mizus_g
REHABILI去年秋にいただいたシチュエーションを書いていくリハビリ3つめうまく一線を越えられなくてモダモダしているパジ、というものだったのですがキスしそうでいつまでもしないパジは良いものですね…!
グラサイにふたりとも乗ってる時空です。深夜にこっそり二人で酒を飲んでてほしい。
パーシヴァルの顔が近づいてきて、じっと見つめてくる澄んだ赤い瞳が迫ってきて、吐息の気配、体温と熱、肌で直に感じるそれらを受け入れたときに、ああ、キスされるのか――と、思って瞳を閉じたところで、ジークフリートはふいに熱っぽい圧から解放されて拍子抜けする。
緊張して身構えた唇がこわばったまま放り出される。瞳を開ければ目の前では何やら苦虫を噛み潰したような顔のパーシヴァルが気まずそうに赤面していた。
もしかして俺は何か間違っていたのだろうか。受け入れるにあたって言わねばならぬ台詞でもあったか、あるいは表情や佇まいに不足があったのか? しかしキスひとつ程度、厳密な手順があるわけでもないはず――と、思うのだが。
3119緊張して身構えた唇がこわばったまま放り出される。瞳を開ければ目の前では何やら苦虫を噛み潰したような顔のパーシヴァルが気まずそうに赤面していた。
もしかして俺は何か間違っていたのだろうか。受け入れるにあたって言わねばならぬ台詞でもあったか、あるいは表情や佇まいに不足があったのか? しかしキスひとつ程度、厳密な手順があるわけでもないはず――と、思うのだが。
mizus_g
REHABILI去年の秋にいただいたリクエストというかシチュエーションで「去年のイベント後、ウェールズに帰るパに、見えない不安を隠して寂しい気持ちを持っているジ、寂しさを嗅ぎ取ってギュンとくるパ」というものだったのですが想定よりジが素直になった気がしないでもない……けど寂しがるジってかわいいなあ。だいぶ時間経ってしまいましたがその節はコメントありがとうございました!
※イベント後の出来事については捏造です
アルバノルムの軍勢が国境近くへ侵攻しているという情報が入ってから、数日。フェードラッヘは陣を敷いた軍勢を下手に刺激することのないようにと国境よりやや手前に騎士団の一隊を展開した。迎撃するには規模の足りぬ小隊であったが、背後の駐屯地にはいつでも援軍を出せるようにと騎士達が詰めている。しかし、敵勢と思しき軍は国境の僅か手前でぴたりと進軍を止め、動きの無いまま既に三日が経過していた。こちらの出方を窺っているか、あるいは何らかの事情があるのか――いずれにしろ攻め入ってこない以上はこちらから仕掛けることに大義は無い。動くに動けぬまま、前線や駐屯地では初日の緊張感が薄れ始めているとのことで、明日になって夜が明けても動きが無いようならば騎士団長であるランスロットが国境に赴いて様子を確認するという予定になっている。
3289mizus_g
REHABILIしばらくリハビリする!11月にWaveBoxでいただいたネタをつかわせていただきます(その説はありがとうございます間が空いてしまってすみません あとリハビリ的な万全でない状態での消化ですみません…)これはギュステでいちゃつくパージク 11月初旬当時まだそこそこ暑かったですよね※あとで直すかもしれないです
「何処へ行っていた」
「沖だ」
短く答えると、パーシヴァルはサングラスを持ち上げながら紅い瞳を細めてジークフリートを見上げた。
その瞼と睫毛には傾き始めた西陽の色が宿って艶めいている。水着でビーチチェアに寝そべる姿は彼らしい品の良さを備えつつも優美で、ジークフリートはふと、ずぶ濡れの戦闘用水中着を身につけて無骨な武器を携えた自身の容姿を省みた。
こういうふうに自分の見た目に意識が行くようになったのはつい最近のことだ。最近――つまり、具体的に言えばパーシヴァルと恋人同士のような関係性になった少し後の頃合いから、急に思考が及ぶようになった。とはいえ、いつ何度考えてみたところで自分の姿が彼と様子を異にすることが理解できるだけで、そのことが持ち含む意味や良し悪しについてはよくわからない。
3106「沖だ」
短く答えると、パーシヴァルはサングラスを持ち上げながら紅い瞳を細めてジークフリートを見上げた。
