「さまときー、またねー」
左馬刻さんだろがと言いながら、左馬刻は律儀に手を振り返していた。幼稚園か、小学一年かくらいのわんぱく小僧の相手する様子見てただけの俺が疲れとるん何でやろ。ご機嫌に手をブンブン振って子供は元気やわ。
左馬刻のことを遊んでくれたお兄さんと思っとるんやろな。一郎と空却をコンビニへおつかいに行かせた間の暇つぶしだとか左馬刻は言っていた。
愚連隊リーダーなんてやっている男がお子様に優しく義理人情に厚いなんて、古い漫画の世界にしかないと思っていた。現実にいるとギャップがおそろしい。無骨そうな、怖そうな、綺麗な顔の左馬刻は少女漫画から抜け出たみたいな生き物だ。
「お子様に優しいんやなぁ?ささらさんより左馬刻さまがえぇって妬けるわ」
1995