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TRAININGサテヨモが謎の喧嘩をして弟君が兄貴の背中を押す話。弟君は相手が誰か薄々知ってる。
理解不能の恋「兄ちゃんさ、好きな人居るだろ」
「うぇ⁉︎」
弟の部屋に漫画を借りにきて、まさかそんなことを聞かれるとは思ってなかった。家族の誰にも話してなかったことだ。何か露骨な態度をしていたんだろうか?
「な、何で?」
「行動見てたらなんとなくわかる」
弟の視線が俺を捕えてる。うわぁ……。
「兄ちゃん、結構前からミスドの常連なのに家に持って帰ってこないし」
「ぐっ……!」
「家に戻ってくる時間も不規則だし」
「うぅっ」
「念入りに風呂入ってから出かけるし」
「ワーーーッ!」
俺は弟に土下座した。このことは親には内密に、と。何れ話さねばならないことだけど、今はちょっと、かなり、無理だ。
「……兄ちゃん、その人と結婚する気なの?」
1913「うぇ⁉︎」
弟の部屋に漫画を借りにきて、まさかそんなことを聞かれるとは思ってなかった。家族の誰にも話してなかったことだ。何か露骨な態度をしていたんだろうか?
「な、何で?」
「行動見てたらなんとなくわかる」
弟の視線が俺を捕えてる。うわぁ……。
「兄ちゃん、結構前からミスドの常連なのに家に持って帰ってこないし」
「ぐっ……!」
「家に戻ってくる時間も不規則だし」
「うぅっ」
「念入りに風呂入ってから出かけるし」
「ワーーーッ!」
俺は弟に土下座した。このことは親には内密に、と。何れ話さねばならないことだけど、今はちょっと、かなり、無理だ。
「……兄ちゃん、その人と結婚する気なの?」
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TRAININGあの日と今の景色は、似ているようで違うブルーアワーに、君と そうか、夜明け前にはこんなに鳥が鳴くんだな。知っていた筈なのに、すっかり忘れていた。
あの頃、家族の誰よりも先に起きて、コロと散歩に行った。遠く日の出を臨む河川敷はまだ寒くて、暖かいコロを腕に抱いて一休みして、また歩く。周りが明るくなるまでずっと歩いて、人の姿が増え始める前に帰った。
「散歩に行く」
と言ったら、サテツ君は飛び起きて身支度を始めた。俺様がすっかり着替えていたから慌てたんだろう。一緒に来いとは言ってないんだが。
家を出る前、体調はどうかと聞かれた。調子が悪かったら散歩になんぞ行くか。……まぁ、腰は少々痛むが、いつものことだ。
外は、存外に寒かった。
川や地面に靄がかかっている。こんな時間から走っている馬鹿が居たから、仕方なく道を外れてそのまま土手に降りた。
580あの頃、家族の誰よりも先に起きて、コロと散歩に行った。遠く日の出を臨む河川敷はまだ寒くて、暖かいコロを腕に抱いて一休みして、また歩く。周りが明るくなるまでずっと歩いて、人の姿が増え始める前に帰った。
「散歩に行く」
と言ったら、サテツ君は飛び起きて身支度を始めた。俺様がすっかり着替えていたから慌てたんだろう。一緒に来いとは言ってないんだが。
家を出る前、体調はどうかと聞かれた。調子が悪かったら散歩になんぞ行くか。……まぁ、腰は少々痛むが、いつものことだ。
外は、存外に寒かった。
川や地面に靄がかかっている。こんな時間から走っている馬鹿が居たから、仕方なく道を外れてそのまま土手に降りた。