その瞼と睫毛には傾き始めた西陽の色が宿って艶めいている。水着でビーチチェアに寝そべる姿は彼らしい品の良さを備えつつも優美で、ジークフリートはふと、ずぶ濡れの戦闘用水中着を身につけて無骨な武器を携えた自身の容姿を省みた。
こういうふうに自分の見た目に意識が行くようになったのはつい最近のことだ。最近――つまり、具体的に言えばパーシヴァルと恋人同士のような関係性になった少し後の頃合いから、急に思考が及ぶようになった。とはいえ、いつ何度考えてみたところで自分の姿が彼と様子を異にすることが理解できるだけで、そのことが持ち含む意味や良し悪しについてはよくわからない。
mizus_g
DONEワンライお題「指輪」(パージク)+0.5hくらい
「手を出せ」
唐突にそう言われて、ジークフリートは不思議に思いながらも両手を顔の前に出し、左右とも五指を拡げた。
「こうか?」
ろくに説明も無いまま何かを求めるなど、パーシヴァルにしては珍しい。彼に限って悪さをすることは無いであろうが、どういうつもりなのだろう。
「そうではない。こっちだ」
パーシヴァルは斜め向かいからジークフリートの両手を見遣りつつ、瞳を細めた。その手には何か小さな箱がある。表情は読みにくい。敢えて言えば、冷静そうに澄ました真顔だ。
「それと、片手でいい」
「ほう。なら、こうかな」
左手をパーシヴァルのほうへと差し出す。ここまで言われてようやく、彼はジークフリートの手に何かを施したいのだと言うことに気がついた。彼らしくもなく言葉足らずなその求めの真相を楽しみに思い、ジークフリートは大人しく腕を出したまま静かに待つ。
3332唐突にそう言われて、ジークフリートは不思議に思いながらも両手を顔の前に出し、左右とも五指を拡げた。
「こうか?」
ろくに説明も無いまま何かを求めるなど、パーシヴァルにしては珍しい。彼に限って悪さをすることは無いであろうが、どういうつもりなのだろう。
「そうではない。こっちだ」
パーシヴァルは斜め向かいからジークフリートの両手を見遣りつつ、瞳を細めた。その手には何か小さな箱がある。表情は読みにくい。敢えて言えば、冷静そうに澄ました真顔だ。
「それと、片手でいい」
「ほう。なら、こうかな」
左手をパーシヴァルのほうへと差し出す。ここまで言われてようやく、彼はジークフリートの手に何かを施したいのだと言うことに気がついた。彼らしくもなく言葉足らずなその求めの真相を楽しみに思い、ジークフリートは大人しく腕を出したまま静かに待つ。
mizus_g
DONEワンライ「野営」+1hくらい 音を立てずに起き上がり、気配を殺し、息を潜めて、隣で眠る赤毛の男が瞳を閉じていることを確かめてからそっと野営地を出る。
十名足らずの隊で二、三人ずつ纏まって休息をとっているが、獣や魔物も暮らす山地である上に最近は賊の目撃情報もあるため、交代で見張りを立てている。野営の方法は白竜騎士団がその前身の黒竜騎士団であった頃からあまり変わっていないようだ。いま見張りをしているのは入団して三年目の槍使いの若者で、真面目で素直な好ましい男だ。この魔物討伐遠征にジークフリートが助っ人として付き合うことになったと聞いてそれはそれは喜び、いたく感激していたのだとランスロットから聞いている。こそばゆいが、悪い気はしないものだ。
3301十名足らずの隊で二、三人ずつ纏まって休息をとっているが、獣や魔物も暮らす山地である上に最近は賊の目撃情報もあるため、交代で見張りを立てている。野営の方法は白竜騎士団がその前身の黒竜騎士団であった頃からあまり変わっていないようだ。いま見張りをしているのは入団して三年目の槍使いの若者で、真面目で素直な好ましい男だ。この魔物討伐遠征にジークフリートが助っ人として付き合うことになったと聞いてそれはそれは喜び、いたく感激していたのだとランスロットから聞いている。こそばゆいが、悪い気はしないものだ。
mizus_g
DONE5/4超全空で配布した合同ペーパーに載せたものです。テーマはおふとん……なのですが普通にベッドです。同衾ネタが大好きです。ユカタヴィラで布団で同衾も夢がある…
貰って下さった方ありがとうございました!
