まん丸に見開かれ爛々と輝いていた。
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PAST【ふわふわの目覚まし時計】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第7回参加作品。
猫又と男子高校生の休日の朝。
ふわふわの目覚まし時計 カーテンの隙間から差し込む陽射しにそろそろ起きなければと思いつつも、ベッドから離れがたい休日の朝――
まどろみに身を委ねる俺の頬に、ふと柔らかいものが触れたのを感じて意識が浮上する。なんだと思う間もなく、それは耳元へと移動してきた。
「ぶははっ! なんだよもう!」
あまりのくすぐったさに笑いながら目を開けば、枕元にゆらゆらと踊る二本の尻尾が。その持ち主はと見遣れば、小柄な猫又が丸まってスヤスヤと寝息をたてていた。
いつの間に侵入ってきたんだこいつ……。
起こされた腹いせに起こし返してやろうかとも思ったが、穏やかな寝顔にそんな邪気も削がれてしまう。
「……さて、起きるか」
俺は苦笑をこぼし、ウーンと伸びをした。
335まどろみに身を委ねる俺の頬に、ふと柔らかいものが触れたのを感じて意識が浮上する。なんだと思う間もなく、それは耳元へと移動してきた。
「ぶははっ! なんだよもう!」
あまりのくすぐったさに笑いながら目を開けば、枕元にゆらゆらと踊る二本の尻尾が。その持ち主はと見遣れば、小柄な猫又が丸まってスヤスヤと寝息をたてていた。
いつの間に侵入ってきたんだこいつ……。
起こされた腹いせに起こし返してやろうかとも思ったが、穏やかな寝顔にそんな邪気も削がれてしまう。
「……さて、起きるか」
俺は苦笑をこぼし、ウーンと伸びをした。
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PAST【器用な尻尾の産物】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第6回参加作品。
猫又と男子高校生と山盛りエノコログサ。
器用な尻尾の産物 家に帰ると、俺の部屋で大量のエノコログサ――ねこじゃらしが待っていた。
どこから持ってこられたかは分からんが、誰が持ってきたかは一目瞭然。
「猫又!」
「なんですか、少年?」
俺の怒声に、ねこじゃらしの山から猫又が顔を出す。
「なんですか? じゃないわ! 人のベッドの上に変な山を築くな!」
「変な、とは失礼な。エノコログサですよ」
「名前の話じゃねえ!」
だいたい、こんな大量にどうしたんだ。
尋ねてみれば、自分で摘んできたと言う。
「こう、ひょいっと採るのが楽しくなっちゃって」
山の中から数本、二股の尻尾で持ち上げて手折る仕草をしてみせる姿は、なるほど器用だ。
……だからって。
「なんで俺の部屋に持ってくるんだよーーー!」
339どこから持ってこられたかは分からんが、誰が持ってきたかは一目瞭然。
「猫又!」
「なんですか、少年?」
俺の怒声に、ねこじゃらしの山から猫又が顔を出す。
「なんですか? じゃないわ! 人のベッドの上に変な山を築くな!」
「変な、とは失礼な。エノコログサですよ」
「名前の話じゃねえ!」
だいたい、こんな大量にどうしたんだ。
尋ねてみれば、自分で摘んできたと言う。
「こう、ひょいっと採るのが楽しくなっちゃって」
山の中から数本、二股の尻尾で持ち上げて手折る仕草をしてみせる姿は、なるほど器用だ。
……だからって。
「なんで俺の部屋に持ってくるんだよーーー!」
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PAST【待宵月】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第5回参加作品。
猫又と男子高校生の満月前夜。
待宵月 自室のベッドに寝転がり本を読んでいると、頭上の窓の外が急に明るくなったように感じ、俺は光源を探して顔を上げた。するとそこには、雲間から姿を現した大きな月が。
「すげえ……満月かな」
「いいえ、待宵月ですよ」
……独り言への返事にももう慣れてしまった。
声がしたほうを見遣れば、やはりそこには、いつの間にか侵入ってきたらしい猫又の姿が。
「なんだって?」
「待宵月です。満月の一日前の月のことですよ」
「へえ……」
永く生きているだけあって、そういう知識は豊富なんだなあ。
「じゃあ、明日は満月か」
「そうですよ」
満月だと知ると、不思議と明日の夜が待ち遠しく感じてきた。月を愛でる日本人の性だろうか。
明日も晴れますように!
341「すげえ……満月かな」
「いいえ、待宵月ですよ」
……独り言への返事にももう慣れてしまった。
声がしたほうを見遣れば、やはりそこには、いつの間にか侵入ってきたらしい猫又の姿が。
「なんだって?」
「待宵月です。満月の一日前の月のことですよ」
「へえ……」
永く生きているだけあって、そういう知識は豊富なんだなあ。
「じゃあ、明日は満月か」
「そうですよ」
満月だと知ると、不思議と明日の夜が待ち遠しく感じてきた。月を愛でる日本人の性だろうか。
明日も晴れますように!
