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    cross_bluesky

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    エアスケブみっつめ。
    いただいたお題は「ネロの初期設定傷ネタで、キスするブラネロ」
    リクエストありがとうございました!

    #ブラネロ
    branello

    「なあ。ちょっと後で部屋来てくんねえ?」
     ネロにそう言われたのは夕食後のことだった。
     珍しいこともあるもんだ。というのも、ブラッドリーとネロは今でこそ度々晩酌を共にすることはあれど、誘いをかけるのはいつもブラッドリーの方で、こんな風にネロに直接的に呼ばれることは殆ど無かったからだ。
     適当に風呂を済ませてから、グラスと酒瓶を持って四階へと向かう。見慣れた扉を叩くと、しばらくして内側から開け放たれる音がした。
    「あれ、つまみ作ってたんじゃねえのか?」
     普段ならば、扉を開いた時点でネロが用意したつまみの良い匂いが漂ってくるはずだ。しかし、今日はその気配は無い。
     もしかすると、晩酌の誘いではなかったんだろうか。よく考えると、部屋に来いとは言われたものの、それ以上のことは何も聞いていない。
     ネロはブラッドリーが手に持ったグラスに目を向けると、ぱちりとひとつ瞬きをした。
    「ああ、悪い。ちょっと相談っていうか……でも、腹減ってんなら簡単なもので良けりゃ先に作るよ」
    「馬鹿、折角来てやったんだから先に話せよ」
     つかつかと歩を進め、部屋の寝台へと腰を下ろす。椅子を増やせとブラッドリーは再三言っているものの、未だネロの部屋には椅子が一脚しか無いのだ。となると、並んで語るとなると選択肢が寝台しかなくなる。
     迷うように立ち止まったネロを呼ぶと、おずおずと近づいてきて隣に腰掛ける。ネロのほうから話し出すのを待つものの、口を開いたり閉じたりを繰り返すばかりで、なかなか切り出してこない。
    「おい、ネロ?」
    「あ、ええと……なんつうか、何言っても引かねえ?」
    「中身によるだろそりゃ」
    「だよなあ……」
     そう言ったきり俯いて黙りこくってしまったネロに、小さくため息をつく。ブラッドリーとて気が長い方ではないのでいい加減に焦れてきた。
    「ああもう、なんでも良いから言ってみろよ。聞いてやる」
     逃げる視線を捉え、なるべくはっきりとそう伝えると、ネロは少しだけ迷うように目を伏せる。膝上で握りしめた拳にぐっと力が入るのを眺めていると、ようやく視線が交じりあった。
    「その……キスしてくれって言ったら怒るか?」
     は、と思わず間抜けな声がこぼれ落ちた。言われた言葉の裏を咀嚼するも、額面通りの意味としか捉えられない。ブラッドリーはネロのことを相棒として誰よりも信頼している。それはネロに何と言われようと、魔法舎で再会した今も変わらない事実だ。
     しかし、その中にいわゆる情欲といった類のものは含まれていないのだ。そしてそれは恐らくネロも同じ、と思っていたのだが。
    「いや、別に怒りやしねえけどよ……理由くらいは教えてくれても良くねえか?」
    「多分すればわかるし……これが一番手っ取り早い」
    「うん?」
     うんうん、と自分の中で納得するかのように頷くネロには、別段照れた様子は見当たらない。が、よく見ると普段よりも頬が紅潮しているようにも見える。何かの聞き間違えかとも思ったが、そういう訳でもないらしい。この言い分によると、ネロが求めているのは何かの手段としてのキスなのだろうか。
     自分を安売りする気はさらさらない。だが、他に仲良くしている魔法使いも居る中、ネロがわざわざ部屋に呼び出してまでブラッドリーを頼ってきたという事実に少し後ろ髪を引かれた。
    「わかった。してやるからこっち向け」
     ため息と共にそう口にすると、ネロは意外そうに目を見開いた。大方断られると思っていたんだろう。ブラッドリーとて相手がこの男でなければ間違いなく断っていたが。
     惑うように揺れていた蜜色の瞳がやがてぎゅ、と閉じられる。こちらを向いたネロの頭の後ろに手を回すと、ブラッドリーは躊躇いなくその薄く開かれた唇に口づけた。
     案外抵抗感はない。その事実よりも、ブラッドリーは口内に広がる味の方に気を取られていた。
     こいつ、俺が来るまで酒でも飲んでたのか? 独特の渋みのある葡萄酒の風味が口いっぱいに広がって、ブラッドリーはぱちくりと瞳を瞬いた。
     いやしかし、仮にネロがつい先刻までワインを飲んでいたとしても、キスをしただけでこうも明確な味がするものだろうか。確かめるように唇の割れ目から舌を侵入させると、よりいっそう濃いアルコールの風味が鼻から抜ける。
    「……っん、……な、おかしいだろ? 夕飯作った後で良かったけどさ。何食ってもずっとワインの味しかしねえ」
    「おー……魔力の気配は感じねえし、呪いってわけではなさそうだな」
    「だよなあ……なんか頭もぼーっとしてくるし、これじゃ味見も出来ねえよ。朝までに治ってくんねえと困る」
     目に見えて凹んだ様子のネロに、どう声をかけていいものか悩む。
     ブラッドリーはネロに起こったこの現象の正体にひとつだけ心当たりがあった。ブラッドリーがくしゃみをすれば何処かに飛ばされてしまうのと同じ、厄災の傷だ。ネロの厄災の傷はまだ発露していなかったはずで、もし本当にそうだとすれば、料理人のネロにとっては相性が悪すぎる。
    「なあブラッド、もっかい」
    「はあ?」
    「ほら、キスすりゃてめえにも流れてくだろ? もしかするとその分早く治るかもしんねえし」
     いや、そうはならないだろ。ブラッドリーは眩暈がしそうになるのを必死に耐えた。
     なんとなく途中から気付いていたが、恐らく目前の男は相当酔っている。口の中が常にそこそこ度数の高いワインで満ちているとすれば当たり前なのかもしれないが、酔ったネロの相手は正直大変だ。何しろ、こちらの言い分を聞いてくれない。
     ぐ、と急かすように何度も腕を引いてくる男を前に、ブラッドリーは今こそなんとかくしゃみで飛んでいけないものかと頭を抱えるのだった。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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