5/4超全空無配ペーパー 甘い気配が行き違う。
「狭いか?」
「……いや、平気だ。お前こそ窮屈ではないか?」
手違いにより、今宵はジークフリートとひとつ床で眠ることになった。
とは言っても、ベッドのサイズは男二人で入ってもそれなりに余裕があるものだ。彼の体温は感じるものの、寝具の取り合いをするほど狭いわけではない。
「俺は大丈夫だ。すまないなパーシヴァル、俺の確認不足でこのようなことになってしまって」
「構わん。ベッドサイズがこのくらいであれば、二人で眠るにしても差し支えはなかろう」
「ああ、……そうだな」
背中越しに伝わってくるジークフリートの気配が、もそり、と落ち着かぬ様子で身じろいだ。
本日の夕刻、ジークフリートが予め手配してくれていた宿に到着してみると、通された部屋は大きなベッドがひとつ置かれたダブルルームであった。ツインの部屋に替えて貰えないかと交渉してはみたが今宵は満室で変更は難しいと言われてしまったため、仕方なしに彼と同じベッドで寝ることにしたのだった。
2931「狭いか?」
「……いや、平気だ。お前こそ窮屈ではないか?」
手違いにより、今宵はジークフリートとひとつ床で眠ることになった。
とは言っても、ベッドのサイズは男二人で入ってもそれなりに余裕があるものだ。彼の体温は感じるものの、寝具の取り合いをするほど狭いわけではない。
「俺は大丈夫だ。すまないなパーシヴァル、俺の確認不足でこのようなことになってしまって」
「構わん。ベッドサイズがこのくらいであれば、二人で眠るにしても差し支えはなかろう」
「ああ、……そうだな」
背中越しに伝わってくるジークフリートの気配が、もそり、と落ち着かぬ様子で身じろいだ。
本日の夕刻、ジークフリートが予め手配してくれていた宿に到着してみると、通された部屋は大きなベッドがひとつ置かれたダブルルームであった。ツインの部屋に替えて貰えないかと交渉してはみたが今宵は満室で変更は難しいと言われてしまったため、仕方なしに彼と同じベッドで寝ることにしたのだった。
hisanagiuta
DONE「パージク版深夜の創作60分一本勝負」4月9日 第60回 お題「前髪」「春」
たん、たんと軽く何かを叩く音が聞こえて、パーシヴァルは窓を見上げる。水飛沫が散っていた。いつの間にか雨が降り出していたらしい。窓を開けて辺りを見渡し、脇に生えた樫の木が音の出どころだと検討をつける。葉に溜まった雫が溢れて、葉や幹を叩き音を立てているのだった。
明るい。空の高いところに、欠けた月が嵩を被っている。雨の一粒一粒が、光を受けて影を作り、空の中できらめいていた。
季節の上では春と呼んでも差し支えないだろうに、ひどく冷える夜だ。眠る前に少し読書をするつもりが、いつの間にやら日が変わろうとしていた。葡萄酒でも飲んで暖まるか、それとももう休むか。逡巡していると、控えめに扉がノックされた。
こんな夜更けにおとなう者を、パーシヴァルは一人しか知らない。
2117明るい。空の高いところに、欠けた月が嵩を被っている。雨の一粒一粒が、光を受けて影を作り、空の中できらめいていた。
季節の上では春と呼んでも差し支えないだろうに、ひどく冷える夜だ。眠る前に少し読書をするつもりが、いつの間にやら日が変わろうとしていた。葡萄酒でも飲んで暖まるか、それとももう休むか。逡巡していると、控えめに扉がノックされた。
こんな夜更けにおとなう者を、パーシヴァルは一人しか知らない。