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TRAINING拳兄に「アンタあの左手の義手がカッケーあんちゃんと付き合ってんのかい?」とか聞かれてハ?と首を傾げるヨモツザカさん「惚気てんじゃねぇぞ」「アレは義手ではなくて『シンヨコハマニウム合金』のアタッチメントアームだ。因みに俺様はアレを1ミリも持ち上げることができん。全く、馬鹿力にも程がある。何回か筋肉組織を調べさせて貰ったが、どうやったら普通の人間があんな筋力と胃袋に育つのか未だ解明できん——ん? ああ、知らんのか。餌を前に『待て』は出来るが、例えばカレーのトッピング全部増しが最大五杯までおかわり自由なら五杯まで食うし、バイキングならトレイごと行く。しかもよく噛んで食べる。そこは偉いと思う」
「あー、うん。それで?」
「八個入りのドーナツなら二個は俺様で残りは彼が一瞬で食う。どんな強靭な顎をしてるのか調べてもみたが至って普通なのがムカついたな。あれだけ食べて体脂肪が一桁台なのがさらに小癪だ」
402「あー、うん。それで?」
「八個入りのドーナツなら二個は俺様で残りは彼が一瞬で食う。どんな強靭な顎をしてるのか調べてもみたが至って普通なのがムカついたな。あれだけ食べて体脂肪が一桁台なのがさらに小癪だ」
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TRAINING「頭を撫でる時は何故か刺さらないサテツの剛毛の謎を探るため、私たちはシンヨコの奥地へと飛んだ」剛毛七不思議 よし、そのまま待てだ。
まぁ困惑するのもわかる。俺様は君の髪をシーズーのように結びたいだけだ。は? 特に理由はない。
頭の天辺に結ぶ分だけ髪を寄せて、と……痛い! 毛が刺さった!
……大丈夫だ。血は然程出てない。
しかし、頭を撫でる時は何故刺さらないんだ? 君の髪は理解不能だな。
145まぁ困惑するのもわかる。俺様は君の髪をシーズーのように結びたいだけだ。は? 特に理由はない。
頭の天辺に結ぶ分だけ髪を寄せて、と……痛い! 毛が刺さった!
……大丈夫だ。血は然程出てない。
しかし、頭を撫でる時は何故刺さらないんだ? 君の髪は理解不能だな。
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TRAININGコロの声真夜中の流砂 整った筋肉の奥、首筋を辿ればトクトクと規則正しく送り出される血流がある。
自分が再び他の命を側に置くことになるとは思ってもみなかった。案外自分はチョロい人間なのかもしれない。
彼の逞しい腕にすっぽりと抱かれて眠る時、時折何処かで砂の流れるような音が聞こえる。
ああ、分かってる。お前だけだ。
◇
枯れ枝の集合体のように見えて意外とタフな体。そうわかっていても側で守りたくてたまらない。薄い皮膚の奥には確かに熱があって、感じる度に安心と不安が綯い交ぜになる。
彼を懐に抱いて眠る時、どこかで砂の流れる音を聞くことがある。
ごめん。でも、俺たち仲良くなれる気がするんだ。駄目かな?
305自分が再び他の命を側に置くことになるとは思ってもみなかった。案外自分はチョロい人間なのかもしれない。
彼の逞しい腕にすっぽりと抱かれて眠る時、時折何処かで砂の流れるような音が聞こえる。
ああ、分かってる。お前だけだ。
◇
枯れ枝の集合体のように見えて意外とタフな体。そうわかっていても側で守りたくてたまらない。薄い皮膚の奥には確かに熱があって、感じる度に安心と不安が綯い交ぜになる。
彼を懐に抱いて眠る時、どこかで砂の流れる音を聞くことがある。
ごめん。でも、俺たち仲良くなれる気がするんだ。駄目かな?
