「森」「絨毯」「新しい恩返し」 無事に着陸できました。ここは森のようですね。季節は秋です。黄色い絨毯が地面を覆っています。滑らないよう気をつけましょう。
おや、こんにちは、いい天気ですね。ありがとうございます、そちらもお気をつけて。……ふむ。偽装システムならびに翻訳システムに支障なし。調査を開始しま、いっだぁああああああ!!!
ありがとうございますありがとうございます、まさかあんなところに■$@w^があるなんて。へっ? あ、ああ、トラバサミね、トラバサミ。トラバサミがあるなんて。ふぅ、固有名詞には翻訳が働きづらいから気をつけないと。
いえなんでも。ご親切に手当てしてくださって。この御恩は必ず。何かお困りのことはありますか? 舞踏会に着ていく服がない? なるほど、ちょっとあちらを向いていてくださいますか?
いいですか、こっちを見てはいけませんよ、いち、にぃ、はい! どうぞ、お礼です。
いえお気になさらず。ほんの気持ちです。サイズぴったり? そうでしょうとも。誂えたようにしっくり? そうでしょうそうでしょう。一体どうやって? それは秘密です。
魔法使い? 違います違います。ぁっ違います悪魔じゃないです神様も違います。まいったな、私は、えーと待ってくださいね検索しますから。……ふむ。よし。
わたしは妖精です。他の方には内緒ですよ?
舞踏会は楽しかったですか? それは良かったです。運命の人に出会えた? えーと……なるほど、恋、恋をされたんですね。それはどのようなものですか?
えー、まぁ、そうですね、はい。妖精ですから。よくわかんないんですよ。繁殖とかもう随分前の世代に全自動化されましたし。
ふぅん、心臓が痛くなる。息苦しい。寝れなくなる。寝ても覚めてもその個体のことで頭がいっぱい。ええと、病気では? そう例える人もいる、と。なんだか健康に悪そうですね。え、本当に寿命が縮む人もいる? こっわぁ。
まぁわたしたちがそういったものから脱却したのは正しい判断だったのだとよくわかりました。いえ、応援しますよ。御恩がありますから。現地の協力者は確保しておきたいですしね。
おはようございます、結婚おめでとうございます。わたしも手伝った甲斐がありました。
ええ、そうでしょう? 恋は知らなくても繁殖テクニックはアーカイブにありますからね。適切に翻訳すればいいだけです。
え? 終わりじゃない? むしろここからが始まり? なるほど。確かに繁殖だけでなく巣作りも大事ですね。
わかりました、乗りかかった船です。引き続き力を貸しましょう。おかげで調査も順調ですしね。
お疲れ様です。抱っこ代わりますよ。よしよし、ふふ、毎日たいへんですね。こんな話が通じない生き物の相手をするだなんて。
わたしですか? わたしはほら、翻訳してますから。この子の言いたいことを察するくらいわけがありません。はいはい、拗ねないでください。わたしはあなたへの恩返しにここにいるんですから。
恩返しが終わったら、ですか? そうですね、ここの調査は継続して行われることになりましたから、滞在は続けますが……
そうですね。この子があなたとお話しできるようになったら、そのときに決めましょう。
お待ちください。まったく、ひとりで森に行ってはダメですと乞われているでしょう。意地悪はいけませんよ。肩車ですか? まったく、傍若無人な方ですね。
まぁ良いでしょう。木の葉の絨毯で滑ってもいけませんし。この辺りでしたね、あなたの親御さんと初めて会ったのは。
ええ、■$@w^……じゃなかった、トラバサミにかかったのを助けてもらったんですよ。助かりました。この体の操作にもまだ慣れてなかったときですし。
え? そのときの恩返しでうちにいるのかって? ふふ、よくご存知ですね。でも違いますよ。それは最初の理由です。
今は、あなたへの恩返しでここにいるんです。去ろうかどうしようか迷っていたら、こんな暴君面倒見きれないから助けてくれって泣きつかれましてね。ええ。あなたが改心するまでは、ここにいますよ。