ひろい
DONE最後の冬のユカタヴィラ祭り、ユカタヴィラ乱れてるで肌色多め(背後注意ね)。ちょっとえっちな雰囲気です。絵はジー…フリー…しか居らんのですが、私がパージクだと思いながら描いたのでこれはパージクです。
ひろい
DONE1/23のイベントあわせ用の漫画として作りたかったのですが、ダラダラ描いてて出すの遅れてしまいました…!すまぬ…!!!なんでも許せる人向け
ちょっとパージクのすけべっぽいシーンもあるよ
すこしヨゼフ王も出てます 2
mizus_g
DONEワンライお題「眠れない夜」(2.5h) グランサイファーの甲板で夜風を感じながら星空を見上げると、幾らか心が平坦になるような感覚がある。
ここのところ自分の感情は不安定で揺れがある、と、ジークフリートは感じている。騎空士として仕事を請け負ったり仲間とともに日常を過ごしたりするにあたって不都合は無いにしろ、上の空であるとか、ぼうっとしているだとか、そういう言葉で形容されても否定できない状態がもうここのところ暫く続いているように思う。
原因は半分ほどわかっていて、中心となるのはパーシヴァルの存在だ。率直に言うと、ジークフリートはパーシヴァルのことが気になって仕方が無い。付き合いの長い相手であるのにどうして急にこのようなことになったのかはよく解らないのだが、パーシヴァルの振る舞いや言動には特に変化は無いと思う――ということは変化したのはジークフリートのほうであろう。関係性は変わっていない。強いて言えば、共に騎空艇に乗るようになってからはそれぞれ別々に行動していた頃に比べると随分と接触は増えた。艇内ですれ違えば言葉を交わすし、食堂で出会えばそのまま食事を共にすることもある。元よりの知己ということもあって団長より同じ依頼や仕事のメンバーに選出されることもしばしばであるし、接触が増えれば当然ながら親しさも増すもので、今では昔のように手合わせをしたり、たまに二人で買い物に出たり酒を酌み交わしたりすることもある。声を聞く機会も増えた。一時期よりもずっと気軽に、他愛のないやりとりをするようになった。よく話をするから、彼の最近の趣味や食べ物の好みも知っている。いま読んでいる本のことだとか、最近知り合って話すようになった団員が誰か、ということだとか。パーシヴァルの服が翻った時に微かに舞う匂いも覚えた。彼の、扉をノックする音が昔よりも落ち着いた上品なリズムに変化していると言うことも。先日降り立った街で買ったワインが気に入って取り寄せることにしたとか、最近は季節の果物を口にする機会が増えた、とかいうことも知っている。そう言えば、ふだん、比較的低く重みのある声音で話す彼が、最近ジークフリートの前では幾らか緊張の緩んだような多少丸みのある声で話すことが増えたように思う。だから、そういう油断をわざと誘いたくて食事の席で酒を飲ませようとすると、すぐにこちらの意図に気づいて俺を酔わせようとするなと怒り出す。いや、怒るというか、文句を言
5591ここのところ自分の感情は不安定で揺れがある、と、ジークフリートは感じている。騎空士として仕事を請け負ったり仲間とともに日常を過ごしたりするにあたって不都合は無いにしろ、上の空であるとか、ぼうっとしているだとか、そういう言葉で形容されても否定できない状態がもうここのところ暫く続いているように思う。