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TRAINING事後のニューヨークタイムズアフタートーク「ここのバスタブに湯なんか溜めたことがない」
と、彼に言われたときは一瞬言葉に迷ったのを覚えてる。そりゃ湯を張ったまま寝落ちしたら下手すると死んでしまうし、彼なら面倒だからとシャワーだけで済ませそうだ。それに、そもそもこの自宅に帰ること自体が月に一回程度だと云うから、仕方ないのかもなぁと、それはそれで納得したんだけれど。
「君が入れたいなら入れてもかまわんぞ」
お湯を、と。
俺の方を伺う無言の気配と、何やら含みが無さそうで有りそうな彼の口元に突き動かされて、上気した顔のまま振り絞った言葉は、
「一緒にお風呂に入ってください」
だった。
偶然引き当てた最適解。ナイス俺。
現に今、俺は彼と明け方の風呂を満喫している。ちょっと横に窮屈なのは俺のせいだ。ちゃんと大きくて深めの湯船は身長の高さをカバーしてくれるし、お湯のかさが増すから彼の肩が冷えることもないと思う。
756と、彼に言われたときは一瞬言葉に迷ったのを覚えてる。そりゃ湯を張ったまま寝落ちしたら下手すると死んでしまうし、彼なら面倒だからとシャワーだけで済ませそうだ。それに、そもそもこの自宅に帰ること自体が月に一回程度だと云うから、仕方ないのかもなぁと、それはそれで納得したんだけれど。
「君が入れたいなら入れてもかまわんぞ」
お湯を、と。
俺の方を伺う無言の気配と、何やら含みが無さそうで有りそうな彼の口元に突き動かされて、上気した顔のまま振り絞った言葉は、
「一緒にお風呂に入ってください」
だった。
偶然引き当てた最適解。ナイス俺。
現に今、俺は彼と明け方の風呂を満喫している。ちょっと横に窮屈なのは俺のせいだ。ちゃんと大きくて深めの湯船は身長の高さをカバーしてくれるし、お湯のかさが増すから彼の肩が冷えることもないと思う。
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TRAININGサテ君はね、初めてヨモの家に行った時、狭くはないけど必要最低限のものだけあって生活感のまるでない部屋に1人佇むヨモを見て、ものすごく切なくなったの。この人はどうして、こんなにも寂しいんだろうって。世界の果ての話 非番の夜、眠りが浅かったのか夜中に目が覚めてしまった。午前三時四十分。あと少しで夜明けの匂いがしてくる頃。
眠らない街のあの喧騒も、ここでは遠い世界のことのように思えた。隣で小さく寝息を立てる彼の、心臓の鼓動が響いてきそうな、静かな夜の静かな家。
彼が滅多にこの家に帰らなかった理由が、今なら分かる。ここには機械音も人の気配も吸血鬼達の騒がしさも無くて、初めてきた時は静かで寂しい場所だと思った。だから、ここに来る時はなるべく彼と話すようにしている。
居間でレンタル映画を見て、テーブルで一緒にご飯を食べる。寝室では、会話にならなくても会話する。こうしてただ眠る時も、出来るだけ寄り添うようにする。
一人と一匹だけじゃないことを感じて欲しくて、俺は彼の領域に踏み込む。叱られたって構わない。叱ってくれることが嬉しいから。
552眠らない街のあの喧騒も、ここでは遠い世界のことのように思えた。隣で小さく寝息を立てる彼の、心臓の鼓動が響いてきそうな、静かな夜の静かな家。
彼が滅多にこの家に帰らなかった理由が、今なら分かる。ここには機械音も人の気配も吸血鬼達の騒がしさも無くて、初めてきた時は静かで寂しい場所だと思った。だから、ここに来る時はなるべく彼と話すようにしている。
居間でレンタル映画を見て、テーブルで一緒にご飯を食べる。寝室では、会話にならなくても会話する。こうしてただ眠る時も、出来るだけ寄り添うようにする。