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PAST【ある朝の攻防】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第4回参加作品。
猫又と男子高校生の攻防。
ある朝の攻防「……猫又。なにやってんだ」
「見てのとおり遊んでます。少年はこれから学校ですか?」
「ああ、そうだよ! だから早く俺の靴から出ろ! 靴紐にじゃれるな! おろしたてなんだぞ!」
せっかくの新しい靴を履く前から毛だらけにされるなんて最悪だ!
しかし、ここで俺が怒り狂ったところでどこ吹く風だろう。妖怪は人間の都合なんてお構いなしなのだ。
気持ちを静めるために深呼吸を繰り返し、猫又を靴の中から追い出す。よかった、思ったより毛は付いていない。
諦め悪く伸びてくる前脚を避けながら靴を履き終え立ち上がれば、猫又が音もなく肩に飛び乗ってきた。
「……学校まではついてくんなよ」
「分かってますよ」
そのニヤニヤ笑い、信用できねえな!
335「見てのとおり遊んでます。少年はこれから学校ですか?」
「ああ、そうだよ! だから早く俺の靴から出ろ! 靴紐にじゃれるな! おろしたてなんだぞ!」
せっかくの新しい靴を履く前から毛だらけにされるなんて最悪だ!
しかし、ここで俺が怒り狂ったところでどこ吹く風だろう。妖怪は人間の都合なんてお構いなしなのだ。
気持ちを静めるために深呼吸を繰り返し、猫又を靴の中から追い出す。よかった、思ったより毛は付いていない。
諦め悪く伸びてくる前脚を避けながら靴を履き終え立ち上がれば、猫又が音もなく肩に飛び乗ってきた。
「……学校まではついてくんなよ」
「分かってますよ」
そのニヤニヤ笑い、信用できねえな!
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PAST【見送る側】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第3回参加作品。
猫又と男子高校生と別れの季節。
見送る側 春は出会いと別れの季節とよく言うが、三月は卒業シーズンなのもあって、出会いより別れの気配を色濃く感じる。
かくいう俺も、この時期になると決まって、幼い頃海外に引っ越す幼なじみを空港で見送った日のことを思い出してしんみりしてしまう。今でも手紙やメッセージのやり取りは続いているけれど、直接会えないのはやはり寂しいものだ。
(二度と会えないとなると、なおさらだろうな……)
猫又は何百年と生きてきたのだ。
途方もない時間の中、何度大切なものを見送ってきたのだろう。
いつも散々からかわれている身としては仕返しできるネタは大変貴重だが、猫又の瞳に時おり寂しさが滲むのを、俺は気づかないふりをしておいてやろうと決めた。
336かくいう俺も、この時期になると決まって、幼い頃海外に引っ越す幼なじみを空港で見送った日のことを思い出してしんみりしてしまう。今でも手紙やメッセージのやり取りは続いているけれど、直接会えないのはやはり寂しいものだ。
(二度と会えないとなると、なおさらだろうな……)
猫又は何百年と生きてきたのだ。
途方もない時間の中、何度大切なものを見送ってきたのだろう。
いつも散々からかわれている身としては仕返しできるネタは大変貴重だが、猫又の瞳に時おり寂しさが滲むのを、俺は気づかないふりをしておいてやろうと決めた。
u_tm_275
PAST【嘘か、真か、】過去作サルベージ。
毎月300字小説企画第2回参加作品。
猫又と男子高校生とチョコレート。
嘘か、真か、 バレンタインデーが近づくと、どこもかしこもチョコレートの甘い匂いで満ちてくる。甘いもの好き、とくにチョコ好きな俺にとっては嬉しい限りだ。
近頃は逆チョコなるものもメジャーになってきたおかげで、男がバレンタイン向けの催事場にいても白い目で見られないのもまた嬉しい。
ここぞとばかりに気になっていたチョコをいくつか自分用に見繕い、ホクホクしながら帰路に着くと、肩の上から憐れむような声が降ってきた。
「自分でチョコレートを購入って……」
「うるさいぞ、猫又! 自分が食いたいもんを自分で買ってなにが悪い!」
もらえないから買ってるんじゃないし! 毎年ちゃんと女子からもらってるし! ……おい、なんだその顔! 嘘じゃないぞ!
331近頃は逆チョコなるものもメジャーになってきたおかげで、男がバレンタイン向けの催事場にいても白い目で見られないのもまた嬉しい。
ここぞとばかりに気になっていたチョコをいくつか自分用に見繕い、ホクホクしながら帰路に着くと、肩の上から憐れむような声が降ってきた。
「自分でチョコレートを購入って……」
「うるさいぞ、猫又! 自分が食いたいもんを自分で買ってなにが悪い!」
もらえないから買ってるんじゃないし! 毎年ちゃんと女子からもらってるし! ……おい、なんだその顔! 嘘じゃないぞ!