原因は半分ほどわかっていて、中心となるのはパーシヴァルの存在だ。率直に言うと、ジークフリートはパーシヴァルのことが気になって仕方が無い。付き合いの長い相手であるのにどうして急にこのようなことになったのかはよく解らないのだが、パーシヴァルの振る舞いや言動には特に変化は無いと思う――ということは変化したのはジークフリートのほうであろう。関係性は変わっていない。強いて言えば、共に騎空艇に乗るようになってからはそれぞれ別々に行動していた頃に比べると随分と接触は増えた。艇内ですれ違えば言葉を交わすし、食堂で出会えばそのまま食事を共にすることもある。元よりの知己ということもあって団長より同じ依頼や仕事のメンバーに選出されることもしばしばであるし、接触が増えれば当然ながら親しさも増すもので、今では昔のように手合わせをしたり、たまに二人で買い物に出たり酒を酌み交わしたりすることもある。声を聞く機会も増えた。一時期よりもずっと気軽に、他愛のないやりとりをするようになった。よく話をするから、彼の最近の趣味や食べ物の好みも知っている。いま読んでいる本のことだとか、最近知り合って話すようになった団員が誰か、ということだとか。パーシヴァルの服が翻った時に微かに舞う匂いも覚えた。彼の、扉をノックする音が昔よりも落ち着いた上品なリズムに変化していると言うことも。先日降り立った街で買ったワインが気に入って取り寄せることにしたとか、最近は季節の果物を口にする機会が増えた、とかいうことも知っている。そう言えば、ふだん、比較的低く重みのある声音で話す彼が、最近ジークフリートの前では幾らか緊張の緩んだような多少丸みのある声で話すことが増えたように思う。だから、そういう油断をわざと誘いたくて食事の席で酒を飲ませようとすると、すぐにこちらの意図に気づいて俺を酔わせようとするなと怒り出す。いや、怒るというか、文句を言
ひろい
DOODLEツイッターのパージクらくがきログ2ですほのぼのからうっすらすけべ(でもたいしたことは無い)まで何でも入れてあるので…注意!
今年の夏は色々あって楽しかったですよね~!
秋も色々ありそうで楽しみです!! 11
mizus_g
DONEパージク版リミットフリー創作企画お題「黒竜騎士団時代」お借りしました
パーシヴァルがまだ10代で、騎士団に入って間もないころを想定しています。もろもろ捏造と妄想設定を含みます。
夕暮れに秘密をひとつ いくら扉をノックしても返事が無い。
(明かりの消し忘れか……?)
四度目のノックを終えた後、まるで反応の無い扉を前にパーシヴァルは途方に暮れた。
団長ならば執務室に居るはず、と仲間から聞いたのはつい先程のことだ。まっすぐ寄り道せずに執務室にやって来たためそう時間は経っていないし、部屋の明かりがついているので当然在室しているものと思ったのに、居ないのであろうか。
パーシヴァルは手にしている紙束へと視線を落とした。先にたまたま城内ですれ違った文官から「騎士団長に渡しておいてくれ」と頼まれた書類だ。まとめて紙袋に入れられているため何の書類であるのかはわからないが、おそらく次年度の入団試験に関するものであろう。最近、騎士団と関わりのある文官達がよく入団試験についての話をしている様子を見かける。団長であるジークフリートが中心となって試験のやり方を改革しようという試みがなされているらしく、文官達と揉めているようだ。
7412(明かりの消し忘れか……?)