一人と一匹だけじゃないことを感じて欲しくて、俺は彼の領域に踏み込む。叱られたって構わない。叱ってくれることが嬉しいから。
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TRAININGサテヨモログ綿飴みたいに甘い ゴォゴォと、ドライヤーの騒音が居間に響く。無言なのもどうかと思い、話題に困ってつい何気なく「髪、すごく長いですね」と聞いたに過ぎなかったのに、相手の反応が「ああ」だけだったのでサテツはますます困ってしまった。
〝髪を乾かす〟という権利を得た今、改めて得られる情報量は意外と多い。サテツは感慨深くその薄青色を見つめて、そして触れた。枯れ枝に少し肉をつけた程度の身体と同じく、ヨモツザカの髪は温風を吹かせば容易く舞うほど細かった。自分が1なら0・2くらいかな、などと認識してしまうと髪を梳く動作も自然と慎重になった。
「君はなぜ髪を伸ばしてるんだ?」
「え、俺ですか?」
予想外の問いかけに、サテツはドライヤーを弱にして言葉に迷う。でもヨモツザカの前で嘘はつきたくなかったので、素直に「短いと刺さるんです」と答えた。過去、サテツは個性が欲しくて悩んだ末に短髪にしたことがある。だが、物珍しさに触れてきたロナルドの掌を穴だらけにした時から「ウニ」「イガグリ」「剣山」「ハリセンボン」とまさに頭から生える凶器扱いされて、盛大にへこんだ。その翌朝には枕カバーに無数の穴が空いた。サテツは大いに泣いた。今思い出してもテンションが下がる。
850〝髪を乾かす〟という権利を得た今、改めて得られる情報量は意外と多い。サテツは感慨深くその薄青色を見つめて、そして触れた。枯れ枝に少し肉をつけた程度の身体と同じく、ヨモツザカの髪は温風を吹かせば容易く舞うほど細かった。自分が1なら0・2くらいかな、などと認識してしまうと髪を梳く動作も自然と慎重になった。
「君はなぜ髪を伸ばしてるんだ?」
「え、俺ですか?」
予想外の問いかけに、サテツはドライヤーを弱にして言葉に迷う。でもヨモツザカの前で嘘はつきたくなかったので、素直に「短いと刺さるんです」と答えた。過去、サテツは個性が欲しくて悩んだ末に短髪にしたことがある。だが、物珍しさに触れてきたロナルドの掌を穴だらけにした時から「ウニ」「イガグリ」「剣山」「ハリセンボン」とまさに頭から生える凶器扱いされて、盛大にへこんだ。その翌朝には枕カバーに無数の穴が空いた。サテツは大いに泣いた。今思い出してもテンションが下がる。
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TRAININGサテヨモログ恋とは狂気である さっきまで目が離せなかったのに、今は顔を見るのが怖い。だって、初めて彼にキスをした。背中の糸屑を取ろうとしただけなのに、間近で彼の口元を見てしまったらもう、迷いより体が先に動いてしまった。
仮面にぶつからないように顔を傾けて、見たまんま薄くて、思ってたより温かい唇に三秒ほど触れた。子供でもできる幼稚なキスだと思う。けど、キスはキスだ。抵抗はされなかった。ポジティブに捉えてもいいのかわからなくて、俯いたまま指先の糸屑を見ていた。朱色の糸屑。彼には馴染みのない色。どうして付いてたのかは分からない。
「——やっとか」
「え?」
顔を上げようとした。けど、急に彼に頭を押さえられて動けなくなる。
「フン、何もしてこないから、てっきり正気に戻ったのかと思ったが。俺様の予測が甘かったな」
