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    g_arowana

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    g_arowana

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    常ホの弟子と緑谷青年。
    常ホが一緒に住んで数年後。キャラ的にはwithout〜の世界線なんですが、出来事は最近の本誌展開に準拠してるのでちょっと世界線が謎です。

    #常ホ
    regularHall

     元雄英のメンバーが数名、偶然集まれるとなって、現地に最初に辿り着いたのは常闇だった。
     居酒屋の個室で携帯をいじっていると、入り口からヒョイと見知った顔が覗いてくる。
    「あれ、みんなまだ?」
    「お前が二番乗りだ。案件は大禍なかったようだな、緑谷」
     手元の携帯を伏せようとして、常闇は少々逡巡した。周りによく気を配る友人は「途中だったら、気にしないで続けてね」と声をかけてくる。
    「……いや、ただの下調べだ。買い物のな。どの道、今すぐ決まるものではない」
    「へぇ、なんか大物?」
    「寝台だ。とりあえず大きなものがいい。……いやもうこの際、大きければ大きいほどいい」
     ぼやく常闇に、緑谷の首がやや傾いだ。眉間あたりに困惑を湛えた悩み顔は「現代版考える人」として後世に残したいような趣がある。
     これでこの男は、いざ現場に立てば気圧されるほどの鋭さを見せ、交渉事にも果断に臨む。元より学生の頃から詰将棋のような戦い方をするやつだった。それがプライベートになるとこの通り、若干面白い感じになってしまうのは微笑ましくも不思議なところだが、こういうところも人に好かれる由縁だろう。
     思考のフル回転を伺わせる溜めの後、緑谷は拳を握ってたずねてきた。
    「…………これ僕、割とセンシティブなこと聞いちゃったヤツかな!」
    「いや、特には。すまん。気を使わせたな」

     よっぽど「運動」が激しくて、というなら緑谷の言うとおりかもしれないが、此度の買物にそういう色気は存在しない。
     同衾しているという事実がセンシティブだと言われてしまえばそれまでなのだが、ホークスと常闇が同棲して数年、そこは今更だろう。
    「単に、俺の寝床を確保するためだ。あの人は実に遠慮会釈なく伸び伸びと、大の字になって寝るのでな。……いいか。比喩ではないぞ。文字通りの『無』だ。ダブルベッドごときでは、存在しないんだ。俺の寝場所が。本当に」

     悩みを朗々と謳いあげて相手の顔を見て、常闇は静かに頷いた。
    「うむ、緑谷。……そこはふつうに笑ってくれて構わない」
    「うん、いや、うん、えと、ゴメンね……!」
     ぷるぷると引き結んでいた口元を覆ってひとしきり肩を震わせ、緑谷はやっとで顔をあげた。
    「……あんまりイメージ通りでさ。でも、いいなそれ。ホークスってこう、『イメージ通り』なばっかじゃないでしょ?」
    「……ああ」

     常闇の師が傲慢に、あるいは献身的に、どれほど多くを「己の翼の届くもの」としてみせるかについて、緑谷なら熟知していることだろう。なにしろヒーロー社会崩壊瀬戸際の最前線で、ホークスとチームアップを組んだ人間だ。
     睡眠管理は特技でさ、と宣う師は必要な休息の確保に妥協しなかったが、それは謂わば徹底したメンテナンスであって、間違っても「伸び伸びと」なんて形容のつくものではなかった。寝床を共にするようになった後も傾向としては丸まって寝ていた気がする。
     それがいつのまにやらこうなっていた。なんとも、幸いなことに。

     実のところ常闇のこの幸福は、寝台から蹴り落とされた程度で損なわれるものではないし、SNSで仰向けに伸びた「猫を辞めた猫」だの「犬を辞めた犬」だのがバズる度に、彼は「うちの鳥を辞めた鳥が優勝だな……」と密かに鼻を高くしている(誰かに自慢する予定は一生ないが)。
     そうは言っても、蹴り落とされないようになればなお良い、というのは事実だろう。強欲であることは、彼の人生のパートナーも良しとするところなので。

     常闇の前では、ひとの好い友人が忙しなくスマートフォンをタップしている。
    「そういうことなら……あのさ、疲労回復にはスプリングが効いてた方がいいけど、ホークスが仰向けに寝るなら羽を潰さないのも大事でしょ? ここ、製品開発に協力したサポートアイテム会社の子会社なんだけど」
     ヒーローと、それを支えるあらゆるものをこよなく愛する男の伝える情報を、常闇は有り難く拝聴することにした。
     多少、ほんの少し話が長かったきらいはあるが、お互い変わりなくて何よりである。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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    g_arowana

    DONE鳥の弟子が師匠を甘やかします。
    Without Regretsの世界線。Pardon? から一週間で引っ越してその翌月なので、たぶん常闇青年21歳4月の出来事です。
     夜警を終えて師のマンション(もとい、先月からは彼の自宅でもあるのだが)に帰った常闇は、リビングの灯りに目を丸くした。
     体が資本の稼業、休めるときに休むのは義務のようなもので、シフトの異なる相手を待って睡眠時間を削ることはお互いしない。実際、向こうも常闇を待っていたわけではないだろう。グラスを片手にホークスは、視線をぼんやり前に投げたままひらりと手を振った。
    「お疲れ」
    「そちらも。……珍しいこともあるな」
    「ん-。ごっめん、ちょっと放っといてくれると助かる」
     いつも通りの軽々しい口調に、ひりついた響きが微かに滲む。ふむ、と常闇は逡巡した。

     さして問題だと思ったわけではない。この人の、回転数の規格の狂った思考回路に無理矢理足踏みをさせようとなったら、化学物質で物理的に止めるくらいしか手がないのは承知している。「どうせ気分が腐って休めないのだから、徹夜で仕事を片付ければ一石二鳥」などと言われるより余程安心だという話だ。酒精で体をいためるほど自分を甘やかすことなど、良くも悪くもできない人なのだから。
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