四度目のノックを終えた後、まるで反応の無い扉を前にパーシヴァルは途方に暮れた。
団長ならば執務室に居るはず、と仲間から聞いたのはつい先程のことだ。まっすぐ寄り道せずに執務室にやって来たためそう時間は経っていないし、部屋の明かりがついているので当然在室しているものと思ったのに、居ないのであろうか。
パーシヴァルは手にしている紙束へと視線を落とした。先にたまたま城内ですれ違った文官から「騎士団長に渡しておいてくれ」と頼まれた書類だ。まとめて紙袋に入れられているため何の書類であるのかはわからないが、おそらく次年度の入団試験に関するものであろう。最近、騎士団と関わりのある文官達がよく入団試験についての話をしている様子を見かける。団長であるジークフリートが中心となって試験のやり方を改革しようという試みがなされているらしく、文官達と揉めているようだ。
ひろい
DONE【WEB再録】パージク『○○をしないと出られない部屋』/2021年7月全空無配本からテンプレっぽい話やってみたいな!と思って描いてみました
ユカタヴィラ、魔性の男、においをかぐその他諸々、私の好きなことしかやってません…
それにしても自主的に胸元乱れてくれる人っていいですよね(ニコニコ) 6
ひろい
DONE【WEB再録】黒竜騎士団パージク/2021年7月全空無配本からジークフリートさんは何でパーシヴァルと恋愛関係に陥ってくれたかな~?と自分を納得させるために描いた漫画です
恋愛関係になるわけにはきっかけが必要で、そのきっかけつくったのはパーシヴァルの告白もあると思うけど、もう一人助言あったら確実に動くんじゃないかでヨゼフ様出してみました
しかし、色々やりたいこと入れたら変な話になりました(反省) 4
mizus_g
DONE2021年7月11日全空の覇者緊急SUMMERで配布した無料配布本に載せたものです。貰って下さった方ありがとうございました!
月夜に炎の立つ 目的のものはあったのか、と尋ねると、もうすぐだ、と曖昧な言葉が返ってきた。
夏、天気は晴れ、月と星のよく見える穏やかな夜だった。パーシヴァルはジークフリートと二人、団長に無断で騎空艇を抜け出し、フェードラッヘ北方の山を登っている。
此処はかつて黒竜騎士団に属していた時代に訓練や魔物退治などを目的によく登った山で、思い出の山と言えばそういうことになる。さほど険しい山ではないが、登山は登山であり、道中には魔物も棲み着いているので油断は禁物だ。過去にはこの山を甘く見た騎士団の仲間が負傷して帰ってきたこともあり、近年には魔物に加えて獰猛な野獣の目撃情報も報告されている。昼間でも注意が必要ではあるが、真夜中ともなれば更に危険度は上がる。
5537夏、天気は晴れ、月と星のよく見える穏やかな夜だった。パーシヴァルはジークフリートと二人、団長に無断で騎空艇を抜け出し、フェードラッヘ北方の山を登っている。
此処はかつて黒竜騎士団に属していた時代に訓練や魔物退治などを目的によく登った山で、思い出の山と言えばそういうことになる。さほど険しい山ではないが、登山は登山であり、道中には魔物も棲み着いているので油断は禁物だ。過去にはこの山を甘く見た騎士団の仲間が負傷して帰ってきたこともあり、近年には魔物に加えて獰猛な野獣の目撃情報も報告されている。昼間でも注意が必要ではあるが、真夜中ともなれば更に危険度は上がる。
mizus_g
DONEワンライお題「雨に濡れる」(時間ちょっとオーバー)(ジークフリート……?)