1419仮面にぶつからないように顔を傾けて、見たまんま薄くて、思ってたより温かい唇に三秒ほど触れた。子供でもできる幼稚なキスだと思う。けど、キスはキスだ。抵抗はされなかった。ポジティブに捉えてもいいのかわからなくて、俯いたまま指先の糸屑を見ていた。朱色の糸屑。彼には馴染みのない色。どうして付いてたのかは分からない。
「——やっとか」
「え?」
顔を上げようとした。けど、急に彼に頭を押さえられて動けなくなる。
「フン、何もしてこないから、てっきり正気に戻ったのかと思ったが。俺様の予測が甘かったな」
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TRAININGサテヨモログトライアンドエラー「だ、…………抱きしめても、いい、ですか……?」
サテツ君の手が、宙を掴むような状態で固まっていた。目は真っ直ぐこちらを見ているが、これではまるで紙相撲の力士だ。彼が何を躊躇しているのか、全くわからない俺様ではないけれども。
「なんだ、さっさと抱きしめろ」
今日はどうも寒くてかなわん、と言えば、おずおずと壊れ物に触れるような仕草で背を抱かれた。酷くもどかしい、何の圧も感じないのに熱い掌。
「……君の力は、弱いものを傷つけたりしない」
「……こ、子供なら、手加減できます、でも」
言い淀む声が、肩口で震えた。
「あなたは、子供じゃない……から、抱き潰してしまいそうで、怖いんです」
……おい、ベソをかくな。俺様のフォローが台無しになるだろうが。
560サテツ君の手が、宙を掴むような状態で固まっていた。目は真っ直ぐこちらを見ているが、これではまるで紙相撲の力士だ。彼が何を躊躇しているのか、全くわからない俺様ではないけれども。
「なんだ、さっさと抱きしめろ」
今日はどうも寒くてかなわん、と言えば、おずおずと壊れ物に触れるような仕草で背を抱かれた。酷くもどかしい、何の圧も感じないのに熱い掌。
「……君の力は、弱いものを傷つけたりしない」
「……こ、子供なら、手加減できます、でも」
言い淀む声が、肩口で震えた。
「あなたは、子供じゃない……から、抱き潰してしまいそうで、怖いんです」
……おい、ベソをかくな。俺様のフォローが台無しになるだろうが。
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TRAININGサテヨモログ愛してもいいかな「気分はどうですか?」
と問うと、彼はぼんやりとしたまま「悪くない」と言って、ベッドから起き上がったその足でまっすぐソファの上の犬用ベッドに向かい、静かに眠る愛犬に「おはよう」と挨拶をした。
ブランケットの上から撫でるその手は優しくて、俺はその瞬間いつも釘付けになってしまう。
彼が洗面所で顔を洗っている間、俺はソファに座って秘密の会話をする。
おはよう。
今日は雨だね。
昨日は君のご主人様を独り占めしてごめん。
君は俺のことどう思ってる?
俺たちきっと仲良くなれると思うんだ。
フラスコの中で静かに眠る君を、俺も愛したいんだけど、駄目かな?
俺はソファから立ち上がって、弱火で温めていた玉子粥をお椀によそう。最近は消化の良いもの限定で朝食を食べてくれるようになったから嬉しい。
404と問うと、彼はぼんやりとしたまま「悪くない」と言って、ベッドから起き上がったその足でまっすぐソファの上の犬用ベッドに向かい、静かに眠る愛犬に「おはよう」と挨拶をした。
ブランケットの上から撫でるその手は優しくて、俺はその瞬間いつも釘付けになってしまう。
彼が洗面所で顔を洗っている間、俺はソファに座って秘密の会話をする。
おはよう。
今日は雨だね。
昨日は君のご主人様を独り占めしてごめん。
君は俺のことどう思ってる?
俺たちきっと仲良くなれると思うんだ。
フラスコの中で静かに眠る君を、俺も愛したいんだけど、駄目かな?
