今日は世界で一番幸せです 数騎の騎馬が駆ける。辺りは夜闇。星月夜ではあるが、雲に隠れてか細い。
目視の先に篝火が見え、馬の歩を緩める。
「戻ったか」
「外はどんな具合だった」
「十人の斥候でした。東の小さな森に散らばっていたので、仕留めてきましたよ」
馬を降りながら、得意げに話す鈴音。愛馬の首元を撫でて、共にいた兵士に同意を求める。
荒野に点在する城の一つ。王翦軍は行軍中、近くにあったこの城で足を休めた。丁重なもてなしを受けながら、道中に気付いた驚異。鈴音が自ら行くと志願し、数人と共に警戒に出た。
案の定敵国の密偵がおり、全ての命を刈り取った。生捕りとも逃がせとも言われていない。ただ、驚異を払え。そう言われていた。
どこから来た?何をしに来た?他に仲間は?
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