雨に煙る城門の際に、鎧姿の男が一人、立っている。
濡れ鼠となった栗色の髪と重たげな外套、濡れて光る黒い鎧のその男は、間違いなくジークフリートその人であろう。
雨除けもせず長雨の景色に溶け込むように薄ぼんやりと佇む姿を遠目に見て、パーシヴァルは首を傾げた。
何をしているのだろうか。
此処から見る限りでは「何かをしている」という様子には見えない。剣を持っているわけでもなく、何処とも言えぬ何処かをぼうっと見つめ、やがて所在なげにふらりと歩き出す。足取りはしっかりしているが一歩一歩に重さが感じられない。たとえば今、あの姿は幻影か幽霊のようなものがジークフリートに化けたものなのだと言われたらきっと納得してしまうだろう。あやふやで、そこに実在しているのかどうかすらも怪しい。蜃気楼――というものをパーシヴァルは目にしたことが無いが、何かに喩えるならばそれが最も近しいように思う。
4678雨に煙る城門の際に、鎧姿の男が一人、立っている。
濡れ鼠となった栗色の髪と重たげな外套、濡れて光る黒い鎧のその男は、間違いなくジークフリートその人であろう。
雨除けもせず長雨の景色に溶け込むように薄ぼんやりと佇む姿を遠目に見て、パーシヴァルは首を傾げた。
何をしているのだろうか。
此処から見る限りでは「何かをしている」という様子には見えない。剣を持っているわけでもなく、何処とも言えぬ何処かをぼうっと見つめ、やがて所在なげにふらりと歩き出す。足取りはしっかりしているが一歩一歩に重さが感じられない。たとえば今、あの姿は幻影か幽霊のようなものがジークフリートに化けたものなのだと言われたらきっと納得してしまうだろう。あやふやで、そこに実在しているのかどうかすらも怪しい。蜃気楼――というものをパーシヴァルは目にしたことが無いが、何かに喩えるならばそれが最も近しいように思う。
mizus_g
DONEワンライお題「二度目のキス」(時間オーバー)「何を舐めている?」「レモンキャンディ……だ、そうだ」
風の無い夜だった。
騎空艇の甲板で島々の夜景を眺めながら、ジークフリートはパーシヴァルの質問に対してやや舌足らずな発音で答えた。その口元は咥えた飴玉を転がすことに忙しいようで、喋っている最中にもしきりにうごめいている。
「どうしたんだ、それは」
「貰った。団員の土産だそうだ。個包装になったものが食堂に大量に積まれていてな、たくさんあったから俺もひとつ頂いてきたんだ」
「……そうか」
パーシヴァルは後ろめたさを抱えながら、ジークフリートの唇をちらちらと横目で盗み見ていた。彼の視線は艇の外、眼下の景色に注がれていて気づく様子は無い。
まるく明るい月に照らされた唇の膨らみは品の良い厚みがあり、肉感を思わせるかたちをしている。ふっくらとしていて実に柔らかそうだ。それから、時折、チロリと覗く舌先が濡れた気配を纏いながら唇の表面を舐め、乾いた膨らみに少しの艶を添えてすぐに引っ込むしぐさをする。それがどうにも見ていて後ろめたい。見え隠れする舌が唇の合間を出たり入ったりするたびにパーシヴァルはなにか好ましくない衝動を持て余し、いったん視 2875
mizus_g
DONEワンライお題「怪我の手当て」「これで良し……、と」ジークフリートの背中と腕に巻いた晒し布を固定する。きつくなりすぎぬよう、解けたり緩んだりすることのないよう、慎重に。包帯を巻く技術などかつて騎士団で練習して以来一度も学んでいないが、ここ最近はジークフリートの怪我の手当をパーシヴァルが主に担当しているため随分と上達してきたように思う。
毎回のように負傷して帰ってくるジークフリートの面倒を見るのは、騎空艇で隣室を与えられているパーシヴァルの当然の役割であろうと思うから、そのこと自体には何の不満も無い。しかし、ひとりで勝手に艇を降りてはどこぞで大怪我をして帰ってくる――ということを何度も繰り返すジークフリートに対しては言いたい文句が山のようにある。
危険なことをするな。周りの人間を心配させるな。そう言うと彼は決まって、けろりとした顔で「俺は平気だぞ」と言うものだから、話はいつだって通じないし、パーシヴァルの想いが届くことも無いのだ。昔も今も、おそらくはこれからも。
「すまんな。手間を掛ける」
「過ぎたことを責めるつもりはないが、次は気をつけろ」
「わかった」
ことばの上では従順だが、次もまた怪我をして帰ってく 2884