俺はソファから立ち上がって、弱火で温めていた玉子粥をお椀によそう。最近は消化の良いもの限定で朝食を食べてくれるようになったから嬉しい。
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TRAINING花を散らす生成のニットカーディガンと紺のサテンのパジャマ。サテツが真冬の前に買って彼に贈ったものだ。それを今度はベッドの上で丁寧に剥いでいく。美しい花弁を摘むような罪悪感と、謎の高揚。
「服を贈るのは脱がすためらしいな」
彼の愉悦の笑みに赤面で答えながら、サテツは最後のボタンに手をかけた。
141「服を贈るのは脱がすためらしいな」
彼の愉悦の笑みに赤面で答えながら、サテツは最後のボタンに手をかけた。
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TRAINING一日一本「おやすみ前の推しCPの短文」をツイートしていこうという企画。基本140文字。夜の話とか、布団に入った後の話とか、寝る前の風呂の話とか、他愛もない会話とか。こちらでは加筆してます。
ピレニアン・マウンテンドッグかい? 先に寝てろと言われたけど、ネット通話の様子が気になって眠れなくなった。そろりとベッドから抜け出して、台所で作った白湯をPC台に置くと、映らない範囲のソファに座って彼の英語だか独語だかをじっと聞いていた。内容が全く謎だ。
真夜中の国際会議も大変だなぁ。
「ist er deine Familie Oder Liebhaber」
「Nein, er ist ein Haustier」
「Wow」
203真夜中の国際会議も大変だなぁ。
「ist er deine Familie Oder Liebhaber」
「Nein, er ist ein Haustier」
「Wow」
dps94kakuriyo
TRAINING一日一本「おやすみ前の推しCPの短文」をツイートしていこうという企画。基本140文字。夜の話とか、布団に入った後の話とか、寝る前の風呂の話とか、他愛もない会話とか。※ポイピクにまとめる時は加筆修正もあり。
実家のミニバンだけど いつもの家への道中、助手席の彼はどうやらぐっすりと寝ているようだった。俺はラジオの音量を下げながら、果たして彼が到着後に起きてくれるか考えた。
無理かもなぁ……。
時間はまだ日付が変わる前だ。毛布もあるし、起きないなら車中泊でもいいかな、なんて気取ったことを考えてしまった。
140無理かもなぁ……。
時間はまだ日付が変わる前だ。毛布もあるし、起きないなら車中泊でもいいかな、なんて気取ったことを考えてしまった。
dps94kakuriyo
TRAINING一日一本「おやすみ前の推しCPの短文」をツイートしていこうという企画。基本140文字。夜の話とか、布団に入った後の話とか、寝る前の風呂の話とか、他愛もない会話とか。※ポイピクにまとめる時は加筆修正もあり。
おやすみなさい、良い夢を「おやすみなさい」
と告げる頃にはもう彼は殆ど眠りの淵に居て、唇が微かに動いたけれど音にはならなかった。隣で安らいでくれることが嬉しくて、つい寝顔を眺めてしまう。整った呼吸が愛おしい。そうして同じリズムで息をしてると、俺の瞼も重くなっていく。
起こさないように、彼の指先にそっと触れた。
145と告げる頃にはもう彼は殆ど眠りの淵に居て、唇が微かに動いたけれど音にはならなかった。隣で安らいでくれることが嬉しくて、つい寝顔を眺めてしまう。整った呼吸が愛おしい。そうして同じリズムで息をしてると、俺の瞼も重くなっていく。
起こさないように、彼の指先にそっと触れた。
RUKE
MAIKINGサテヨモ#1 肩にかかる息が熱い。自身より大きく分厚い身体の足の間に抱え込まれるようにして座らされているせいで、少し身動きを取るだけで直接熱を感じてしまう。
緊張を誤魔化そうと手を彷徨わせるが、硝子の冷たさを感じる事はできず、──当たり前だ。いつも側にいる重さは、こんな事見せるべきでは無いと毛布に包んでリビングに置いてきたのだから──しょうがなくせめてもと投げ出していた脚を引き寄せた。
くんくんと首筋を辿る鼻先が擽ったい。時折触れるカサついた唇がなんとも言えない気持ちにさせる。はぁはぁと乱れた呼吸音にカチャカチャという、金属音。
鼓膜を揺らすその音に、ぞくりと肌が泡立って、更に脚を引き寄せようとしたが柔軟性にかける己の体では無理だった。
579緊張を誤魔化そうと手を彷徨わせるが、硝子の冷たさを感じる事はできず、──当たり前だ。いつも側にいる重さは、こんな事見せるべきでは無いと毛布に包んでリビングに置いてきたのだから──しょうがなくせめてもと投げ出していた脚を引き寄せた。
くんくんと首筋を辿る鼻先が擽ったい。時折触れるカサついた唇がなんとも言えない気持ちにさせる。はぁはぁと乱れた呼吸音にカチャカチャという、金属音。
鼓膜を揺らすその音に、ぞくりと肌が泡立って、更に脚を引き寄せようとしたが柔軟性にかける己の体では無理だった。